追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第七章

敵襲

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 チーム『エンシェント』のアジトには、レイたちが集まっていた。
 リュウキとサリオがオークションから戻ってくるのを、今か今かと待っている。特に、レノは落ち着きなく、リビングをウロウロしては壁に向かってシャドーボクシングを繰り返していた。
 すると、レイが言う。

「レノ、落ち着きなさいよ」
「いや、マジでワクワクが止まんねぇんだ。なぁなぁ、最近のオレらヤバくね? ミドガルズオルムの素材装備に、学園内では注目の的。こんな立派なアジトを手に入れて、さらに貴族が開催するオークションでエピックスキルをゲット……いや、普通に考えたらおかしいって」
「……まぁ、気持ちはわかる。あたしだって、アジトを手に入れるのは早くて三年生になってから、遅くても学園の卒業前だって考えてたし。B級からA級に上がるのも、卒業後かなーって考えてたわ」
「だよな、マジで最高だぜ」

 二人の会話を聞きながら、アキューレはアピアに聞く。

「ね、ね。学園には『長期休暇』があるんだよね?」
「はい。1年間を四期に分けて学習しますので、合計四回休みがあります。春と秋の休暇は短いですけど、夏と冬の休暇は長いですよ」
「じゃ、夏になったらみんな、フリーデン王国に来て。わたし専用のビーチに招待する」
「専用ビーチですか? 素敵ですねぇ」
「うん。綺麗な砂浜、青い空、透き通った海……わたし、裸で泳ぐの。すっごく気持ちいいの」
「は、裸はちょっと……」

 苦笑するアピア。
 セバスチャンがルルカと一緒に、全員のお茶を淹れ直す。
 そして、レイの前に紅茶カップを置こうとして───……セバスチャンの動きが止まった。

「……ん、セバスチャンさん?」
「…………」

 静かに紅茶を置き、セバスチャンは言う。

「……アジトが、包囲されています。悪意のある何者かがいるようです」

 レイの目がスッと細くなり、気配を探る。
 
「……数は二十以上ね。やれやれ……どこかで恨みを買ったのかしら」
「れ、レイちゃん?」
「全員、戦闘準備。敵襲よ」
「ま、マジかよ」

 レイは双剣を手に取り、首をコキコキ鳴らす。
 アピアはハンドタイプの魔導銃を二丁手に持ち、アキューレは室内で弓が使えないと判断し、ナイフを装備。レノは拳をパシッと打ち付ける。ルルカもナイフを装備し、アキューレの傍へ。
 最初に動いたのは、セバスチャンだった。

「お嬢様。少し……数を減らして参ります」
「……わかりました。気を付けて」
「お、おいおい。セバスチャンさん一人で」

 セバスチャンは、リビングから出ていった。
 すると、アピアは言う。

「大丈夫です。セバスチャンは元S級冒険者ですから」
「「マジで!?」」

 レイとレノが驚愕し、アキューレは首を傾げていた。

 ◇◇◇◇◇

 セバスチャンは、普通に玄関のドアを開けて外へ。
 執事が付ける白手袋をキュッとはめ直し、誰もいない玄関前で言う。

「申し訳ございません。このアジトを守る者として……敷地内への無断侵入者に対して、命を奪うことにしています」

 ビキビキと、セバスチャンの細い身体に魔力が満ちていく。
 拳法の構えを取り、静かに告げた。

「何者か存じませんが……お覚悟を」

 ◇◇◇◇◇

 レイたちは、リビングの中心に集まり、それぞれ背を向けていた。
 レノは、小さく「ふぅ」と言い、小声で言う。

「……静かだぜ。マジで敵なんているのか?」
「……いる。わからない? すでに二階から侵入されてる」
「ま、マジ?」
「狙いが分からない以上、下手に動けないわね……」

 と───次の瞬間、リビングに小さな『箱』が投げ込まれた。
 瞬間、レノが動く。
 飛んできた箱を、外に向かって蹴り飛ばしたのだ。
 窓ガラスが割れ、箱が外へ飛んで行く。そして……外で箱が割れ、煙が噴き出した。

「レノ、ナイス!! 双剣技、『十字斬』!!」
「ぐあっは!?」

 飛び込んできた男を、レイは容赦なく斬り捨てた。
 そして、何人もの侵入者がリビングに雪崩れ込んできた。
 侵入者の一人が言う。

「エルフの女を出せ」
「え、わたし?」
「そいつを引き渡せば、命は取らん……どうする?」
「信じると思う?」

 レイは観察する。
 数は十五人。狙いはアキューレとルルカ。リーダー格の男は……強い。
 レイは、アピアとレノ、アキューレに告げた。

「あのリーダー格の男はあたしがやる。雑魚は任せていい?」
「ああ、任せとけ。リーダー!!」
「わたし、前に出る」
「援護はお任せください!!」

 こうして、アジトでの戦いが始まった。

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 俺は、クロスガルド王国に向かって飛んでいた。
 第二解放、かなり体力を消耗するけど仕方ない。アキューレが狙われているなら、早く戻らないと。
 それに……アジトには今、レイたちがいる。
 
「急げ急げ急げ『キュァァァァ───……』……ん?」
 
 ふと、鳥のような声が聞こえた。
 そして───ゾワリと背筋に冷たい汗が流れた。
 俺は反射的に真横へ飛ぶと、俺が飛んでいた場所に炎の塊が通過した。
 
「な、なんだぁ!?」

 急停止し、上空を見上げると───……とんでもない生物がいた。
 巨大な四枚の翼を広げ、長い首が三つ、頭も三つある『鳥』だった。
 頭が三つある鳥。一つの口からは雷が、もう一つからは炎が、最後の一つからは冷気が出ている。
 全然、気が付かなかった。

『『『キュォォォォォ───ンンン!!』』』
「くっ……イザベラの差し金かよ!!」

 どうやら、戦うしかなさそうだ。
 俺の中にあるエンシェントドラゴンの知識が教えてくれる。
 この、得体の知れないバケモノ鳥。
 大罪魔獣の一体、『強欲な魔鳥』ステュムパリデス。
 ステュムパリデスは、三つの口から異なる属性の魔力を溜め始めた。

「来やがれ、今日の晩飯にしてやるからな!!」

 俺は右手を巨大化させ、闘気を全開にして向かっていく。
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