追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
102 / 109
第八章

二年後へ向けて

しおりを挟む
 俺とヴァルカン学園長の戦いが終わり、数日後。
 学園祭も終わり、いつもの日常が戻ってきた。
 おっれたちチーム《エンシェント》はアジトに集まり、これからの方針を決める。

「学園祭も終わったし、冒険者らしくダンジョンと依頼に挑戦するわよ。学園ダンジョン以外のダンジョンに挑戦したり、高ランクの依頼を受けて、スキルのレベルとあたしたちの実力を上げるわ」

 レイが言う。
 俺はさらに付け加えた。

「みんな。俺は二年後、最強のドラゴンであるバハムートと戦う。これから二年、俺は死ぬ気で鍛えようと思う……正直、みんなが付いてこれるとは思わない。それでも」
「付いていくぜ」

 俺が言い切る前に、レノが言う。
 拳をパシッと合わせ、俺に付きつけた。

「舐めんじゃねぇ。勝手に決めんな。ふざけんな。いいか? お前が突っ走るならそうしろ。オレは勝手に後ろから追うからよ。付いてこれないだぁ? ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ」
「レノ……」
「リュウキくん。ぼくも同じ意見……きみに置いて行かれるつもりはないよ」
「サリオ、お前もか……」
「当然、私もです」
「あたしもよ」
「わたしもー」

 アピア、レイ、アキューレも力強く頷く。
 全員、俺とバハムートのやり取りを見ていたからこその言葉だ。
 わかる……俺を、一人にしないために言っている。

「……ありがとう」

 だから俺は、お礼を言った。
 本当に、俺には勿体ないくらいの仲間だ。

「さて!! 鍛えるのはもちろんだけど、学園祭が終わった後は、テストがあるわよ。文武両道、テストもしっかり高得点狙いで!!」
「うげぇ……」
「あ、そうそう。赤点取るとそのチームは連帯責任で追試だからね」
「マジで!?」

 レノが驚愕した。
 レイがレノにテストについてあーだこーだと話している。
 それを聞きながら、俺は拳を強く握った。

「……強くなる。絶対に」

 バハムート、待ってろ……俺はもっともっと、強くなるからな。

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ムーン公爵家の執務室では、ムーン公爵ことファフニールと、アンフィスバエナが紅茶を飲んでいた。
 ファフニールは、実に楽しそうに笑う。

「くっくっく……二年後か。実に楽しいね」
「ファフニール、嗤いすぎ」
「いいじゃないか。まさか、バハムート兄さんが、人間を認めるなんて!! くははははっ、これだけでも素晴らしいことだ。まさか「人間の可能性……」

 第三者の声が執務室に響いた。
 二人が窓へ視線を向けると、そこにはハクリュウがいた。

「久しぶりね、ファフニール。驚いた……こうして目の前にいるのに、全く闘気を感じないわ」
「……これはこれは」
「安心なさい。あなたをどうこうするつもりはないわ」
「それはどうも。で、姉さん……姉さんは、どうするつもりで?」
「当然、邪魔はさせないわ。バハムート兄さんとリュウキの戦い。ふふ、恐らくこの世界は揺れる。私は、この世界を維持するために、準備をするわ。アンフィスバエナ、あなたも手伝いなさい」
「え~? まぁ、いいけど」
「ファフニール。あなたはリュウキくんの力になりなさい。もちろん、ムーン公爵としてできることをね」
「……もちろん、そのつもりさ」
「そ、ならいいわ」

 そう言って、ハクリュウは消えた。
 窓から出たのではない。白い闘気に包まれた瞬間、煙のように消えてしまった。
 ファフニールは、頭をポンと叩く。

「油断、したかな?」
「そう? でも、バレちゃったね」
「欺くことに関しては、兄弟で一番だと思ってたんだがねぇ」
「ま、いいじゃない。じゃあ、私は姉さんのお手伝いするね。ファフニールは、リュウキに高難易度のダンジョンを紹介したら?」
「もちろん、そうするさ。ふふ……二年でどこまで強くなれるかな? 実に楽しみだ」

 アンフィスバエナは、窓から出ていった。
 残ったファフニールは、ソファへ深く腰掛ける。

「リュウキくん。きみは実に面白い……さて、彼と仲間たちに合うダンジョンを見繕っておかないとね」

 ファフニールは、鼻歌を口ずさみながらダンジョンを探し始めた。
 これから二年───……リュウキたちの、本当の戦いが始まる。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...