追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第八章

ヴァルカン学園長

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「がーっはっはっはっは!! 来たか、リュウキ!!」

 長い通路を進み、闘技場の中心へ出ると……ヴァルカン学園長が舞台のど真ん中に立っていた。
 すごい装備だ。真っ赤な全身鎧を着ているので肌の露出が顔しかない。そして武器……とんでもなく巨大な『大戦斧』だ。すごい、全長四メートル、刃の部分も二メートル以上ある。
 人間ではまず持てないサイズの斧を、ヴァルカン学園長は片手で持ち肩に担いだ。

「リンドブルムが絶賛していたぞ。リンドブルムよりも強い、間違いなく最強の人間だとな!!」
「そ、それはどうも……」

 声がデカい。
 闘技場内は歓声に包まれているが、ヴァルカン学園長の声のが響く。
 圧倒されそうになるが、俺は気合を入れ直す。

「学園長、悪いけど手加減しませんから」
「うむ!! ワシも殺すつもりで戦おう!!」

 こ、殺すつもりって……俺、いちおう生徒なんだけど。
 ヴァルカン学園長は、巨大な斧をクルクルと頭上で回転させた。

「久しぶりに、楽しめる……感謝するぞ、リュウキ!!」

 すると、ここで実況が入った。

『それでは、始めたいと思います。学園長ヴァルカン対、チーム《エンシェント》の戦士リュウキ!! 注目の一戦です!! ルールは簡単、死んだら負け!! 実にシンプル、それゆえに最高の戦いが楽しめそうです!!』

 後で知ったことだが、俺とヴァルカン学園長の戦いが締めで、学園祭が始まってからずっと、生徒同士や生徒対教師などの戦いが繰り広げられていたそうだ。
 まぁ、どうでもいい。
 俺は、戦うだけだ。

「『龍人変身ドラゴライズ』」

 俺の両腕が鱗に包まれ、ツノが伸び、牙が伸びる。
 闘技場内は大歓声に包まれた。こんな大勢の前で変身するの、初めてだしな。
 ヴァルカン学園長も、斧を俺に向ける。

『それでは───本日最後の戦い、開始です!!』
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!」

 開始と同時に、ヴァルカン学園長が突っ込んで来た。

 ◇◇◇◇◇◇

「『全身強化』!! 『火炎付与』!! 『粉砕』!!」
「いぃっ!?」

 いきなり、ヴァルカン学園長は三つのスキルを付与してきた。
 全身強化。火炎付与で斧が爆発するように燃える。
 俺は横っ飛びで、真上から振り下ろされる斧を回避。舞台に斧が直撃すると、舞台が爆発し粉々に砕け散った。
 舞台の消えた闘技場。俺はすぐにヴァルカン学園長へ向かっていく。

「『闘気精製ドラゴンスフィア』───〝大剣バスターソード〟!!」

 闘気で大剣を作り、ヴァルカン学園長の胴を薙ぐ……が、なんと学園長は片手で俺の大剣を受け止めた。これにはもう驚くしかない。今の俺の腕力を、普通の人間が受け止めるとは思わなかったのだ。
 
「なかなかのパワー!! だが、まだまだぁ!!」
「くっ───」

 大剣を捨て、拳を巨大化させる。
 するとヴァルカン学園長は、斧の腹で俺の拳を受け止めた。

「ぐっ……!!」
「がっはっはっはっは!! いい、いいぞ!! このパワー、素晴らしいぞ!!」
「そりゃ、どうも!!」
「ぬっ!?」

 俺は拳を小さくし、パワーだけでなく速度を使い翻弄することにした。
 が、ヴァルカン学園長はパワーだけじゃなかった。
 
「《双剣技》!! 『万華鏡刃』!!」
「なっ!?」

 斧を投げ捨て、腰から二本の剣を抜き、俺の両腕を斬りつけた。
 鱗が斬れ、腕から血が出る。まさか斧を捨てるとは思わなかった。
 距離を取ろうとするが、ヴァルカン学園長は俺から離れずに双剣を細かく振るう。
 やばい、この速度───対応できない。
 腕を大きくして防御するが、少しずつ削られていく。

「くっ───……ッ!!」

 慢心。
 俺はもしかしたら、心の中で侮っていたのかもしれない。
 エンシェントドラゴンの力を持つ俺が、今さら他の人間に負けるわけがない、と。
 ドラゴンを三体も屠った俺は、人間には負けないと。
 だが、今こうして俺は追い詰められている。相手は、人間だ。

「どうしたどうした!! 反撃の一つでも」
「ああ、そうだった」

 俺は一瞬だけ防御を解いた。
 双剣が俺の胸を斬り裂く───が、防御を無視した俺は学園長の横っ面に拳を叩き込む。
 学園長は吹っ飛び、地面を転がる。
 俺は裂けた胸を手で押さえる。

「くぅぅ~~~……久しぶりに血沸き肉躍る!! これほどの拳、初めてだ!! がっはっはっはっは!!」

 学園長は起き上り、頬を撫でる。
 俺も胸を押さえ、学園長に応えるべく胸をドンと叩いた。

「まだまだ、こんなモンじゃありませんよ。学園長」
「そりゃありがたい。もっともっと楽しもうぞ!!」

 俺の胸の血は、すでに止まっていた。
 さぁ、ヴァルカン学園長……もっともっと楽しもうか。
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