追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第六章

アジト

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 王都に戻った俺たちは冒険者ギルドへ。
 レイは討伐部位を受付カウンターへ置いた。

「依頼達成の証。ゴブリン、オーク、コボルトの部位。あと、オークの中にレッドオークがいたわ」
「なんと、レッドオークですか? それで」
「討伐はした。ギルドの規定に従って、依頼外の魔獣素材はあたしたちがもらうから。じゃ、報酬を……みんな、冒険者プレート出して」

 冒険者プレートを出し、依頼達成の経験値を魔道具へ。
 レイは思い出したように言う。

「あと、貯金用のプレート一枚ちょうだい。今回の報酬の半分を貯金に、半分を五等分して入れて」
「かしこまりました……はい、入力完了しました。こちら、貯金用のプレートです。そして、今回の依頼達成により、冒険者サリオ様の等級がDランクに上がりました。おめでとうございます!」
「やったぁ!」
「へへ、オレと肩並べたな」
「うん。えへへ……Dランク」

 俺とアピアはEランクのまま。まぁ仕方ない。
 受付が終わり、ギルドの外へ。

「さて、日も暮れそうだし夕飯……といきたいけど、兄さんのところに行っていい? レッドオークの部位を売りに行かないと」
 
 レイは、レッドオークの心臓や目玉、牙や骨なんかが入った袋を見せる……正直、気持ち悪い。アピアとか内臓見て吐きそうになってたしな。レイやレノは平気そうだったし、以外にもサリオが解体の腕がよかった。
 やってきたのはルイさんの店。『ラギョウ商会』だ。
 
「おいおい、お前の兄貴、こんな一等地で店やってんのかよ?」
「まぁね~」
「店も大きいし、すごいね……」
「ふふん」

 レイは嬉しそうだ。
 そして、店のドアを開けると、従業員の女性が出迎えてくれた。
 
「いらっしゃいませ~……あ、お嬢様!」
「お嬢様はやめてよ、アンジェリカ。兄さんいる?」
「はい! 店長、店長!」
「はいはーい……お、レイじゃないか。それにリュウキくんとアピアさん。それと……お友達かな?」
「冒険者仲間。ってかアピアのこと知ってるの?」
「ああ。以前、リュウキくんと二人で……おっと、そんなことより何か用かな?」
「……後でその話聞くから。とりあえず、素材の買い取りして」
「ふふ、お前がうちに素材を卸すなんて久しぶりだな。言っておくが」
「はいはい。兄妹だからって優遇しない、でしょ?」

 さっそく素材の中を確認……うっげ、オークの心臓グロイな。

「レッドオークの心臓か! それに牙、眼球、骨……うんうん、これはいい。加工して売ればいい値が付く」
「で、いくら?」
「そうだな。全部で……大金貨500枚ってところだな」
「売った。じゃ、お金はこれに入れて」

 レイは貯金用プレートを出す。ルイさんは魔道具を操作し入金。レイにプレートを渡す。

「それにしても、お前がチームを組むとはな……チームなら、アジトが必要じゃないか?」
「話が早いわね。兄さん、いい物件ない? 目立たず、そこそこ広い物件」
「あるよ」
「「「「え!?」」」」

 あまりにもあっさり言うので、レイを除いた俺たちは驚く。
 レイは特に驚いていなかった。

「ふふ、学園に通い、リュウキくんのような友人と一緒にダンジョンに潜ったと聞いてね。そのころからお前はいつかチームを作ると思って、いくつか物件を探していた」
「ま、兄さんなら探してると思ってた。で、物件は? いくら?」
「……まだ日暮れ前。ここから近いし、見に行くか?」

 ルイさんの提案を拒否する者は、誰もいなかった。

 ◇◇◇◇◇

 冒険者棒ギルド、ルイさんの店、そして学園。
 この中間地にある二階建ての小さな家が、ルイさんの見つけた物件だった。

「苦労したよ。学園、ギルド、ぼくの店のちょうど中間地にあるこの物件を探すのは」
「すごいわね……」
「さ、中へ」
「……あの、中へと言うことは、もしかして」
「ああ。ぼくが買った物件だよ」

 なんと、すでにルイさんの家だった。
 レノはワクワクしながら中へ。その後にサリオ。レイとアピア、俺とルイさんが続く。
 ルイさんは、嬉しそうに言う。

「いやぁ、レイがこんなにもぼくを頼ってくれるなんて、嬉しいね」
「レイ、素材を売ることになって、真っ先にルイさんの名前出しましたよ」
「あはは。うんうん、嬉しいね」

 ルイさん、気合が入ったのかさっそく説明してくれる。

「まず、一階はリビング。けっこう広いし、チームメンバーが増えても問題ないと思う。そしてこっちはトイレ、物置。キッチン……そしてそして、なんとここには風呂がある!!」

 一階の一番奥に、風呂があった。
 脱衣所は広く、浴槽も五人くらい入ってもまだ余裕がある。
 これにはレイも喜んだ。

「すっご……これ、お湯出るの?」
「ああ。地下水をくみ上げ、魔導炉で温める。蛇口をひねればお湯もシャワーも使えるよ。排水関係も整備したし、魔導炉も最新のを入れてある」
「わぁ~、嬉しいです」

 アピアは喜んでいた。レイもうんうん頷く。

「風呂ねぇ、オレは別に興味ないぜ」
「レノ、水浴びのが好きだもんね」
「ああ。冷たい水だと身が引き締まるからな」
「はいはい。リュウキくんは?」
「俺も風呂は好きだな」

 汗掻いた後とか、すごく気持ちいいし。
 そして二階。こっちは宿泊用の部屋がいくつかあり、二段ベッドも入っていた。
 これはいい物件だ。さらに、ルイさんはリビングにある空っぽの本棚前へ。

「そして、この本棚……実はこれ、動くんだ」

 本棚が横へスライドし、地下への階段が現れた。

「ち、地下室?」
「ああ。地下室にはダンジョンの財宝や貴重品を置くといい。魔導鍵を付けておく」
「……すごいわね」

 レイは感心していた。
 ここならアジトにピッタリだけど、問題が一つ。

「で、いくら?」

 レイがそう言うと、ルイさんは。

「お金はいらない。好きに使ってくれ」
「はぁ? でも、こんないい物件」
「遅くなったが入学祝いだ。レイ……仲間と一緒に、これからもがんばるんだぞ。ぼくはお前のこと、応援しているからな」
「……兄さん」
「ああ、それと……珍しい素材があったら、うち以外に売らないでくれよ」

 そう言い、ルイさんは俺たち一人一人に家の鍵を渡し去った。
 ルイさんが去った後、レイは顔を赤くして嬉しそうに言う。

「ありがと、お兄ちゃん……」
「すっげー!! やばいぜ、アジトだぜアジト!! やったぜ!!」
「すごいなぁ……ね、チーム名ちゃんと決めない?」
「私、お風呂入りたいです。今日はいっぱい汗かきましたし」
「俺、腹減った……がっつり食いたい。変身するとめちゃくちゃ腹減るんだよ」
「あーもう! あんたら、人がせっかく……もういいわ。じゃあ、お風呂溜めておいて、その間に外でご飯食べるわよ。アピア、後で一緒にお風呂入ろっか」
「はい!」
「「「……」」」
「男ども、妙な気を起こしたら……」

 レイの殺気がヤバかったので、俺たちは慌てて頷いた。
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