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プロローグ 始動
鍛錬あるのみ 3
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スティーヴン・リード。ハーグランド国立士官学校を卒業したのちにイギリス陸軍第27連隊に所属。中東への出兵、防衛業務を経験。その後はSASに入隊。テロリストグルーテロリストグループの一部の壊滅に貢献したが、任務中に敵の反撃にあい負傷、右腕を失いPTSDに陥る。
数年間の厳しいリハビリの結果、PTSDの治療に成功。HACにスカウトされる。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)のことは士官学校で散々聞かされた。自殺者が多いこと、治すことは非常に難しいこと、常に軍人はケアが必要なこと。
…それを乗り越えるにはどれだけキツイリハビリがあったのだろうか。正直、想像もつかない。強い人なんだろう。
…能力は平均して高く、命令に従順。支援を得意とし、どのような任務でも豊富な知識でその場に応じた対策を講じる。
こんなところか。分隊としてはこのような人がいると非常に心強い。臨機応変な現場だろうから、適応能力が高いのは助かる。
紙を一枚めくり、新しく分析を始める。
ランドルフ・バクスター。アメリカのヒスパニックで5歳の時にイギリスに移住。フットサルチームで活躍し、フットサルプレイヤーとしての道を期待されたが、士官学校へ入学。そして軍へと入隊し、経験を積んだ。
ロシア民政国のイギリス領事館が襲撃された事件では、SAS第3連隊として人質の救助に成功した。
その後、フォーリタン基地にて口論になり乱闘へと発展。除隊処分となり、HACにスカウトされる。
能力は平均的で性格は陽気。チームのムードメーカーとなる存在。
特に問題はなさそうな人だ。口論といっても相手がチームメイトを侮辱したからで、非はないように思える。少し熱くなりすぎる部分はあるのかもしれない。
数時間が経ち、そろそろ終わるといったところだ。
僕たちのチーム、チャーリー分隊の4人。モーガン、スティーヴン、ランドルフ、そして僕、マックス。
その他には…メカニック兼オペレーター担当のヴィクター、変人メカニックのトビアス(写真はない)。整備担当のソニア。この辺りが気になった。…ヴィクターは既に知っているが。
他の隊員はアルファ、ブラボー分隊、バックアップチーム、兵站やオペレーターの者がいて、総員28名といったところ。
正直、かなり少ない。いくら限定的な部隊だとしてもこれでは複数の任務に対応しづらいだろう。
まあ、一兵士が気にしてもどうこうなる問題でもない。今までこれで組織は維持していたのだから、問題はないということに違いないはずだ。
ペンを置き、席を立つ。まだ2人は続けているようだ。
まだ作業を続けているローレンスさんに書類を手渡す。
「おお。終わったか。…じゃあ、休憩室で休憩しててくれ。えーっと。そうだな…今は12時だから…2時くらいにでも呼びに行くから。」
ローレンスさんはキーボードを叩きながら言う。
「わかりました。では。」
そう言って僕はローレンスさんに会釈して歩き出す。
「マックス~。すぐ行くから。待ってろよ~。」
「…僕の方が先だから。」
「じゃあね、2人とも。」
2人に挨拶をして部屋を後にした。
休憩室は至って普通だ。パソコンが二つ置いてあり、食べ物と飲み物自販機、机、ソファーに観葉植物、冷蔵庫。いわゆる一般企業にあるようなものだ。
紅茶を飲んで、一息つく。隊員の履歴書を見ていると、どうにも軍を除隊した人が多くスカウトされている。勿論僕たちのように直接HACにスカウトされた人もいるにはいるが、比率が明らかに除隊された人の方が多い。
除隊理由も理解できるのはできるのだが、少し処分が重すぎるような…違和感がある。
…休憩と言われているのに思考を巡らせていては休憩にはならないか。
紅茶に角砂糖をもう一欠片入れ、冷蔵庫に入っていたサンドイッチを頬張る。
本来、昼食は1日で一番大事なものなのだが…今日はいいことにしよう。
ソファーに腰掛け、天井を見上げ、ため息をついた。
同時刻 総司令室
コンコン、と音を立てて扉が開いた。
「失礼します。総司令。…寝てましたか?」
総司令、と呼ばれた男…イアンは頭を掻きながら答える。
「寝てない寝てない。総司令が寝るわけないじゃないですか。…で、何の用なの?デヴィッドふ・く・し・れ・い。」
デヴィッドと呼ばれた男はため息をついた。
「…いつもそうやって茶化して。威厳ぐらい持ったらどうなんです?総司令として。」
HACにおいて階級というものはほとんど存在しない。唯一存在するのは総司令と副司令。
総司令はイアン。副司令はローレンスとデヴィッドの2人だ。
「そんなことしたら僕の良さがなくなっちゃうじゃない。ほら、早く説明してよ。何のようなの?」
デヴィッドは眉間に皺を寄せる。
「あーもう…いいですよ。はい。こちらをどうぞ。」
そうやってイアンの手元に渡されたタブレット端末に表示された画面には、「任務」の文字。
「…なるほど。久しぶりだ。1年ぶりくらい?」
デヴィッドは変わらない表情で告げる。
「確認は後にしてください。上でお客様がお待ちです。」
イアンはニヤリと笑った。
「あー、はいはい。ついに来た、ってことね。」
イアンはタブレットを机に置いて、エレベーターに向かおうとする。
「これ、お忘れですよ。」
そうデヴィッドは言うと、置かれたタブレットを拾ってイアンに手渡す。
イアンはそれ受け取ると、無言で会釈してエレベーターに乗り込む。
エレベーターは閉まり、地上へと上昇していく。
見送ったデヴィッドは不安げな表情を浮かべていた。
数年間の厳しいリハビリの結果、PTSDの治療に成功。HACにスカウトされる。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)のことは士官学校で散々聞かされた。自殺者が多いこと、治すことは非常に難しいこと、常に軍人はケアが必要なこと。
…それを乗り越えるにはどれだけキツイリハビリがあったのだろうか。正直、想像もつかない。強い人なんだろう。
…能力は平均して高く、命令に従順。支援を得意とし、どのような任務でも豊富な知識でその場に応じた対策を講じる。
こんなところか。分隊としてはこのような人がいると非常に心強い。臨機応変な現場だろうから、適応能力が高いのは助かる。
紙を一枚めくり、新しく分析を始める。
ランドルフ・バクスター。アメリカのヒスパニックで5歳の時にイギリスに移住。フットサルチームで活躍し、フットサルプレイヤーとしての道を期待されたが、士官学校へ入学。そして軍へと入隊し、経験を積んだ。
ロシア民政国のイギリス領事館が襲撃された事件では、SAS第3連隊として人質の救助に成功した。
その後、フォーリタン基地にて口論になり乱闘へと発展。除隊処分となり、HACにスカウトされる。
能力は平均的で性格は陽気。チームのムードメーカーとなる存在。
特に問題はなさそうな人だ。口論といっても相手がチームメイトを侮辱したからで、非はないように思える。少し熱くなりすぎる部分はあるのかもしれない。
数時間が経ち、そろそろ終わるといったところだ。
僕たちのチーム、チャーリー分隊の4人。モーガン、スティーヴン、ランドルフ、そして僕、マックス。
その他には…メカニック兼オペレーター担当のヴィクター、変人メカニックのトビアス(写真はない)。整備担当のソニア。この辺りが気になった。…ヴィクターは既に知っているが。
他の隊員はアルファ、ブラボー分隊、バックアップチーム、兵站やオペレーターの者がいて、総員28名といったところ。
正直、かなり少ない。いくら限定的な部隊だとしてもこれでは複数の任務に対応しづらいだろう。
まあ、一兵士が気にしてもどうこうなる問題でもない。今までこれで組織は維持していたのだから、問題はないということに違いないはずだ。
ペンを置き、席を立つ。まだ2人は続けているようだ。
まだ作業を続けているローレンスさんに書類を手渡す。
「おお。終わったか。…じゃあ、休憩室で休憩しててくれ。えーっと。そうだな…今は12時だから…2時くらいにでも呼びに行くから。」
ローレンスさんはキーボードを叩きながら言う。
「わかりました。では。」
そう言って僕はローレンスさんに会釈して歩き出す。
「マックス~。すぐ行くから。待ってろよ~。」
「…僕の方が先だから。」
「じゃあね、2人とも。」
2人に挨拶をして部屋を後にした。
休憩室は至って普通だ。パソコンが二つ置いてあり、食べ物と飲み物自販機、机、ソファーに観葉植物、冷蔵庫。いわゆる一般企業にあるようなものだ。
紅茶を飲んで、一息つく。隊員の履歴書を見ていると、どうにも軍を除隊した人が多くスカウトされている。勿論僕たちのように直接HACにスカウトされた人もいるにはいるが、比率が明らかに除隊された人の方が多い。
除隊理由も理解できるのはできるのだが、少し処分が重すぎるような…違和感がある。
…休憩と言われているのに思考を巡らせていては休憩にはならないか。
紅茶に角砂糖をもう一欠片入れ、冷蔵庫に入っていたサンドイッチを頬張る。
本来、昼食は1日で一番大事なものなのだが…今日はいいことにしよう。
ソファーに腰掛け、天井を見上げ、ため息をついた。
同時刻 総司令室
コンコン、と音を立てて扉が開いた。
「失礼します。総司令。…寝てましたか?」
総司令、と呼ばれた男…イアンは頭を掻きながら答える。
「寝てない寝てない。総司令が寝るわけないじゃないですか。…で、何の用なの?デヴィッドふ・く・し・れ・い。」
デヴィッドと呼ばれた男はため息をついた。
「…いつもそうやって茶化して。威厳ぐらい持ったらどうなんです?総司令として。」
HACにおいて階級というものはほとんど存在しない。唯一存在するのは総司令と副司令。
総司令はイアン。副司令はローレンスとデヴィッドの2人だ。
「そんなことしたら僕の良さがなくなっちゃうじゃない。ほら、早く説明してよ。何のようなの?」
デヴィッドは眉間に皺を寄せる。
「あーもう…いいですよ。はい。こちらをどうぞ。」
そうやってイアンの手元に渡されたタブレット端末に表示された画面には、「任務」の文字。
「…なるほど。久しぶりだ。1年ぶりくらい?」
デヴィッドは変わらない表情で告げる。
「確認は後にしてください。上でお客様がお待ちです。」
イアンはニヤリと笑った。
「あー、はいはい。ついに来た、ってことね。」
イアンはタブレットを机に置いて、エレベーターに向かおうとする。
「これ、お忘れですよ。」
そうデヴィッドは言うと、置かれたタブレットを拾ってイアンに手渡す。
イアンはそれ受け取ると、無言で会釈してエレベーターに乗り込む。
エレベーターは閉まり、地上へと上昇していく。
見送ったデヴィッドは不安げな表情を浮かべていた。
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