恋愛小説の世界に転生したら王子が俺を溺愛してた件について

夏葉ひなた

文字の大きさ
14 / 22
第一章

第13話 ヤンデレのターン……? あれっ、ヤンデレ……?

しおりを挟む
「まあまあ、天然ツンデレなナイルくんのためにヤンデレ選手権を開催してあげようじゃないか」
「だっ、誰が天然ツンデレ……ッ!」
「え?   事実じゃん」

   グラスがイタズラっぽい笑みを浮かべて俺をからかう。
   その様子を見ているとなんだか変な気持ちになってしまう。

「あれっ、何で赤くなってるのかな?   可愛いね」
「あうっ……うぅ……うるしゃいです……」

   あまり口に力が入らない。グラスが帰ったら早めに休もう……

「さっ、待っててもかわゆいナイルくんからかわいい異論を永遠と聞くことになっちゃいそうなので開幕でーす」

   うぅ……反論出来ない自分が恨めしい。
   頭の回転が早いのだろう。そこは腐っても(?)第一王子というところか。

「そうやってイジワルするグラスさんなんか大っ嫌いです!」
「ヤダグラスさんショック!……でも言い方可愛い……んほお♡‬」

   恍惚の表情を見せたグラス。キモっ。
   とりあえず『嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い……好き。大好き。結婚して。ねえ、今すぐハンコ押して?   どうして押せないの?』みたいなナチュラルに怖い感じにしようと思ったのだが……あんまり嫌いって言いたくないような……
   いやいや、恋愛でもあるまいし。友情の上で『おーいそんな所くらい直してくれよー』くらいの軽いノリでの『嫌い』なら……
   そもそもこれはヤンデレ選手権な訳だし……ああもう!
   ええい、こうなったらヤケクソだ!   やってやるぜグラスさんよォ!
   俺は全力の嫌い攻撃を繰り出した!

「ええーっと……変態!   変態性溢れるところも魅力ですけど……ああ違うぅ……変態すぎてちょっとだけ嫌いです!」
「え、何この可愛い生物」

   その言葉を口に出してしまったのを誤魔化すためか、口に手を当てて頬を赤く染めるグラス。
   可愛いのはグラスだよ……
   じゃない!
   途中魅力的とか言っちゃったからツンデレ感みたいなの出ちゃったしヤンデレっぽさ全然ないし。てか俺ヤンデレそんなに知らないんだよな……

「嫌いっ!」

   とにかく流れに持っていくために俺は叫んだ。
   も、もういいよな?   好きモード入っていいよな?
   うずくまってプルプルしてるグラスを心配しながらも好きモードに移行することに決めた。

「やっぱり好きっ!   大好きです!   変態性溢れるところも魅力的だし、基本的に優しいし、高スペックなのを鼻にかけることもないし、全部大好きです!」

   あれっ、何か思ってたんと違う。
   これヤンデレというよりかは青春恋愛ぽさが出てる。爽やかな学園青春純愛の告白シーンみたいになってるぞ。
   コレジャナイ感が凄いのは気のせい……だよな?
   すると、グラスはすっくと立ち上がり、

「僕も好きだよ。ナイルくん」

   まっすぐに俺を見つめながら言葉を返す。
   ヤバい、勘違いさせてしまった?
   いやいや、友達としてだよな?

「グラスさーん……ヤンデレ選手権ですよねこれー?」

   選手権だから仕方ない的な感じになるよねこれ?
   しかしグラスはちょっとしょんぼりしたような表情を一瞬だけ浮かべた後、何でもないようないつもの顔に戻ると。

「うん、ヤンデレとは違ってる気がするけどヤンデレ選手権だね。これ」

   健気なグラスの様子を見て、チクリ、と胸が傷んだ。
   俺の勘違いだよな?   だってこんな都合のいい事ある訳がーー

「じ、じゃあ戻りますよ……」
「うん」

   俺は見逃す事が出来なかった。
   ほんの一瞬、刹那という言葉で表すことの出来ないほどのほんの少し、グラスが泣きそうな顔をした事を。
   ……俺、本当に何やってんだろう。

「グラス」

   俺はもう二度と、泣きそうな表情さえさせないと誓いながら呼び掛けた。

「何かな?」

   少し笑みを浮かべたグラスが俺の次の言葉を待っていた。
   その様子さえも愛おしくて、辛くなる。
   ハリボテの笑顔なんかじゃない笑顔を見たい。

「好きだというのは本音です。だけど、この『好き』がどんな種類なのかまだよく分かってないんです」

   俺の言葉が予想外だったのか、目を丸くさせ、驚愕するグラス。
   当たり前だ。ヤンデレ選手権しようってなってどうしてこんな展開になる。いや、そもそもヤンデレ選手権を開催する展開も謎だからどっこいどっこいだろう。

「だから、よければ、失礼でなければーー」

   どんな言葉を選んだらいいのか分からずに同じような言葉を三つも言葉を並べてしまった。
   頬ーーというか顔が熱くなっているのが自分でも分かる。
   だけど、言わなくちゃいけないんだ。

「俺がもう一度告白するその時まで待っててくれませんか?」

   やった、言い切った!
   と思えたのもつかの間だった。

「へえ?   将来告白する事が確定してるかのような言い方だね?」

   しまった。

「わ、分かったタイミングで報告するだけです!」

   苦し紛れの言い訳をする。
   不確定なのは事実だが、もうほぼ確定してるんだよな……この感情……

「分かった分かった。ヤンデレ選手権もう仕事してないから最後に一言どうぞ」
「結婚して!」

   嫌いからの好きでこの言葉を言おうと思ったが、どうやら俺にはヤンデレを演じるだけの狂気も持ち合わせていないらしい。
   まあ、それはそれでいいかな。
   満面の笑みを浮かべるグラスを見ながら俺はそんな楽観的かもしれない事を思えてきた。
   そして、どうやらこんなタイミングで俺はこの感情の名前を知ってしまったらしい。

   この感情の名前。それはーー


   恋だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ

椿谷あずる
BL
平凡な高校生だった俺は、ある日事故で命を落としギャルゲーの世界に主人公としてに転生した――はずだった。薔薇色のハーレムライフを望んだ俺の前に、なぜか一緒に事故に巻き込まれた悪友・野里レンまで転生してきて!?「お前だけハーレムなんて、絶対ズルいだろ?」っておい、俺のハーレム計画はどうなるんだ?ヒロインじゃなく、男とばかりフラグが立ってしまうギャルゲー世界。俺のハーレム計画、開幕十分で即終了のお知らせ……!

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

処理中です...