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第六章
エルフという種族
翌日。王都へ戻り、真っすぐムーン公爵家へ。
本来なら、俺たちみたいなただの学生、冒険者が行けるところでも会えるような人でもないんだが……アピアが屋敷の門兵に声をかけると、すぐに屋敷に通された。
ここに初めて来るレノ、サリオは緊張と興奮だった。
「ままま、マジか……き、きき、貴族の屋敷。しかもクロスガルド二大公爵家の、ムーン公爵家……ききき、緊張して吐きそう。うっぷ」
「見て、この絨毯の刺繍いいなぁ。あ、あっちの絵画も……いいなぁ」
応接間で、レイは出された紅茶に口を付ける。
「ん、おいしい。さすがムーン公爵家」
「お前は緊張しないのか?」
「別に? 貴族の依頼を受けたこともあるし、それに公爵なんて言っても、あたしと同じ人間で、赤い血が流れてるのよ? 緊張なんてしないわ」
「お前、大物だな……それ、公爵様の前で絶対言うなよ」
「はいはい」
そして、アキューレ。
アキューレは澄ました顔で紅茶を飲み、ルルカさんは静かにアキューレの後ろに立っていた。うーん……なんだろう、どこかで見たような気がする。
すると、応接間のドアが開かれ、フリードリヒ・ムーン公爵様が笑顔でやってきた。
「やぁやぁ、無事に戻ったようで何よりだ。ロックワーム、大変だったろう?」
「「「「「「「…………」」」」」」」
俺たちは全員黙り込む。というか、ロックワームて。
すると、アピアが言う。
「公爵様。ご報告がございます」
「ん? なんだい?」
「ムーン鉱山にいたのは確かにロックワームでした。それと、鉱山に無断で侵入した『ギガントマキア』の構成員と遭遇、そのうちの一名が所持していたスキル『マスターテイム』により操られた、『大罪魔獣』の一体と交戦、なんとか討伐しました」
「……なんだって?」
ムーン公爵の笑顔が消えた。
ソファに座り、真面目な顔で言う。
「続きを聞こう。それと、そちらのお嬢さんたちのこともね」
公爵様の目は、エルフのアキューレたちに向いていた。
◇◇◇◇◇
「───……なるほどねぇ」
「というわけで、彼女たちの保護、故郷へ帰るお手伝いを「いいよ」……え」
アピアが言い終わる前に、公爵様は頷いた。
「エルフ族は世界の宝だしね。始祖の一族を無事に送る手伝い、喜んでするよ」
「ありがとうございます」
アピアが頭を下げ、俺たちも全員頭を下げた。
公爵様の砕けた態度や口調に親近感を覚えたのか、レノが小声で「始祖、宝……?」と呟き、公爵様がニコッと笑う。
「エメラルドグリーンの髪、瞳。彼女たちはエルフの始祖、エルダーエルフだ。ヒトの祖先であり、東方にある『聖樹アダム』と『聖樹イブ』の管理を神から一任された、この世界で最も高貴なる一族だね。あなた方は……東方にある亜人の国『フリーデン』の王族ですね?」
「……驚きました。ヒトが我々のことを、ここまで詳しく知っているとは」
ルルカさんが一礼した。
高貴なふるまいというか、洗練された一礼だ。
アキューレが小さく頷くと、ルルカさんが言う。
「こちらの方は、森林王国フリーデンの姫君。アキューレ・シシリカ・ロッテンマイア・フリーデン様……フリーデン王国の正式なる後継者でございます」
「「「「「「え」」」」」」
「ああ、やっぱりね。フリーデン王国最強の精霊使いと噂される、フリーデン王国の『精霊姫』、アキューレ様だったか」
「えっへん」
アキューレは胸を張る……というか、子供っぽいのにデカいな。ルルカさんなんてほとんどないのに。
それとようやくわかった。アキューレとルルカさんの立ち位置、アピアとセバスチャンさんと同じなんだ。
俺は思わず言う。
「エルフの国のお姫様が、なんであんなところに? というか、最強の精霊使いって」
「……中央諸国に来てみたかったの。それで、お忍びで旅行していたら、あの人たちにつかまっちゃった……戦おうと思ったけど……あの鉱山には精霊がぜんぜんいないし、契約した精霊を呼ぶ暇もなかったの」
「そ、そうだったのか。悪い……あ、も、申し訳ございません。姫君と知らず、無礼な口調と態度で」
「いい。リュウキは、助けてくれた。あのドラゴンみたいな姿、かっこよかった」
「あ」
「……ドラゴン?」
しまった。公爵様が反応した。
「そういえば、大罪魔獣の一体……ミドガルズオルムをどうやって退治したんだい?」
「…………」
下手に隠し事をすればまずい。貴族を敵に回したくない。
俺はレイたちを見る。レイたちは小さく頷いた。
そして、俺は闘気でティーカップを作る。
「俺は『獣化』スキル……ドラゴンに変身できる能力を持っています。それで倒しました」
「…………へぇ」
公爵様は、面白そうなものを見る目で笑っていた。
さすがに、エンシェントドラゴンのことは言わなかった。
◇◇◇◇◇
さて、話は終わった。
俺たちの役目は終わり。あとは公爵様に任せよう。
立ち上がると、俺の袖をくいッと引っ張るアキューレ。
「行っちゃうの……?」
「……姫様」
「そう呼ばないで。アキューレって呼んで」
「……アキューレ」
不安に揺れる瞳だった。
そうだよな……盗賊に攫われ、売られかけたんだ。まだ怖いのかもしれない。
俺は、アキューレの手をそっと握る。
「大丈夫。公爵様なら安全に故郷まで送ってくれる。夏の長期休暇になったら、みんなでフリーデン王国まで遊びに行くからさ、その時みんなで遊ぼう」
「……リュウキ」
「昨日も言ったけど、両親に元気な姿を見せて安心させてやれ。それが一番のお礼になるからさ」
「…………うん」
「それじゃ、元気で」
アキューレから手を放し、俺たちは屋敷を出た。
出るなり、レノは俺の背中を小突く。
「お前、マジで女殺しだな。お姫様、お前にメロメロじゃん」
「そんなんじゃないって。助けたのが俺だから気になってるだけだ。俺じゃなくてお前が助けたらお前にメロメロだったぞ」
「マジか!! くぅ~惜しいことしたぜ」
「そこの二人、兄さんの店行くわよ。あとリュウキ、いつまでもデレデレしない!!」
「し、してないっての」
「むー……私は、レイちゃんと同じです。リュウキくん、アキューレさんに優しすぎました」
「あ、アピアまで」
「あはは。リュウキくん、大変だねぇ」
サリオ……そう思うなら、変わってくれ。
本来なら、俺たちみたいなただの学生、冒険者が行けるところでも会えるような人でもないんだが……アピアが屋敷の門兵に声をかけると、すぐに屋敷に通された。
ここに初めて来るレノ、サリオは緊張と興奮だった。
「ままま、マジか……き、きき、貴族の屋敷。しかもクロスガルド二大公爵家の、ムーン公爵家……ききき、緊張して吐きそう。うっぷ」
「見て、この絨毯の刺繍いいなぁ。あ、あっちの絵画も……いいなぁ」
応接間で、レイは出された紅茶に口を付ける。
「ん、おいしい。さすがムーン公爵家」
「お前は緊張しないのか?」
「別に? 貴族の依頼を受けたこともあるし、それに公爵なんて言っても、あたしと同じ人間で、赤い血が流れてるのよ? 緊張なんてしないわ」
「お前、大物だな……それ、公爵様の前で絶対言うなよ」
「はいはい」
そして、アキューレ。
アキューレは澄ました顔で紅茶を飲み、ルルカさんは静かにアキューレの後ろに立っていた。うーん……なんだろう、どこかで見たような気がする。
すると、応接間のドアが開かれ、フリードリヒ・ムーン公爵様が笑顔でやってきた。
「やぁやぁ、無事に戻ったようで何よりだ。ロックワーム、大変だったろう?」
「「「「「「「…………」」」」」」」
俺たちは全員黙り込む。というか、ロックワームて。
すると、アピアが言う。
「公爵様。ご報告がございます」
「ん? なんだい?」
「ムーン鉱山にいたのは確かにロックワームでした。それと、鉱山に無断で侵入した『ギガントマキア』の構成員と遭遇、そのうちの一名が所持していたスキル『マスターテイム』により操られた、『大罪魔獣』の一体と交戦、なんとか討伐しました」
「……なんだって?」
ムーン公爵の笑顔が消えた。
ソファに座り、真面目な顔で言う。
「続きを聞こう。それと、そちらのお嬢さんたちのこともね」
公爵様の目は、エルフのアキューレたちに向いていた。
◇◇◇◇◇
「───……なるほどねぇ」
「というわけで、彼女たちの保護、故郷へ帰るお手伝いを「いいよ」……え」
アピアが言い終わる前に、公爵様は頷いた。
「エルフ族は世界の宝だしね。始祖の一族を無事に送る手伝い、喜んでするよ」
「ありがとうございます」
アピアが頭を下げ、俺たちも全員頭を下げた。
公爵様の砕けた態度や口調に親近感を覚えたのか、レノが小声で「始祖、宝……?」と呟き、公爵様がニコッと笑う。
「エメラルドグリーンの髪、瞳。彼女たちはエルフの始祖、エルダーエルフだ。ヒトの祖先であり、東方にある『聖樹アダム』と『聖樹イブ』の管理を神から一任された、この世界で最も高貴なる一族だね。あなた方は……東方にある亜人の国『フリーデン』の王族ですね?」
「……驚きました。ヒトが我々のことを、ここまで詳しく知っているとは」
ルルカさんが一礼した。
高貴なふるまいというか、洗練された一礼だ。
アキューレが小さく頷くと、ルルカさんが言う。
「こちらの方は、森林王国フリーデンの姫君。アキューレ・シシリカ・ロッテンマイア・フリーデン様……フリーデン王国の正式なる後継者でございます」
「「「「「「え」」」」」」
「ああ、やっぱりね。フリーデン王国最強の精霊使いと噂される、フリーデン王国の『精霊姫』、アキューレ様だったか」
「えっへん」
アキューレは胸を張る……というか、子供っぽいのにデカいな。ルルカさんなんてほとんどないのに。
それとようやくわかった。アキューレとルルカさんの立ち位置、アピアとセバスチャンさんと同じなんだ。
俺は思わず言う。
「エルフの国のお姫様が、なんであんなところに? というか、最強の精霊使いって」
「……中央諸国に来てみたかったの。それで、お忍びで旅行していたら、あの人たちにつかまっちゃった……戦おうと思ったけど……あの鉱山には精霊がぜんぜんいないし、契約した精霊を呼ぶ暇もなかったの」
「そ、そうだったのか。悪い……あ、も、申し訳ございません。姫君と知らず、無礼な口調と態度で」
「いい。リュウキは、助けてくれた。あのドラゴンみたいな姿、かっこよかった」
「あ」
「……ドラゴン?」
しまった。公爵様が反応した。
「そういえば、大罪魔獣の一体……ミドガルズオルムをどうやって退治したんだい?」
「…………」
下手に隠し事をすればまずい。貴族を敵に回したくない。
俺はレイたちを見る。レイたちは小さく頷いた。
そして、俺は闘気でティーカップを作る。
「俺は『獣化』スキル……ドラゴンに変身できる能力を持っています。それで倒しました」
「…………へぇ」
公爵様は、面白そうなものを見る目で笑っていた。
さすがに、エンシェントドラゴンのことは言わなかった。
◇◇◇◇◇
さて、話は終わった。
俺たちの役目は終わり。あとは公爵様に任せよう。
立ち上がると、俺の袖をくいッと引っ張るアキューレ。
「行っちゃうの……?」
「……姫様」
「そう呼ばないで。アキューレって呼んで」
「……アキューレ」
不安に揺れる瞳だった。
そうだよな……盗賊に攫われ、売られかけたんだ。まだ怖いのかもしれない。
俺は、アキューレの手をそっと握る。
「大丈夫。公爵様なら安全に故郷まで送ってくれる。夏の長期休暇になったら、みんなでフリーデン王国まで遊びに行くからさ、その時みんなで遊ぼう」
「……リュウキ」
「昨日も言ったけど、両親に元気な姿を見せて安心させてやれ。それが一番のお礼になるからさ」
「…………うん」
「それじゃ、元気で」
アキューレから手を放し、俺たちは屋敷を出た。
出るなり、レノは俺の背中を小突く。
「お前、マジで女殺しだな。お姫様、お前にメロメロじゃん」
「そんなんじゃないって。助けたのが俺だから気になってるだけだ。俺じゃなくてお前が助けたらお前にメロメロだったぞ」
「マジか!! くぅ~惜しいことしたぜ」
「そこの二人、兄さんの店行くわよ。あとリュウキ、いつまでもデレデレしない!!」
「し、してないっての」
「むー……私は、レイちゃんと同じです。リュウキくん、アキューレさんに優しすぎました」
「あ、アピアまで」
「あはは。リュウキくん、大変だねぇ」
サリオ……そう思うなら、変わってくれ。
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