57 / 58
三章 ミュラー最後の事件簿
咆哮
しおりを挟む
ミュラーの動きは素早かった。
鬼神の如き勢いでロゼに向かって肉薄する。
他の誰もが反応できない中、真っ直ぐに。
その瞳にはルカとその隣にいるロゼしか映っていなかった。
傍らにいる他の二人の敵など無視し、猛進しながら、目にも止まらぬ速さで抜剣し、ロゼに向かって剣を振り下ろす。
あっという間のミュラーの動きに彼の味方は慌てて、戦闘態勢に入る。
しかし用心深いオルマは思った。
敵は待ち構えていた罠ではないのか?
そう疑心に駆られ、ミュラーを止めようとした時、すでに遅かった。
ロゼの眼前までいたミュラーは、巨大な顎に飲み込まれていた。
リストが放った召喚術だ。
建物程の大きな口に胴体はなく手と足が生えた薄気味悪い生き物、アヤカシだ。
ロゼの側にいたリヴァはニヤニヤと笑い、リストは薄ら笑いを浮かべた。
ロゼの傍らにいたルカはあまりのショックな光景に気を失う。
すぐに態勢を立て直そうとリューが少年兵を指揮し、ジラールがハーミットを構え、オルマが糸を張り巡らそうとすると、リストは彼らに向かって右手をかざす。
すると見覚えのある異形のアヤカシが現れた。
それも三体も。
リューはリストという人物を見誤っていた。
生霊を同時発動、しかも複数体も出現させることができるとは……。
しかし、相手が精霊操術とはいえ、魔法を発動させたということは、以前のようにこの場で魔法を無効化される可能性は低い。
展開させた少年兵達に魔法を発動させようと指揮しようとした時、その場で異変が起きた。
リストが最初に召喚した大口の化け物が爆散したのだ。
飛び散る肉片。吹き出る流血。
あまりの光景に敵、味方が呆気に取られている中、ミュラーはいた。
ミュラーは迷うことなく、ロゼに向かって剣を放つ。
しかし、その前にリヴァが立ち塞がった。
振り下ろされた剣を腕で防いでいた。
以前切断された腕が再生されていた。
ミュラーの鬼の如き剣幕に臆することなく、まるでその怒りの波動を待ち侘びたかのように、ニヤリと笑い、蹴劇をミュラーの胴体に向かって放つ。
「待ってたぜ! 青髪っ!!」
しかしその蹴りの一閃はミュラーが放った蹴りで防がれた。
ミュラーは怒りに満ちた感情を隠すことなく、目の前で邪魔をする存在に睨みつける。
そしてルカを抱えて、その場を立ち去ろうと背中見せたロゼに向かって駆け出す。
今度はリストがミュラーの邪魔をする。
放っていた異形のアヤカシが一体、ミュラーの前に立ち塞がる。
ミュラーはこの存在に物理が効かないのは知っていた。
そして躊躇なく地面に手を置き、魔法を発動させる。
『地槍』
すると大地が隆起し、先端が尖った地柱がアヤカシの胴体を貫く。
そして大地の剣で八つ裂きになったアヤカシの頭を掴み。
「炎殺」
すると黒い炎がアヤカシを包み、焼き尽くす。
あまりの火力でアヤカシは一気に炭化する。
視界から離れていくルカをミャラーは追おうと走り出すが、今度は巨大な石像がミュラーの身体を踏み潰す。
両腕でその石像の足を持ち上げ、ミュラーは必死に耐える。
それでも視線はロゼから離さない。
必死に愛する者の名を口にする。
「ルカーーーーー!!!!!」
しかしミュラーの悲痛な叫びは届くことなく、ルカの目は閉じたままだった。
ロゼは振り返ることなく、片手で手を振り、その場を立ち去る。
絶対に逃がさない。
ジラールがハーミットで放った巨大な光弾が石像の上半身を吹き飛ばす。
ガラガラと音を立てて、崩れる石の雨がミュラーの身体を打ちつける。
それでも駆け出そうとするミュラーの頭をオルマが思いっきり蹴り飛ばした。
そしてミュラーの目を覚まさせようと叫ぶ。
「ミュラー! 周りを見て! 今はそれどころじゃないよ!」
ミュラーが振り返ると、リューは地面に伏し、頼りの少年兵達がリストの操るアヤカシに襲われかけていた。
ミュラーは舌打ちし、その場にあった石を蹴飛ばした。そして、オルマに尋ねる。
「糸は仕掛けたか?」
オルマがコクリとうなづくと、すかさず右手をかざした。
『爆雷』
するとオルマが張り巡らしていた糸がアヤカシ達を縛り上げ、それに電気を帯びた磁力が走っていった。
磁力と同時に爆炎がほと走り、巨大な炎の塊がアヤカシ達の身を包み、爆散する。
立ちこめる炎の中、ミュラーは駆け出した。
虚を突かれたリストは新たな精霊を召喚しようと右手をかざそうとすると、その腕はジラールが放った光弾で吹き飛ばされた。
リストの眼前には剣を振り下ろそうとしたミュラーが迫っていた。
しかし再びリヴァが立ち塞がる。
そしてまたその腕でミュラーの剣を弾こうとしていた。
しかしその動きをミュラーは読んでいた。
剣の軌道を変え、縦ではなく横にその線を変えた。
その動きにリヴァが驚愕したのは束の間だった。
彼の上半身と下半身に剣光が走った時、リヴァの身体は真っ二つに裂かれた。
バカな!?
リヴァがそう驚くと同時に視界が揺らぐ、崩れ落ちる上半身、そのリヴァの頭をミュラーは掴み、囁いた。
「また再生してこい、次は細切れにしてやる」
そう言い放つと、リヴァの上半身は黒炎に焼き尽くされる。
手負のリストを探そうとするが、すでにその場から消えてしまった。
ミュラーの心に再び怒りの感情が湧き起こる。
すぐにロゼを追おうと駆け出そうとすると、馬車からエルドラがミュラーに呼びかける。
「落ち着ついて、今追っても手遅れです。文書から、ロゼの行き先を探りましょう」
ミュラーは足を止めた。
しかし感情のままに大きく叫び声を上げた。
狼の雄叫びがベガスに響き渡っていった。
鬼神の如き勢いでロゼに向かって肉薄する。
他の誰もが反応できない中、真っ直ぐに。
その瞳にはルカとその隣にいるロゼしか映っていなかった。
傍らにいる他の二人の敵など無視し、猛進しながら、目にも止まらぬ速さで抜剣し、ロゼに向かって剣を振り下ろす。
あっという間のミュラーの動きに彼の味方は慌てて、戦闘態勢に入る。
しかし用心深いオルマは思った。
敵は待ち構えていた罠ではないのか?
そう疑心に駆られ、ミュラーを止めようとした時、すでに遅かった。
ロゼの眼前までいたミュラーは、巨大な顎に飲み込まれていた。
リストが放った召喚術だ。
建物程の大きな口に胴体はなく手と足が生えた薄気味悪い生き物、アヤカシだ。
ロゼの側にいたリヴァはニヤニヤと笑い、リストは薄ら笑いを浮かべた。
ロゼの傍らにいたルカはあまりのショックな光景に気を失う。
すぐに態勢を立て直そうとリューが少年兵を指揮し、ジラールがハーミットを構え、オルマが糸を張り巡らそうとすると、リストは彼らに向かって右手をかざす。
すると見覚えのある異形のアヤカシが現れた。
それも三体も。
リューはリストという人物を見誤っていた。
生霊を同時発動、しかも複数体も出現させることができるとは……。
しかし、相手が精霊操術とはいえ、魔法を発動させたということは、以前のようにこの場で魔法を無効化される可能性は低い。
展開させた少年兵達に魔法を発動させようと指揮しようとした時、その場で異変が起きた。
リストが最初に召喚した大口の化け物が爆散したのだ。
飛び散る肉片。吹き出る流血。
あまりの光景に敵、味方が呆気に取られている中、ミュラーはいた。
ミュラーは迷うことなく、ロゼに向かって剣を放つ。
しかし、その前にリヴァが立ち塞がった。
振り下ろされた剣を腕で防いでいた。
以前切断された腕が再生されていた。
ミュラーの鬼の如き剣幕に臆することなく、まるでその怒りの波動を待ち侘びたかのように、ニヤリと笑い、蹴劇をミュラーの胴体に向かって放つ。
「待ってたぜ! 青髪っ!!」
しかしその蹴りの一閃はミュラーが放った蹴りで防がれた。
ミュラーは怒りに満ちた感情を隠すことなく、目の前で邪魔をする存在に睨みつける。
そしてルカを抱えて、その場を立ち去ろうと背中見せたロゼに向かって駆け出す。
今度はリストがミュラーの邪魔をする。
放っていた異形のアヤカシが一体、ミュラーの前に立ち塞がる。
ミュラーはこの存在に物理が効かないのは知っていた。
そして躊躇なく地面に手を置き、魔法を発動させる。
『地槍』
すると大地が隆起し、先端が尖った地柱がアヤカシの胴体を貫く。
そして大地の剣で八つ裂きになったアヤカシの頭を掴み。
「炎殺」
すると黒い炎がアヤカシを包み、焼き尽くす。
あまりの火力でアヤカシは一気に炭化する。
視界から離れていくルカをミャラーは追おうと走り出すが、今度は巨大な石像がミュラーの身体を踏み潰す。
両腕でその石像の足を持ち上げ、ミュラーは必死に耐える。
それでも視線はロゼから離さない。
必死に愛する者の名を口にする。
「ルカーーーーー!!!!!」
しかしミュラーの悲痛な叫びは届くことなく、ルカの目は閉じたままだった。
ロゼは振り返ることなく、片手で手を振り、その場を立ち去る。
絶対に逃がさない。
ジラールがハーミットで放った巨大な光弾が石像の上半身を吹き飛ばす。
ガラガラと音を立てて、崩れる石の雨がミュラーの身体を打ちつける。
それでも駆け出そうとするミュラーの頭をオルマが思いっきり蹴り飛ばした。
そしてミュラーの目を覚まさせようと叫ぶ。
「ミュラー! 周りを見て! 今はそれどころじゃないよ!」
ミュラーが振り返ると、リューは地面に伏し、頼りの少年兵達がリストの操るアヤカシに襲われかけていた。
ミュラーは舌打ちし、その場にあった石を蹴飛ばした。そして、オルマに尋ねる。
「糸は仕掛けたか?」
オルマがコクリとうなづくと、すかさず右手をかざした。
『爆雷』
するとオルマが張り巡らしていた糸がアヤカシ達を縛り上げ、それに電気を帯びた磁力が走っていった。
磁力と同時に爆炎がほと走り、巨大な炎の塊がアヤカシ達の身を包み、爆散する。
立ちこめる炎の中、ミュラーは駆け出した。
虚を突かれたリストは新たな精霊を召喚しようと右手をかざそうとすると、その腕はジラールが放った光弾で吹き飛ばされた。
リストの眼前には剣を振り下ろそうとしたミュラーが迫っていた。
しかし再びリヴァが立ち塞がる。
そしてまたその腕でミュラーの剣を弾こうとしていた。
しかしその動きをミュラーは読んでいた。
剣の軌道を変え、縦ではなく横にその線を変えた。
その動きにリヴァが驚愕したのは束の間だった。
彼の上半身と下半身に剣光が走った時、リヴァの身体は真っ二つに裂かれた。
バカな!?
リヴァがそう驚くと同時に視界が揺らぐ、崩れ落ちる上半身、そのリヴァの頭をミュラーは掴み、囁いた。
「また再生してこい、次は細切れにしてやる」
そう言い放つと、リヴァの上半身は黒炎に焼き尽くされる。
手負のリストを探そうとするが、すでにその場から消えてしまった。
ミュラーの心に再び怒りの感情が湧き起こる。
すぐにロゼを追おうと駆け出そうとすると、馬車からエルドラがミュラーに呼びかける。
「落ち着ついて、今追っても手遅れです。文書から、ロゼの行き先を探りましょう」
ミュラーは足を止めた。
しかし感情のままに大きく叫び声を上げた。
狼の雄叫びがベガスに響き渡っていった。
10
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる