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第1章 転生したら村人Dだっただ

転生したら村人Dだっただ Part2

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「おーい、起きろー‼︎」
僕を起こそうとしている声にはっと気が付き、まぶたは重くてまだ目が開けられないが意識がしっかりしてくる。
さっき僕が餅を喉に詰まらせて死んだと思ったのは夢だったんだろうか。呼吸が出来る。苦しく無い。良かった。確かに僕は息をしているようだ。
「うーん、おはよう天井くん。」
僕はいつもの調子で目を閉じたまま挨拶した。
だけどさっき僕を起こした声は、いつも脳内で再生される天井くんボイスで無かったような...。
現在の天井くんの声は何回かの交代劇を経て、イケボで今をときめく人気声優 花野 春(はなの しゅん)をモチーフにしているがそれとは違う高い声の持ち主だった。
「テンジョウくん?誰それ?」
ようやく目を開ける事が出来た僕の視界に映ったのは、黒髪に青い目をした10歳前後の可愛らしい少年の姿だった。
「えっ?」
思わず声が出てしまう。
この少年が空想上の友達(イマジナリーフレンド)では無い事はすぐに理解した。
息遣いからして確かにそこに存在しているリアルさがあったし、何より僕は引きこもりになってから人と関わりたく無いから天井や物に人格を与えて友達として設定しているのでイマジナリーフレンドとして人間の姿をしたキャラクターが僕に話しかけてくる事は絶対にあり得ないからだ。
あたりをキョロキョロと見渡し分かった事は、どうやら僕は何処かのかなり古くボロボロな木造の洋風な部屋の床で寝ていたようだ。
よく見ると少年はボロボロだが中世の西洋風な服を着ており、これはまさにファンタジーの世界。
これはまさか噂の異世界転生ものってやつなのでは‼︎?
夢の薔薇色人生の始まりなのでは‼︎?
今まで孤独で悲惨な人生だったけどきっと僕は選ばれし者だとかこの少年に言われて一緒に冒険して、転生者特有の最強ステータスで敵もワンパンしたり、プリンセスからモテモテでウハウハだったりするに違いない。
そんな事を考えていると再び少年が口を開いた。
「ぼーっとしてないで畑仕事に行くよ。村人D。」
「村人D?」
僕の事をそう呼んだのだろうか?
「今日はパルパルの種を植える日だね。朝早いうちにちゃっちゃと終わらせちゃおう。」
「パルパルって何!?」
問答無用に少年は僕の手を引き、家の外に向かってひっぱられた。
十数年ぶりに出た外の世界は、僕の知る世界とは全く違う、一面に何かの畑が広がる田舎の村のようだけど朝日がとても眩しくて、とても美しい世界だった。

part3に続く
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