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第二章

第55話 期末テスト

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 そして夜が明け期末テストの時になってしまった。
 まあ……さ。
 英語もだいぶ酷かったよ? 酷かったんだけどさぁ……。

『【問一】次の文章を読み、問いに答えなさい。

 彼女から『ごめん、あの人のことが忘れられなくて……』と別れを切り出された。
 最近冷たくなって薄々予想はしていたが、やはりショックだった。
 俺のなにがいけなかったのだろうか。ナニがいけなかったからだろうか。
 ブルーな気持ちのまま、俺は自宅の扉を開けた』

 国語も結構酷い。
 ナニのくだりいる?
 でだ。

『(1)これは先生の実話を改変したものです。このときの先生の気持ちを答えなさい。なお、別れを切り出した側です』

 先生、アンタが切り出したんかい。
 適当に『あなたよりも会いたい人がいるの……』と書いた。悲劇のヒロイン風。

『(2)二次元に彼女を奪われた彼氏の気持ちを書きなさい』

 二次元だったのかよォォォ!
 だが、教室からは『わかる……』という声もちらほらと聞こえてくる。このクラス終わってるわね!?
 私はこれもまた適当に『なら元々OKすんなよ』と書いた。
 マトモな問題来てくれ……!

『(3)なぜ先生は結婚できないのでしょうか』

 何かテストに私情でも混ぜなきゃいけない決まりでもあるの?
 なんか可哀そうな感情が混ざってきた。それでも私は適当に答える。『もはや体質』っと。

『【問二】
 たかしくんには彼女がいます。先生には彼氏がいます。幸福度はどちらが上でしょう』

 これは哲学の問題かな?

『なお、たかしくんの彼女はウサギ(擬人化とかではない)で、先生の彼氏は二次元です。ですが、どちらも等しく幸せです』

 等しく幸せって書いてるのにどちらが上か決めなきゃいけないのか……。
 選択肢も『たかしくん・先生』ってなってるし……。
 私は困った時に使う『どちらにしようかな方式』でたかしくんにした。ウサギだろうがなんだろうが体温が感じられるっていうことはいいことなんじゃないかな?

『【問三】
 自虐風自慢してくるヤツの対処法教えてください』

 Yah〇〇知恵袋か。
 テストを使って回答募集するなよ。
 もうどうでもよくなってきたので『そんなことして楽しい? と聞く』と書いた。その人が友達と呼べる人だったらほぼ間違いなく友達を一人なくすことになるけどね。

『【問四】
王族になりたいです』

 こんなところにも刺客がいたとは……!
 ていうか何? 二次元にしか興味なかったんじゃないの?
 アンタなんかに絶対渡さないっ……!
 私は満点を捨てて解答欄に『諦めろ』と書きなぐった。たぶん殺意がにじみ出てると思う。
 こちとらリノちゃんだけでも精一杯なのよっ……!

『できればぁ~。シュバルツ・エンペラーっていう苗字の人? がいいかなぁ~って』

 教育委員会取り締まれよコイツを。
 私はテストをビリビリに破きたくなる衝動を抑えながら、残りの問題を解いた。
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