アウトロー ~追憶~

白川涼

文字の大きさ
58 / 58
三章 ミュラー最後の事件簿

ロゼの行方

しおりを挟む
 エルドラが文書を入手したことにより、ロゼの暗躍は白昼の明るみに晒されてた。

 軍部や官僚、裏の社会でロゼの計画に加担していた者、国内でクーデターを計画していた者は失脚した。
 しかし、ロゼが引き起こした件で多くの人が失われた。
 特に王城は燃え、国王が崩御したことは国を混乱させた。
 この国の政治的機能はマヒしてしまったのだ。
 エルドラは文書がロゼの手に渡っていたら、この国は容易くひっくり返ると痛感した。
 今すぐにでも姫を即位させ、この国が機能するようにしなければならなかった。

 しかし今は何より優先すべきことがあった。
 ロゼの行方を追うこと。
 ロゼがいる限り、またこの国は混迷することになるだろう。

 文書から記された。情報にロゼの手掛かりとなるものがあった。
 ロゼが育った、いや育成されていた場所だ。
 グジャラート要塞。
 現在は廃棄され、廃墟となっている場所だがそこでロゼという人物は人為的に作られた。
 未来の指導者として、幼い時から軍の暗部から英才指導を施された。
 孤児であった少年の名を奪い、ほぼ洗脳に近い形でロゼは作られた。
 文書の記録ではグジャラート要塞が廃棄されたのも、ロゼの手によってだった。
 まだ幼かったロゼが軍の指導者を操り、兵士同士が互いに争い、その要塞にいた者は一人残らず殺されてしまったのだ。

 ロゼはそこで名前を手に入れた。
 そして自身を知る者を一人残らず始末したのだ。
 自身の手は汚さず、人を疑心暗鬼に陥らせ、争わせた。
 誰もいなくなるまで。
 そして闇に紛れ、決して表舞台に出ることなく。
 軍や政治を裏から操り、暗躍した。

 エルドラは全ての始まりであるグジャラート要塞の廃墟にロゼの手掛かりがあると踏んだ。
 当時の関係者は皆生きていないが、この地こそがロゼの故郷なのだ。
 ロゼの隠れる場所はもうそこしか無い。
 文書で記された国内のアジトには影も形もなかった。
 そこしかなかったのだ。
 それにここはロゼが帰る場所なのだ。

 廃墟となったグジャラート要塞は、要塞としての機能はしてなかった。
 朽ちた廃棄に瓦礫の山が積まれていただけの状態となっていた。
 ミュラー達はなんとかロゼの手掛かりを掴もうと総出で廃墟をくまなく捜索していた。

 ロゼは必ず何かを始める。
 皆が確信していた。
 しかしロゼはあれから姿を現さない。
 ルカも攫われたままであった。

 ここに何かあるはずなのだ。
 日が暮れてもミュラーは瓦礫の山から手掛かりを掴もうとする。
 そしてミュラーは思う。
 この瓦礫の山の上で見下ろすように人が争い殺しあう様を、あの不気味な笑顔でロゼは眺めていたのか、と。
 夜も更け、リューの提案で今夜は近くの村で泊まり、明日また捜索を再開するこになった。
 それほどグジャラート要塞の跡地は広大だったのだ。

 村の外れのテントの中でオルマが呟く。
「アイツは結局何したいんだろ?」
 ミュラーは不貞腐れるように答えた。
「さぁな」
代わりにエルドラが推測した。
「ルカさんを攫っているということは、狙いはミュラーさんね。貴方を利用して何か企んでいるはずよ」
 そこでジラールが疑問を口にした。
「けど、最初はミュラーがあの野朗の顔を知ってるから狙われてたんだろ。今はちげぇ、ここにいる奴全員がアイツの顔知ってる。ミュラーにこだわる必要なんかあるのか」
 するとリューがハッとした顔をする。
「まさかあの男はここにいる全員を始末する気では?」 
 しかしエルドラは左右に首を振る。
「ならルカさんを攫う理由がありません。私達に顔見られるのを承知で、あの時あの場に現れたのです」
 ミュラーは確信したことを口にした。
「一つだけで、アイツのことがわかった。アイツは派手なことを好む」

 すると偵察に出ていた。少年兵がテントに駆け込んできた。
 様子がおかしい、ひどく慌てていた。
 そしてリューに大きな声で報告した。
「大変だ! 村人が争ってる! 村人同士で争ってるんだ!」
 その言葉を聞いて、すぐに全員がテントから飛び出すと、眼を疑う光景が映った。

 村が燃え、そこの住民が武器を持って殺し合いをしていた。
 女も子供も老人も武器を持って互いに争っていた。
 異様な光景だった。

 その中でミュラーの眼光が光る。
 ミュラーの瞳には間違いなく映っていた。

 大勢の村人が殺し合いをしている、その奥にせせら笑うロゼの顔が。

 ミュラーは人の群れの中に迷わず駆け出した。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

処理中です...