勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

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第197話・まだ話は終わらない

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 パティオンとブリザラは、ワイファ王国の町中をのんびり歩いていた。
 ブリザラは氷菓子をかじりながら言う。

「なーんで【傲慢】のこと教えたの?」
「決まってる。【暴食】の仲間になれば面白いからよ。それに、ツクヨミも私たちのことより【暴食】の方が気になるみたいだしね……戦力強化は必要でしょ?」
「戦力って、ツクヨミだけで世界滅ぼせちゃうじゃん」
「ま、そうね。あの女神もどきがキルシュより強くても、ツクヨミには触れることすらできないでしょう……ツクヨミが【暴食】サイドに付いた時点で、もうフリアエに勝ちの目はなくなった」
「で、【暴食】がフリアエを始末したら」
「私たちの出番。神界でフリアエをぶちのめすわよ」
「へいへい……でもさ、【傲慢】ってば、あんな」
「ま、私たちには関係ない。ツクヨミが【暴食】に付いた時点で、もう勝ったようなモンでしょ」

 確かに、その通りだ。
 ブリザラはそう考え、大きな欠伸をした。

「ねぇ、せっかくだしさ。ビーチで泳がない? 女神のナイスボディを人間たちに見せつけてやるぜ」
「バカ。そんなことしても意味ないでしょ。それより、神界に帰るわよ」
「えぇ~……もうちょい遊ぼうぜぃ。人間界に来ることなんてめったにないしぃ……あんたも知ってるでしょ? 人間界は『食』に関してだけなら、女神より上だって」
「…………」
「食べる必要がないうちらと違って、食べなきゃ死んじゃう人間の作り出した食事は最高よ? ほらほら、ワイファ王国は海の幸が豊富だし、美味しい海産物いっぱい食べておこう」
「…………ま、まぁ、少しだけなら」
「堕ちるの早っ……」
「あ、あんたが食べたいって言ったんでしょうが!!」

 希望の女神パティオンと、白銀の女神ブリザラ。
 二人の人間界旅行は、もう少し続きそうだ。

 ◇◇◇◇◇◇

「すぅ─────」
「…………」

 ライトにしがみつくように眠る『闇夜の女神』ツクヨミ。
 さっき知ったことだが、最強の魔獣『八相』の一体らしい。どう見ても普通の少女にしか見えず、一行は困惑した。

「で、どうするの?」

 リンがライトに聞く。

「……どうするったって」
「引き剥がして置いて行けばいいのでは?」

 マリアが、ライトをジト目で睨みながら言う。
 シンクはソファに座って興味津々とばかりにツクヨミのほっぺを突き、メリーは床に丸まって寝ていた。

「とにかく。【傲慢】がここにいるってのはわかった」
「あら? 女神の言葉を信じるのですか?」
「……ああ。あいつら、なんとなくだけど噓は付いてないと思う。もう少し探してみる価値はあるだろ」
「でも、どこを探すの? 冒険者ギルドの情報屋でも限界だよ」
「……んー、やっぱり女神に聞くか。あいつら、まだ近くにいるか?」

 なんとなくマリアに聞くと、答えが返ってきた。

「いる─────パティオンとブリザラ、近い」

 答えは、ツクヨミからだ。
 ライトの首筋をクンクンと嗅ぎ、甘えるようにピッタリ身体をくっつける。
 うっとおしいが、ライトはそのまま聞いた。

「なぁ、お前も女神なんだろ? あいつらをもう一度呼べないか?」
「呼べる─────なでなでしてくれたら」
「……は?」
「なでて─────」

 ポッと頬を紅潮させ、ツクヨミが言った。
 本当にわからない。なぜツクヨミはライトをこんなに気に入っているのか。
 仕方なく、ライトはツクヨミの頭を撫でた。

「いいなー、ボクも後で撫でてね」
「リンにでも撫でてもらえって」
「あのね、シンクはライトに撫でてもらいたがってるの」
「全く……甘やかしすぎですわ」
「ぐぅ……」

 満足したのか、ツクヨミはにっこり笑う。
 そして、おもむろに手をリビングの一角に伸ばすと、床からじわじわと黒い靄が広がり……。

「え?」
「おぉ?」

 水着姿のブリザラと、素っ裸のパティオンが現れた。
 ブリザラは上下しっかりと水着を着ていたが、服を脱いだばかりのパティオンは、パンツを握ったまま硬直していた。
 女神というだけあって、スタイルも抜群だ。

「あー……」
「なな、な、なんででで……つつ、ツクヨミぃぃっ!!」
「─────ごめん」

 どうやら、泳ぐつもりだったようだ。
 ライトはそっと目を背けた。
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