追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
87 / 109
第七章

毒魔凶龍テュポーン

しおりを挟む
 レイたちは、ギガントマキアの構成員たちを全て倒し集まっていた。
 それぞれ、サリオの手当てを受け傷は治っている。
 上空にいたアピアも周囲を『鷹の眼』で、周囲に敵の存在がないことを確認。ワイバーンに命じ、地上に降りて仲間たちと合流した。
 レイは、満足そうに言う。

「みんな、お疲れ様」
「いや~……マジでオレら最強だぜ!!」
「調子に乗らないの。リンドブルムの『闘気』があったからこそ、こうして戦えたのを忘れないで。本来なら、あたしたちが太刀打ちできるような組織じゃないのよ? ここに転がってる雑魚だって、本来なら最低でもB級冒険者くらいの強さなんだからね」
「わ、わかってるよ」

 レノがムスッとする。
 すると、無傷のリンドブルムがボロボロの人間を引きずってきた。
 その人間を投げ、レイたちの前へ。

「ここに、学生がいるみたい。この人が言ってた」
「学生?」
「うん。チーム『アークライト』だって。イザベラ? とかいう人が連れて来たって」
「「「「アークライト!?」」」」

 全員の声が揃った。
 リンドブルムは首を傾げる。
 レイは、サリオに聞いてみた。

「アークライトって……キルトたちのチームよね」
「う、うん。リュウキくんの義弟、だよね」
「オイオイオイ、なんでそいつらがここにいるんだよ? まさか、オレらと同じ、ギガントマキアを潰しに来たんじゃねぇのか?」
「そう、なんでしょうか? 私にはどうも、別の意図があるような気がします……」

 全員が無言になる。
 リンドブルムは、レイの背中をパシパシ叩いた。

「とりあえず、お友達さがそ」
「あ、うん。そうね……みんな、宮殿内に踏み込むわ。リュウキも───……」

 と、次の瞬間……宮殿から爆破音が聞こえた。
 ギョッとして宮殿を見るレイたち。
 その音が、宮殿の反対側からリュウキが吹っ飛ばされた音だとは気付かない。
 だが、リンドブルムは気付いた。

「───ッッ!! みんな、ここはまずい、逃げ「逃げるなんてひどいなぁ」

 と───上空に、人が浮かんでいた。
 紫色の髪をなびかせた、美少年がそこにいた。
 
「や、リンドブルム」
「っ……って、テュポーン、お兄さま……」
「やれやれ。臆病なお前が、人間を連れて殴り込んでくるなんてね。人間の国でチヤホヤされながら、のんびり暮らしていればいいのに」
「……っ」

 レイたちは、動けなかった。
 目の前に浮かぶ『何か』は、レイたちを見ていない。
 リンドブルムが言った『お兄さま』という言葉で、少年がドラゴンだということは理解できた。理解、できてしまったのだ。
 最強生物。ドラゴン。
 リンドブルムの闘気をわずかに分けてもらったからわかる。
 これは、バケモノだ。
 勝つとか、負けるとか、そういう次元に存在しない生物。
 
「お、お兄さま……あの、エルフはどこ?」
「エルフ? ああ、エキドナが喰おうとしてるエルフか? それなら宮殿にいるよ」
「……そ、その、その子。返してもらうこと、できる?」
「…………」

 少年は無言になり、一瞬でリンドブルムの目の前へ。
 そして、その首をガシッと掴み、顔を近づけてにっこり笑った。

「お前、誰に、何を命令してる?」
「ち、ちが」
「スヴァローグが死んだの、お前も関わってるよな? 御父上の力を継承した人間、そんなに頼りになるのか? 最弱のドラゴンであるお前が、オレに、オレに命令できるほど強気になれるような、そんなやつなのか?」
「ち、ちが、違う……うっ!?」

 テュポーンに掴まれたリンドブルムの首が、ジュワジュワと音を立て溶けていく。
 さらに、リンドブルムは吐血。首筋に紫色の毒々しい模様が広がっていく……毒だ。
 八龍で唯一の毒を使うドラゴン、テュポーン。
 紫色の闘気が、ジワジワとあふれ出し、今まさにリンドブルムの首を溶かし、千切り飛ばそうとした。
 
 次の瞬間、宮殿の壁が吹き飛び、エキドナが地面を転がった。

 ◇◇◇◇◇

「いったぁ……」

 エキドナはむくりと起き上がり、頬を撫でつけた。
 
「おい、何してんだよ」
「あらテュポーン。ちょっとねぇ……ふふ、油断しちゃった」
「はぁ?」
「ぐ、が……」

 テュポーンは、ようやくリンドブルムを投げ捨てる。
 そして、宮殿を破壊しながら歩く、一人の少年……リュウキを見た。
 顔以外の身体が、鎧のような鱗に包まれている。

「あれが御父上の力を継承した人間か……へぇ、なかなか仕上がってんじゃん」
「ええ。感情を爆発させて、あれだけの力を引き出したみたい。ね、面白そうじゃない?」
「アレ使って遊ぶのか? 面白そうだけどさ」
「ええ。ふふふ、楽しくなりそうね」

 リュウキは翼を広げ、絶叫した。

『グゥォォォォォォォォォォォォォォォォォ───ッッッ!!』

 その叫びは、完全に理性を失った野生の獣のようだった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...