追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
57 / 109
第六章

等級アップ

しおりを挟む
 全身を闘気で強化し、俺は走り出す。
 オークは戸惑っているのか、オロオロしていた……悪いな、遠慮しない。
 俺は右手を膨張させ、オークの一体をぶん殴る。

「『龍人掌ドラッケン』!!」
『ブバァ!?』

 おお、パンチ一発で爆散した。威力が高過ぎで身体が爆ぜるなんてヤバいな。
 そしてもう一体、もう一体も殴り殺す。すると、藪から増援のオークが出てきた。
 俺は左手の鱗を展開し、黄金の闘気を噴出する。

「『闘気精製ドラゴンスフィア』───『短斧ショートアックス』!!」

 小さい斧をいくつも作り、オークたちに力任せに投げつける。
 今の腕力で投げた斧は、オークの身体を貫通し岩に激突してようやく止まる威力だ。オークの数が一気に減り……残り数体というところで異変が。
 藪から、真っ赤な身体をしたデカいオークが現れたのである。

「れ、レッドオーク!? こんなの依頼になかったわよ!?」
「リュウキくん、援護します!!」

 レイが武器を抜き、アピアが狙撃銃を構えるが、俺は手で制する。
 せっかくのチャンスだ。見せてやる。
 俺は両手を交差し、呟く。

「『第二解放セカンドリベレーション』」

 両腕の鱗が上半身を包み込み、腕の形状が少し変わる。
 四分の一ではない、『半分ハーフ』形態へ進化した。

『ブモォォォォォォ!!』
「悪いな、少し遊ぼうぜ」

 レッドオークは巨大な斧を持っていた。俺を両断しようと振り下ろされるが……見える見える。俺は右手で斧を掴む。
 レッドオークは、必死に斧を取ろうともがく。だが、今の腕力ならレッドオークが十体いようとパワー負けすることはない。
 斧を放し、軽く腹に蹴りを叩きこむと、レッドオークは倒れてしまう。

「俺のスキル、見せてやる。スキルイーター・ストック……『炎龍闘気』!!」

 赤い闘気が俺の身体を包み込み、両手に赤い籠手が装備された。
 スヴァローグの闘気は、もう完全に俺のモノ。
 せっかくだ。この籠手、『炎龍籠手スヴァローグ』にしておこう。

「っしゃ!!」
『ゴボォ!?』
「もう一丁!!」
『ブバァァッ!?』

 腹に一撃、顎に一撃。
 吹き飛ばされたレッドオークは、首の骨が砕け死んでいた。
 俺は闘気を解除し、右手の『捕食右龍アジ・ダハーカ』を展開。レッドオークの死体に向けると、右手の五指ががぱっと開き、レッドオークの身体に喰らい付いた。

「スキルイーター、『咀嚼インストール』……あ、こいつスキル持ってる」

 スキル『バーサーカー』……一定時間、攻撃力十倍になるスキルか。スキル使用時は表皮が真っ赤に変わるのが特徴。うーん……いらないな。というか、レベルが上がらないからストックできない。
 インストールだけでダウンロードできず、経験値となった。

「よし、終わり……」

 変身を解くと、どっと疲れが押し寄せてきた。
 そして、レノが近づき俺の背中をバシッと叩く。

「おま、最強じゃねぇか!! その力あれば学園最強だろうが!!」
「いや、これめちゃくちゃ疲れるんだよ。もっと体力付けて筋力も付けないと使いこなせない」
「じゃあ筋トレか? ははは、いいなお前、すげぇよ!!」
「リュウキくん、回復するよ。怪我はしてないけど、少しは疲労が取れると思う」
「ありがとな、サリオ」
「すっごいわね……これなら、A級……ううん、S級の討伐依頼も受けられるかも」
「燃費悪いから、長時間は無理だぞ?」
「リュウキくん……かっこいいです」
「あ、ありがとな、アピア」

 みんな、思ったより素直だ。誰も怯えてないし、恐れていない。
 まぁ、『獣化』スキルの延長みたいなものだと思ってるんだろうな。

「さて、依頼はこれでおしまいね。オークの討伐証拠を持ってギルドに戻りましょうか」
「「「「了解」」」」

 こうして、ゴブリン、コボルト、オークの討伐が終わった。
 ちなみに、レッドオークの討伐後。

「ふふふ、見てこれ、レッドオークの心臓……これは高値で売れるのよ。兄さんの店で買ってもらおうかな」
「そんなのどうするんだ?」
「決まってるじゃない。あたしたちチームの『アジト』を買うための資金よ」
「「アジト?」」

 俺とアピアの声が揃った。
 するとサリオが。

「冒険者チームは、王都にアジトを持ってるパターンが多いんだ。アジトでは作戦会議をしたり、武器や防具を保管したり、仲間と団らんしたり……あと、冒険者チームが大きくなれば、アジトが宿泊所になったりもする。大手の冒険者チームのアジトは、訓練場があったり専用の寮まであるよ」
「す、すごいな……」
「ダンジョンに入れるのは、1チーム五名までだ。他のチームメンバーはそのチームで鍛え、新しいチームを作ったりもする。ま、研修所みたいな役割もある」
「……知りませんでした。あの、アジトでしたら、私が父に「ストップ」

 と、レイがアピアを止める。

「気持ちは嬉しいけど、仲間はみんな対等よ。アピア、あんたも貴族のお嬢様じゃない、このチームのメンバーなんだから、貴族としての力は使わないこと。お金はみんなで稼いで、みんなでアジトを買いましょ」
「レイさん……ご、ごめんなさい。余計なことを」

 アピアはぺこっと頭を下げた。
 アジトか。そういうのもあるんだなぁ。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...