22 / 58
2章 ミュラー青春の謳歌
ハンティングデビュー③
しおりを挟む
巨竜が大きな顎で大樹をかみ砕き、森の樹木をなぎ倒して、その姿を現わす。
大地が大きく揺さぶられた。
その存在は四人を圧倒した。
動揺する皆をオルマが声を震わしながら制しようとする。
「……大丈夫、こっちに気付いてない。……声を出さないで、この場から絶対にうごかないで……」
オルマの顔から冷や汗が滴る。
ジラールが不安気に聞く。
「……どうすんだ? あんな怪物……。そこらの家だって一踏みでぺしゃんこになるぞ……。聞いてねーぞ……」
「……今はやり過ごそう。逃げるのはアイツがいなくなってからだよ……」
巨竜を注視しながらクロエも頷く。
「……賛成よ。相手はティラノサウルス……。けっして気配を悟られちゃいけないわ……」
しかしミュラーは違った。
ミュラーはこの狩りが非常に不満だった。
この狩りで会った獣は子ウサギ一匹。目的のイグアノドンも見つけることができなかった。
このままだと手ぶらで帰るハメになる。
ミュラーは父と同じく偏屈であった。
そして闘いで逃げるというのは彼にとって恥であり、屈辱であった。
その場をやり過ごす?
ありえない!
やっと現れた獲物だ!
皆がしゃがみこみ、じっとしてる中、ミュラーは突然立ち上がった。
三人が、なにしてんだお前、みたいな驚愕の表情を浮かべる。
しかしミュラーは残念なことに致命的に空気が読めない男であった。
三人が必死でミュラーを押し倒そうとするが、巨竜の首がミュラーの方へ向く。
そしてその大きな瞳がミュラーの姿をとらえる。
その巨大な顎から草原を揺るがすほどの雄たけびが放たれた。
鼓膜を激しく揺さぶり、全員が身を竦めてしまうほどの大きな咆哮だ。
しかしミュラーは怯まなかった。
そして巨竜の方へ手をかざした。
「そこには魔法陣を仕掛けておいた。触媒は俺の吐瀉物だ。死ね!」
刹那、巨竜の足元から、青く光る魔法陣が地面に輝きだした。
その現象に巨竜が驚くように、動きを止める。
瞬間、巨竜の全身に電撃が走った。
バリバリと甲高い音を立てながら、巨竜の身は雷撃に身を包まれる。
堪らず巨竜が大きな絶叫を上げた。
その様を見てミュラーはニヤリと笑みを浮かべる。
「今だ! 行くぞ、みんな!」
三人の方へ顔を向けた。
全員が、何してんだお前、みたいな顔で呆気に取られていた。
ブチ切れたジラールがミュラーの胸倉を掴む。
「何してくれてんだテメェー!!」
絶望に満ちた表情でオルマが言葉を失う。
「あ……あ……あぁ……あ……」
クロエが二人の仲裁に入った。
「もうやってしまったことは仕方ありません! どうします? 退きますか?」
クロエがオルマの方へ顔を向けると、震えるオルマが顔を青ざめながら巨竜の方へとガタガタと指をさす。
「……あ……あ……あ……あ……」
ミュラーの攻撃に激怒した巨竜がまっすぐにこちらを睨みつけていた。
狼狽するオルマをジラールが揺さぶる。
「しっかりしろ! こうなったらもうやるっきゃねぇ! あのニワトリみたいになりてぇのか!? 俺が援護する! クロエ、足止めだ!」
ジラールの言葉に反応し、クロエは臆することなく、とっさに巨竜目掛けて飛び出す。
真っ直ぐではなく、曲線を描きながら素早く走り出した。
巨竜の巨大な尻尾が鞭のようにクロエを攻撃する。
しかしクロエは早い身のこなしでそれをなんなく躱した。
そして槍を大きく回転させながら、巨竜の首へ、強烈な一閃を繰り出した。
しかし巨竜の太い首では致命傷にならない。
だからクロエは何度も何度も繰り出し続けた、斬撃の嵐を。
クロエの身体が巨竜の顎に捉われまいと、ジラールが光弾を放ち続けた。
ミュラーも巨竜の気を反らせるために、素早く巨竜の懐に入り込み、その太い足に剣撃を食らわせる。
しかし巨竜の皮膚は硬く、ミュラーの刃は通らなかった。
気を取り戻したオルマも巨竜の動きを封じようと糸を繰り出す。
しかしどれも決め手に欠けていた。
そして誰もが思った。
持久戦になったら負ける。
それはクロエの疲労の顔を見れば一目瞭然だった。
無理もない、巨竜の巨大な顎を躱しながら、槍での渾身の一撃を何度も繰り出していた。
この中で一番の負担を背負っていた。
状況を打破するために俺は策をめぐらせた。そしてジラールに呼びかける。
「ジラール、全力だ、全身全霊の一発をヤツの顔めがけて撃ってくれ!」
「顔か?! それにそれやるともう撃てないぞ!」
「構わん! 俺が止めを刺す!」
「クソッタレ!!」
膨大な閃光の塊がハーミットの先端に集まる。
そしてそれは高速で巨竜の顔面目掛けて飛んでいった。
すかさずミュラーが合図する。
「クロエ! 避けろ!」
その言葉に反応して、クロエはとっさに巨竜から離れる。
同時に巨大な光弾が巨竜の顔面にぶつかる。
しかし巨竜はよろめくものの、倒れることはなかった。
再びけたたましい雄たけびを上げる。
まるで自分の健在さを自己主張するかのように。
刹那、ミュラーが巨竜の下腹部に剣を突きさしていた。
しかし巨竜の肉は厚く、それは致命傷にはなりえなかった。
一同が絶望する中、ミュラーは笑った。
「触媒は俺の愛剣だ。爆ぜろ」
巨竜の全身が青く発光する。
瞬間、巨竜の身体は爆散した。
大きな肉塊と大量の血が周囲に飛び散った。
巨竜は原型をとどめることなく、力なく地へと倒れ伏した。
それは最早、生き物の形をしていなかった。
ただの肉の塊であった。
全員が血のシャワーを浴び続けた。
すると突然ミュラーが嗚咽をもらして泣きだした。
皆が慌てた。
無理な魔法を使用して、反動がきてしまったのか?
身を案じたオルマがすぐに駆け寄る。
「だ、大丈夫!?」
「俺の、俺の愛剣が砕け散った……。こんなトカゲのせいで……」
その言葉に、血まみれの三人は呆れ果てた。
誰もミュラーの涙に同情していなかった。
大地が大きく揺さぶられた。
その存在は四人を圧倒した。
動揺する皆をオルマが声を震わしながら制しようとする。
「……大丈夫、こっちに気付いてない。……声を出さないで、この場から絶対にうごかないで……」
オルマの顔から冷や汗が滴る。
ジラールが不安気に聞く。
「……どうすんだ? あんな怪物……。そこらの家だって一踏みでぺしゃんこになるぞ……。聞いてねーぞ……」
「……今はやり過ごそう。逃げるのはアイツがいなくなってからだよ……」
巨竜を注視しながらクロエも頷く。
「……賛成よ。相手はティラノサウルス……。けっして気配を悟られちゃいけないわ……」
しかしミュラーは違った。
ミュラーはこの狩りが非常に不満だった。
この狩りで会った獣は子ウサギ一匹。目的のイグアノドンも見つけることができなかった。
このままだと手ぶらで帰るハメになる。
ミュラーは父と同じく偏屈であった。
そして闘いで逃げるというのは彼にとって恥であり、屈辱であった。
その場をやり過ごす?
ありえない!
やっと現れた獲物だ!
皆がしゃがみこみ、じっとしてる中、ミュラーは突然立ち上がった。
三人が、なにしてんだお前、みたいな驚愕の表情を浮かべる。
しかしミュラーは残念なことに致命的に空気が読めない男であった。
三人が必死でミュラーを押し倒そうとするが、巨竜の首がミュラーの方へ向く。
そしてその大きな瞳がミュラーの姿をとらえる。
その巨大な顎から草原を揺るがすほどの雄たけびが放たれた。
鼓膜を激しく揺さぶり、全員が身を竦めてしまうほどの大きな咆哮だ。
しかしミュラーは怯まなかった。
そして巨竜の方へ手をかざした。
「そこには魔法陣を仕掛けておいた。触媒は俺の吐瀉物だ。死ね!」
刹那、巨竜の足元から、青く光る魔法陣が地面に輝きだした。
その現象に巨竜が驚くように、動きを止める。
瞬間、巨竜の全身に電撃が走った。
バリバリと甲高い音を立てながら、巨竜の身は雷撃に身を包まれる。
堪らず巨竜が大きな絶叫を上げた。
その様を見てミュラーはニヤリと笑みを浮かべる。
「今だ! 行くぞ、みんな!」
三人の方へ顔を向けた。
全員が、何してんだお前、みたいな顔で呆気に取られていた。
ブチ切れたジラールがミュラーの胸倉を掴む。
「何してくれてんだテメェー!!」
絶望に満ちた表情でオルマが言葉を失う。
「あ……あ……あぁ……あ……」
クロエが二人の仲裁に入った。
「もうやってしまったことは仕方ありません! どうします? 退きますか?」
クロエがオルマの方へ顔を向けると、震えるオルマが顔を青ざめながら巨竜の方へとガタガタと指をさす。
「……あ……あ……あ……あ……」
ミュラーの攻撃に激怒した巨竜がまっすぐにこちらを睨みつけていた。
狼狽するオルマをジラールが揺さぶる。
「しっかりしろ! こうなったらもうやるっきゃねぇ! あのニワトリみたいになりてぇのか!? 俺が援護する! クロエ、足止めだ!」
ジラールの言葉に反応し、クロエは臆することなく、とっさに巨竜目掛けて飛び出す。
真っ直ぐではなく、曲線を描きながら素早く走り出した。
巨竜の巨大な尻尾が鞭のようにクロエを攻撃する。
しかしクロエは早い身のこなしでそれをなんなく躱した。
そして槍を大きく回転させながら、巨竜の首へ、強烈な一閃を繰り出した。
しかし巨竜の太い首では致命傷にならない。
だからクロエは何度も何度も繰り出し続けた、斬撃の嵐を。
クロエの身体が巨竜の顎に捉われまいと、ジラールが光弾を放ち続けた。
ミュラーも巨竜の気を反らせるために、素早く巨竜の懐に入り込み、その太い足に剣撃を食らわせる。
しかし巨竜の皮膚は硬く、ミュラーの刃は通らなかった。
気を取り戻したオルマも巨竜の動きを封じようと糸を繰り出す。
しかしどれも決め手に欠けていた。
そして誰もが思った。
持久戦になったら負ける。
それはクロエの疲労の顔を見れば一目瞭然だった。
無理もない、巨竜の巨大な顎を躱しながら、槍での渾身の一撃を何度も繰り出していた。
この中で一番の負担を背負っていた。
状況を打破するために俺は策をめぐらせた。そしてジラールに呼びかける。
「ジラール、全力だ、全身全霊の一発をヤツの顔めがけて撃ってくれ!」
「顔か?! それにそれやるともう撃てないぞ!」
「構わん! 俺が止めを刺す!」
「クソッタレ!!」
膨大な閃光の塊がハーミットの先端に集まる。
そしてそれは高速で巨竜の顔面目掛けて飛んでいった。
すかさずミュラーが合図する。
「クロエ! 避けろ!」
その言葉に反応して、クロエはとっさに巨竜から離れる。
同時に巨大な光弾が巨竜の顔面にぶつかる。
しかし巨竜はよろめくものの、倒れることはなかった。
再びけたたましい雄たけびを上げる。
まるで自分の健在さを自己主張するかのように。
刹那、ミュラーが巨竜の下腹部に剣を突きさしていた。
しかし巨竜の肉は厚く、それは致命傷にはなりえなかった。
一同が絶望する中、ミュラーは笑った。
「触媒は俺の愛剣だ。爆ぜろ」
巨竜の全身が青く発光する。
瞬間、巨竜の身体は爆散した。
大きな肉塊と大量の血が周囲に飛び散った。
巨竜は原型をとどめることなく、力なく地へと倒れ伏した。
それは最早、生き物の形をしていなかった。
ただの肉の塊であった。
全員が血のシャワーを浴び続けた。
すると突然ミュラーが嗚咽をもらして泣きだした。
皆が慌てた。
無理な魔法を使用して、反動がきてしまったのか?
身を案じたオルマがすぐに駆け寄る。
「だ、大丈夫!?」
「俺の、俺の愛剣が砕け散った……。こんなトカゲのせいで……」
その言葉に、血まみれの三人は呆れ果てた。
誰もミュラーの涙に同情していなかった。
10
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる