追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
73 / 109
第七章

オークション開始

しおりを挟む
『まず、最初のスキルは……エピックスキル、『天雷魔法』です!! 『雷魔法』の最上位魔法!! 大金貨500枚からスタートです!!』
「600!!」「700!!」「800!!」

 入札が始まった……が、俺はイザベラから目が離せなかった。
 あの女、なぜここにいる。目的はスキル、だよな?
 すると、サリオが俺の肩を叩く。

「天雷魔法、レイさんの第二候補だけどどうする? 第一候補が出ると限らないし、ここで落としておくのもありかも」
「あ、ああ……」
『現在、大金貨2700!! 他にいませんか?』

 ちなみに、大金貨1000枚で白金貨1枚だが、ここでは全て大金貨の枚数で計算する。そっちの方がオークション参加者にもわかりやすいからだ。
 オークションは、不正などがないように、事前情報などが全くない。通常のオークションでは出品リストなどがあるのだが……このスキルオークションに関しては、リストやカタログがない。
 なので、何が出てくるかわからない。
 俺たちの大金貨予算は50000枚。白金貨5枚だ。
 だが、まだオークションは始まったばかり。

「……いや、やめておこう」
「わかった」
『それでは、参加番号19番さんが落札です!!』
「…………」
「リュウキくん、どうしたの?」
「い、いや……」

 イザベラ。あの女……何を落札しに来たんだ?

 ◇◇◇◇◇
 
『それでは次のスキル!! 身体強化スキルの最上級、『全身強化』だ!! これがあれば、部分強化スキルはもう必要なし!! では、大金貨800枚からスタートです!!』
「来た。サリオ」
「わかってる」
「1000!!」「1200!!」「1300!!」

 サリオが挙手し、指立てる。

「2000!!」
「2100!!」「2200!!」「2300!!」

 そして、もう一度挙手。

「3000!!」
「「「「「…………」」」」」
『3000が出ました。他にいませんか~?……では、参加番号39番が落札!!』
「よし!!」

 思わず拳を握り、サリオと小さくハイタッチ。
 レノの望んだエピックスキルを手に入れた。大金貨3000枚、なかなかの出費だった。
 その後、『全体支援魔法』とレイの第一候補の『金属精製』を落札した。まさか、三人の第一候補を手に入れられるとは思わなかった。
 目的のスキルは全て手に入れたし、後はオークションを楽しもうとのんびり観戦。
 そして───本日最後のスキルが。

『皆様、本日最後のスキルとなります。本日参加された方は、新たな歴史が始まる瞬間に立ち会えるラッキーな方々としか言えません』

 司会者が仰々しい説明をする。
 俺とサリオが顔を見合わせ首を傾げた。
 そして。

『本日最後のスキルは、エピックスキル……ではありません!! なんと、レジェンド、レジェンドスキル!! 『大賢者シン・サーガ』!! 魔法系スキルの最強!! さぁ、大金貨30000からスタートです!!』
「100000」

 大金貨3万からのスタート。いきなり10万の値を付けたのは……イザベラだった。
 静寂に包まれる会場。
 唖然とした司会者が復活し、震える声で「じゅ、じゅうまん……ほ、他にいませんか」と言う。
 俺はイザベラから目が離せない。
 間違いない。こいつ……最初から、このスキルが狙いだった。
 大賢者。最強の魔法系スキル。
 
『そ、それでは。今回のスキルオークションはこれにて終了!!』

 こうして、オークションは終了した。

 ◇◇◇◇◇

 支払いをして、スキルを受取った。
 すると、ムーン公爵がステッキをクルクル回しながら俺たちの元へ。

「いいスキルを手に入れたようだね」
「はい!! えへへ、早く装備したいけど、レノと一緒に……リュウキくん?」
「……すみません。公爵様、サリオのこと任せてもいいですか?」
「構わないよ。ふふ、気を付けて」
「え、え……リュウキくん?」

 俺はサリオを置いて、オークション会場を出た。
 オークション会場の裏に回り、人がいないことを確認。

「『龍人変身ドラゴライズ』!!」

 変身し、オークション会場の屋根に飛び移り、闘気を全開にして視力、そして嗅覚を強化し、イザベラの匂いを探し当てる。

「───……いた!!」

 一台の馬車が、すごい速度でオークション会場から遠ざかっていく。
 俺は闘気を全開にして後を追う。屋根から屋根に飛び移り、馬車を追う。
 走りながら考える。
 どうして俺は、イザベラを追っているのか。
 明確な理由があったわけじゃない。でも……なぜか、イザベラを追わなければいけない気がした。
 馬車はクロスガルドを出て、街道をひたすら進む。走っているとバレるので、『第二解放セカンドリベレーション』で翼を生やし、空を飛んだ。
 そして、馬車が森の中で止まり、イザベラが下りてきた。

「……なんだ、ここ?」

 馬車が止まったのは、森の中にある小さな洞窟。
 イザベラは、数人の護衛と一緒に洞窟の中へ。
 俺は地上に降り、変身を解除。見張りもいないので、気配を殺して洞窟内へ。
 洞窟内には松明があり明るい。

「……いる」

 最奥が、明るい。
 奥に進むと、そこは……三十人以上の人間がいた。
 驚いたことに、玉座のような椅子に座っているのはイザベラだった。

「で、エルフのガキは見つけたのかしら?」

 イザベラが言う……エルフの、ガキ?
 すると、マントを装備している冒険者風の男が言う。

「いえ、まだです。ムーン公爵家に護衛されたエルフは東方に戻りましたので……現在、クロスガルドにいるエルフは、学園内にいる王族の女と、そのメイドだけになります」
「そ。だったら、捕まえてきなさい。エキドナ様がエルフの血をお望みなの。わざわざ東方まで行ってられないわ」
「し、しかし……あの学園内は、警備が厳しく」
「だから? それとも、エキドナ様の忠実なるしもべである私の言うことが聞けないのかしら?」
「そ、そんなことは」
「エキドナ様はエルフの血をお望みよ。さっさと捕獲してらっしゃい」
「「「「「は、ははぁ!!」」」」」

 エキドナ……その名前、聞き覚えがある。
 俺の中のエンシェントドラゴンの知識が告げる。エキドナ、ドラゴンの名前だ。
 そうか、こいつらが《ギガントマキア》……まさか、イザベラがギガントマキアのメンバーだったとはな。
 すると、エキドナの傍に立つ男が言う。

「ところでイザベラ様、オークションはどうでした?」
「上々よ。レジェンドスキルを手に入れたわ。これで、私のキルトはもっと強くなれる。フフフ……最強の魔力、最高のスキルを得たキルトは、ギガントマキアを率いるのに相応しい」
「あなたの息子、ですね」
「ええ。あの馬鹿な長男から魔力を奪うのは苦労したけど、その甲斐あって今はかなりの強さを誇る。ああ……キルト、もっと、もっと強くなって」

 ……この、野郎。
 イザベラがギガントマキアってだけで驚いてるのに、キルトをギガントマキアのリーダーにするのが、イザベラの計画なのか? 俺の魔力を奪ったのも、計画の一部……くそ。

「シモン。私は少し休む……あなたも、エルフの女を攫ってくるの手伝いなさい。そのための力をあげる」
「ありがたい。イザベラ様の『祝福』があれば、A級冒険者だろうと我の敵ではない」
「そうね。じゃあ……いってらっしゃい」

 イザベラが指を鳴らすと、シモンとかいう男は消えた。
 そして、イザベラが───……俺のいる方を見た。

「久しぶりね、リュウキ」
「……イザベラ、お前」
「フフフ。私が『ギガントマキア』と知って驚いた? そう、ドラグレード公爵家も、あなたに近づいたのも、あなたの強大な魔力を奪うためにすぎない。残念だったわね」
「……エルフを攫うだって?」
「ええ。我が盟主エキドナ様がお望みだから。苦労して助けたみたいだけど、もう遅いわ……今頃、シモンがあなたたちのアジトを襲っている。もう、手遅れよ」
「イザベラ、お前ぇぇぇぇっ!!」

 俺は変身しようとするが、イザベラが指を鳴らすと煙のように消えてしまった。

『またね、リュウキ……いずれキルトが、あなたを殺す』

 俺は最後まで聞かず、変身して洞窟から飛び出した。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...