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あるヒロインの話
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「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
カイル様から『やっぱり今日は帰った方がいいよ』と言われあっさり帰ったことだが……。
私はカイル様が止血に使たらしいハンカチを嗅ぎながら怪しげな笑みを浮かべる。
ハンカチ? うん、返すよ。新品買って。
幸いか否か、ハンカチは血まみれなので新品を買って返したとしても不思議ではない。むしろ好印象を抱く人も多いだろう。
そうだ、お礼の品を作ってプレゼントしよう。そうしたらもっと好印象を与えることもできるし、なにより感謝の心も伝わるだろう。
誰にでも思いつくことではあるが効果的だ。
早速取り掛かろう。
思い立ったが吉日、私は机の引き出しを開けて、黙々と作業を進める。
単行本用のブックカバーを作ろう。
布を取り出して型を取ってからいよいよ本格的な作業開始だ。
……しかし。
プレゼント作りだけに取り掛かりたいのに、なかなかそうはなってくれない。
脳裏に浮かぶのはあの二人――カイル様とラミちゃんのやり取りだった。
ずっと憧れていた。
私と違ってスラスラとしゃべれるあの二人が。私と違ってそこにいるだけで人々を和ませてしまうような存在が。
考えれば考えるほど私はあの二人に太刀打ちできないのではとも思えてくる。心の広いラミちゃんにも、自分の目的のために何でもこなすカイル様にも。
針が止まる。
いや、正確には私の手が止まったのだ。
針刺しにも刺さずにそっとその場から離れて、ベッドに潜る。
テンションの上下が激しすぎて自分でもどうかとは思うが、そんなことは言っていられない。
手が届く距離にずっと憧れていた自分物がいるからこその悩みもあるのだ。
どうあがいても自分の望む展開にならないという絶望感が私を支配した。
カイル様から『やっぱり今日は帰った方がいいよ』と言われあっさり帰ったことだが……。
私はカイル様が止血に使たらしいハンカチを嗅ぎながら怪しげな笑みを浮かべる。
ハンカチ? うん、返すよ。新品買って。
幸いか否か、ハンカチは血まみれなので新品を買って返したとしても不思議ではない。むしろ好印象を抱く人も多いだろう。
そうだ、お礼の品を作ってプレゼントしよう。そうしたらもっと好印象を与えることもできるし、なにより感謝の心も伝わるだろう。
誰にでも思いつくことではあるが効果的だ。
早速取り掛かろう。
思い立ったが吉日、私は机の引き出しを開けて、黙々と作業を進める。
単行本用のブックカバーを作ろう。
布を取り出して型を取ってからいよいよ本格的な作業開始だ。
……しかし。
プレゼント作りだけに取り掛かりたいのに、なかなかそうはなってくれない。
脳裏に浮かぶのはあの二人――カイル様とラミちゃんのやり取りだった。
ずっと憧れていた。
私と違ってスラスラとしゃべれるあの二人が。私と違ってそこにいるだけで人々を和ませてしまうような存在が。
考えれば考えるほど私はあの二人に太刀打ちできないのではとも思えてくる。心の広いラミちゃんにも、自分の目的のために何でもこなすカイル様にも。
針が止まる。
いや、正確には私の手が止まったのだ。
針刺しにも刺さずにそっとその場から離れて、ベッドに潜る。
テンションの上下が激しすぎて自分でもどうかとは思うが、そんなことは言っていられない。
手が届く距離にずっと憧れていた自分物がいるからこその悩みもあるのだ。
どうあがいても自分の望む展開にならないという絶望感が私を支配した。
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