かわいいものが好きなボクは、ボクを否定する王子を「ざまぁ」して胸を張って生きていきます。

さくしゃ

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問題の相手

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 10年前のあの日ーー

 煌びやかなシャンデリアが照らし、参加者全員が派手な衣装を身に纏い列席した"顔合わせパーティー"

 王国中の5歳を迎えたばかりの貴族子女が招待されたパーティーで、

 "男のくせに気持ちの悪いやつだ"

 ボクに容赦なく放たれた言葉の矛と、パーティー参加者全員から向けられた同情の視線と笑い……

「うっ……」

 過去を思い出し、体が震えたと思ったら急な吐き気がボクを襲った。

 慌てて懐からハンカチを取り出し口を押さえる。

「はぁ……はぁ」

 鼻ではなくゆっくりと口で呼吸すると次第に吐き気がおさまっていき、

「ふぅ……」

 5分もすれば元に戻り、ハンカチを懐にしまう。

(もう10年も経つというのにボクはいまだに……)

 考える余裕が出てくると、トラウマからいつまでも立ち直れずにいる自分に怒りを覚え、ガラス戸に映る自身を睨む。

 あの頃と変わらない。パーティーでのことを引きずり閉じこもってしまったあの頃と何も……自分が悪いわけではないのに、周りと違いすぎる自分のことが許せなくて窓ガラスに映った自分を睨み続けたあの頃と。

「探したぞ。ユリウス」

 そのとき、背後の方からうずくまるボクに声がかけられた。

「君に頼みたいことがあるのだが話を聞いてくれないだろうか?」

 その人物は、チョコレート色の毛先がカールした髪をいじりながら、側仕えであるメガネをかけた生徒と屈強な肉体の生徒に紺のブレザーと灰色のズボンのシワを直させる。胸には、王族である証のドラゴンの刺繍が施されている。

「第一王子で、王太子である俺がこうしてお願いをしているのだからまさか断るなんてことはなかろう」

 ボクが「はい」と言うのがさも当然のことのように話すブレイク・オーガニクスーーオーガニクス王国第一王子は、

「まずは首(こうべ)を垂(た)れろ」

 床を指差し、土下座をするように指示……ではなくもはや「命令」をしてきた。

「……」
 しかし今のボクにはそんなことよりも、

 "男のくせに気持ちの悪いやつだ"

 10年前のパーティーでいわれた言葉と、あのときと変わらない人を見下した視線がフラッシュバックして、

「どうした?さっさと這(は)いつくばれ」

 イライラした様子で話すブレイクを無視して、

「っ!」

 身を翻(ひるがえ)し、ガラス張りの戸を開き、体育館へと通じる渡り廊下を走った。

「っ!」

 あのときのトラウマから目を背けるようにして逃げた。

「……追え!絶対に逃すな!」

 ボクの突然の逃避行為に面食らっていたブレイクたちは一拍おいて、慌てるように側仕えにブレイクが命令を飛ばし、

「は、はい!」

「おう!」

 その命令から瞬時に状況を理解した側仕えの二人は、慌てて走り出す。

「はぁはぁはぁはぁ」

 一心不乱に青い顔で走る。

 普段からあまり運動を好んでするわけではなく、どちらかと言うと読書をしている時間の方が長いので、久しぶりの全力疾走に足がもつれそうになったが、

(怖い。やだ)

 それよりもトラウマと向き合うことの方が怖くて、不恰好でもなんでもいいからとにかく走り続ける。

「2、2、3、4……」

 ストレッチをする運動部がいる体育館の横を駆け抜け、

「シャー!」

「きゃん!あん!」

 犬と蛇が睨み合う体育館裏を抜けて、渡り廊下の横を通り校舎裏へ。

「王子の命令を無視したらどうなるか」

「二度と歩けなくなるまでその身に叩き込んでやる!」

 背後から物騒な怒号が飛んでくる。

「はぁはぁ!はぁはぁ!」

 捕まったらどんな目にあわされるかわかったものではない。

 酸欠寸前の体に喝を入れ、落ち始めていた速度を上げる。

「ゼッ!ゼッ!」

 そしてちょうど角を曲がった先で、

「うわっ!」

 見知らぬ女の子とぶつかった。
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