転生したら村人Dだっただ

流星 ひかり

文字の大きさ
1 / 16
第1章 転生したら村人Dだっただ

転生したら村人Dだっただ Part1

しおりを挟む
「おはよう、天井くん。今日も良い朝だね。」
職業 引きこもりニートの鈴村 輪太郎(すずむら りんたろう)は、現実世界に友達がいない。
中学生の頃にいじめられた事が原因で学校に行けなくなり、28歳になった今現在まで家の自室から出られなくなった。
だから今挨拶をしたのは文字通り自分の部屋の天井だ。
天井は目が醒めたら1番最初に会う友達だから欠かさず挨拶をしている。
いわゆる空想上の友達(イマジナリーフレンド)だ。
「よう、輪太郎‼︎今日は何するんだ?」
天井が元気よく頭の中で語りかけてくれる。
「うーん、デルトラストで遊ぶかなあ。」
最近輪太郎がはまっているオンラインファンタジーRPGだ。
「そっかそっか、あれは面白そうだからな。おれも身動き取れたら遊びてぇくらいだ。」
天井が羨ましそうにしている。彼も築後30年ずっと同じ姿勢で過ごしてるんだ。
退屈にもなるだろうなと考えていると、話しを聞いていた新型ゲーム機プレイスペース5が優しいセクシーなお姉さん口調で語りかけてきた。
「ねえ、輪ちゃん。デルトラストでもいつもパーティ組まないで独りで遊んでるけど、お友達作ってみたら?ボイチャとかも出来るゲームなんでしょ?」
「うん、考えてみるよ。でも独りの方が自由だし楽なんだよね。」
そう言うと輪太郎はプレイスペース5を起動した。
輪太郎自身もこのままではいけないと心の何処かでは思っている。
いつまでも公務員として共働きをしている優しい両親の脛をかじる訳には行かないし、せめてオンライン上だけでも人と交流して、いずれは家の外に出れるようになりたいと思っている。
恩返しを兼ねて親孝行をしたいと思っている。
だけど中学時代に受けたトラウマがどうしても人と関わる事を拒絶してしまう。
「とりあえず、飯食いながらデルトラストやるか。」
いつも両親が仕事に行く前に部屋の外に食事を用意してくれている。
今日は大好物の納豆餅だ。
お餅の上に納豆をかけただけの物だが、ご飯と一緒に食べるよりも納豆の粘り気と餅のモチモチ感が混ざり合い絶妙なハーモニーを奏でてマジで美味い。
「さて、このお決まりなBGM流れてるし、そろそろボスが近い頃かな?」
餅をほおばりながら恐る恐る主人公を操作する。
「がぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
突然画面アップに恐ろしい姿をしたゾンビのようなモンスターが現れた。
「うぐっ」
輪太郎は警戒していたとはいえ、あまりの迫力の演出に驚いて頬張っていた餅を喉につまらせてしまった。
苦しい。
「輪太郎‼︎麦茶を飲め‼︎」
天井がアドバイスをくれ気が付き、コップに注がれていた麦茶に手を伸ばそうとするも
慌ててたため手を滑らしお茶を全てこぼしてしまった。
「うぐぅぅぅぅぅ」
ヤバイ、苦しい。死ぬ。こんなとこで俺死ぬのか。
部屋からまた出れるようになりたかったな。
自由に外の世界へ。でも死んだら天国で自由に走り回って冒険出来るのかもな。
意識が段々薄れてゆく中、輪太郎はそんな事を漠然と考えていた。
頭が真っ白になり、視界は真っ黒になった。
「みつけた。」
突然頭の中に声が響いた。老人の声だろうか。聴いた事の無いしわがれた男の声だ。
天井でもプレイスペース5でも他の友達の声でも無い。
死ぬ間際に新しい友達が出来たのだろうか?
「錬成開始。ボディー適合がかなり良い数値だ。アンチRP数値も期待出来る。これならもしや。」
何を訳が解らない事を言ってるんだ。
「イーリスにようこそ、わしの可愛い人形。」
その声が、僕が輪太郎として聴いた最後の声だった。

part2に続く







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...