追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第八章

準備、そして

「ふーん。あんたらで出し物やんの?」
「いいなー、面白そうです」

 放課後、アジトに集まり学園祭について報告し合うと、レイとアピアが羨ましそうに言う。
 俺は紅茶を飲みながらレノをジロッと見た。

「レノが『休憩所』とか言うし、推薦された時にノリノリだったから引くに引けなくなっただけかもしれないけどな」
「い、いいじゃねぇかよ。な、サリオ」
「うーん。休憩所はともかく、あんまり人前で目立つのはなぁ……」
「お、おいおい……アキューレは?」
「わたしは楽しみ」
「っしゃ!! ま、肯定的な意見もあるってこった」

 レノはクッキーをボリボリかじる。
 俺は肩をすくめ、話題を変えようとレイに聞いてみた。

「な、そっちは?」
「Aクラスね。まぁ、キルトのことでいろいろあったし、あいつの信者とかもいたクラスだから、揃ってワイワイやるって雰囲気じゃないのは確かね……」
「いちおう、模擬店をやることになりました。うちのクラス、商家出身の方が多いので、貴重な道具や武器を持ち込んで売ろう、ってことになりまして」
「あたしも、兄さんに相談するわ」

 クラスで店をやるのか。道具や武器を持ち込んでの販売……ちょっと面白そうだ。
 すると、サリオが言う。

「ね、リュウキくん。代表による出し物だけど」
「あ、そうだった。なぁレイ、俺たちDクラスの四人で、クラス代表の出し物することになったんだけどさ……何やればいいと思う?」
「そうねー……闘技場でやるんだし、模擬戦でもやれば? あんたが派手に戦えば闘技場内はめちゃくちゃ盛り上がるんじゃない?」
「おいおいおい、リュウキはドラゴンを二体同時にブチ殺した人間だぜ? こいつに勝てる人間とかもういねぇだろ」
「ブチ殺したとか言うなよ……でも、模擬戦か。面白そうだな。レノ、俺と戦うか?」
「…………冗談だよな」

 レノはちょっと引きつった笑い方だった。
 
「でも、模擬戦かぁ。リュウキくんが戦ったら、盛り上がるよね」
「俺かぁ。別にいいけど……誰と戦うんだ?」
「盛り上がりたいなら、ヴァルカンとたたかう?」

 と、いきなり聞こえた声。
 全員が声の方を向くと、ちょこんとソファに座るリンドブルムがいた……こいつ、いつの間に。
 リンドブルムはクッキーを食べながら言う。

「ヴァルカン。人間の中でたぶん最強、最近相手がいないってボヤいてた。リュウキ、あの子のストレス解消してあげてほしい」
「ヴァルカンって、学園長だよな……リンドブルム、知り合いなのか?」
「うん。昔、一緒にダンジョンにもぐった。あの子が子供のころ、鍛えてあげたの」

 なんと、驚いたぞ。
 まさか、ヴァルカン学園長がリンドブルムの弟子だったとは。

「あの子、孤児で親がいない。わたしが拾って育てた」
「そうだったのか……」
「じゃ、おねがい。わたしからヴァルカンに伝えておくから」
「え、ちょ」

 リンドブルムは立ち上がり、窓を開けて出ていった。
 するとレノが。

「あれ、出し物決まったか? ってか、それだとオレらの出番なくね?」
「…………」
「まぁ仕方ないね。リュウキくんに頑張ってもらおうよ」
「サリオ、なんで嬉しそうなんだ?」
「リュウキのかっこいいところ見れるなら、わたしはいいよ」
「……リュウキ、頑張りなさいよ」
「ふふ、リュウキくん。すっごく複雑そうですね」
「…………」

 こうして、Dクラス代表の出し物は『リュウキVS学園長ヴァルカンの戦い』となった……いやいや、学園祭だぞ、どういう出し物だよ。

 ◇◇◇◇◇

 とりあえず、しばらくは学園祭の準備があるので、ダンジョンや冒険者としての活動はなくなった。
 学園祭の準備と言っても、Dクラスはテーブルを並び変えて、喫茶店風の並びにするだけ。クラスのみんなも、学園祭は各クラスや上級生のクラスに遊びに行けるなんてはしゃいでた。
 なるほど、他のクラスに行くか……それは面白そうだ。

 ちなみに俺は、学園長とのバトルが正式に決まった。
 リンドブルムが何を言ったのか……学園長直筆の『果たし状』が寮の俺の机の上に置いてあったのだ。字が汚くほとんど読めなかったが……『貴殿と戦えることを誇りに思う』ってのは読めた。
 学園長、本気みたいだ。
 俺も、本気で応えなくちゃいけない。

 あ、それともう一つ。
 テュポーン、エキドナを倒したこと。ギガントマキアのリーダー、イザベラを処刑したことで、犯罪組織ギガントマキアは壊滅したとの号外記事がクロスガルド王国に広まった。
 キルトは鉱山で労働、プリメラも農園で働いているらしい。
 それと……ドラグレード公爵家から俺宛に手紙が来たが、俺は読まずに破り捨てた。イザベラも、キルトもギガントマキアに構成員で捕まり、ドラグレード公爵家の立場はかなり悪いらしい。
 ギガントマキアを討伐し、ドラゴンを倒した冒険者チームにいる俺に何を言いたいのか知らんが、もう二度と関わるつもりはない。こっそり、母上の墓参りくらいには帰るつもりではいるけどな。

 そして、学園祭の準備が始まり……あっという間に二十日が経過。
 学園祭の開催三日前。俺は一人で、ハイゼン王国にある『龍の森』に来ていた。
 今の俺なら、飛行すれば数時間でここに来れる。
 俺は、エンシェントドラゴンと会話した場所に巨大な墓石を置き、花と酒を供えた。

「……お前はここにいるけど、墓はあった方がいいかなって思ってさ」

 俺の中に、エンシェントドラゴンはいる。
 ずっと墓を作ろうと思っていたが、ようやく来ることができた。
 静かに祈りを捧げていると───……ふと、気配を感じた。

「……優しいのね、あなた」
「……誰だ?」

 そこにいたのは、真っ白な着物を着た女。
 髪も、肌も、何もかもが白い。ミルクの海に飛び込んだらすぐに見失いそうなほど、白い女だった。
 俺はすぐに気付く……こいつは、ドラゴンだ。

「争うつもりはないわ。ちょっと、話をしたくてね」
「……そうか、お前が。バハムートか、ハクリュウか」
「ハクリュウよ。『白麗聖龍』ハクリュウ……よろしくね、リュウキ」

 ハクリュウは、俺の隣に立ち、白い酒瓶を墓に供えた。

「お父さん……」
「……」
「意外、みたいな顔するわね。お父さんを愛しているのは、リンドブルムだけじゃないのよ?」
「全員、憎んでるのかと思ってた」
「ふふ、そうかもね。特に、バハムートはそう……」
「…………」
「あの子は、力を求めているわ。強大な力を持つお父さんを超えるのが目標だった。お父さんの死期が近づき、あの子はお父さんの力を継承することを疑っていなかった。でもね……あなたが、それを継承した。ふふ、バハムートは相当、怒ってるわ」
「え……」
「気を付けなさい。私の封印・・・・は、もうすぐ完全に破られる。そうなったら、まず最初にあなたが狙われるわよ」
「……あ、あんた、どうしてそのことを、俺に」
「エキドナ、テュポーンが何を言ったか知らないけど……人間が作るお酒、大好きなのよ。だから私は人間の世界で生きるのが好き。フラフラしながらお酒を飲むのが好き。あなたと敵対するつもりはないし、手を貸すこともしない。一時的にバハムートの《力》に制限をかけたけだけで、もう何かをするつもりはないわ」
「…………」
「お父さんの力、完全に使いこなさないと、バハムートには勝てないわよ」

 そう言って、ハクリュウはその場から歩き去った。
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