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私にも好みがあるわ!!
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「っ!」
見知らぬ少女とぶつかったボクは、転びはしなかったけど、数歩後ろに下がり踏みとどまる。
それからぶつかった時に入った少女の肘でズキズキと痛むお腹を抑え、苦悶の表情のまま、
「……ご」
地面に倒れ込み空を眺める少女へ手を差し出した。
「ご、ごご、ご」
カタカタカタと揺れる体。
(ど、どうしよ……スレイン以外の人間と話すなんて何年もしていないからなんて話したらいいかわかんない!)
少女に手を伸ばしながら、内心では謝らないとと思いつつも人に対する恐怖心や緊張からうまく言葉が出てこない。
「ご、ごごご、ご」
と、連呼するボクに、
「ああ、心配いらないよ」
少女はけろっとした顔で答えると、
「ほっ」
寝転がったままの体勢から器用にブリッジをすると、
「そっと」
難なく立ち上がった。
「……」
ボクは少女の運動部顔負けの身体能力に驚愕し目を見開く。
「どもどもー」
少女はボクの反応を見て笑うと手を振った。
(ってそうじゃない!よく見ていなかったボクが悪いんだから謝らなくちゃ!)
とにかく謝罪の意を込めて少女に向かって頭を下げた。
「あんた『ユリウス・ワーグナー』でしょ? 無感情なヤツかと思ってたけど案外いろんな反応するのね」
弾んだ声で少女は嬉しそうに話すと、
「私の方こそよく見ずにぶつかってごめん」
ボクが頭を上げると少女はそう言い頭を下げた。
「っ!、っ!」
ボクはそんな少女に向かって身振り手振りで「悪いのはボクだから」と伝える。
「お互い様だって。それより私なんかと一緒にいるところを見られたらどんな噂が流れるかわからないから早くどこかへ」
と、少女が話し切る直前、
「ユリウス・ワーグナー!!」
「ブレイク殿下が話している途中で逃げ出すとはこの無礼者が!!早く姿を見せんと二度と歩けない体にしてやるぞ!」
背後……それもすぐ近く、渡り廊下の方からモスとスライスの怒気のこもった声が響いた。
「!!」
その声に震え上がり、青い顔で隠れる場所を探す。しかし、校舎裏はテニスコート、陸上部が使う400メートルトラックと、ひらけた場所しかなく隠れる場所がどこにもない。
(どうしよ、どうしたら……)
走って逃げるにしても、遮蔽物がない今の場所では、ブレイクの近衛兵たるスライスに追いつかれてしまう。
「私の後ろへ」
次の行動に迷ってあたふたしていたら、ボクの制服の袖を少女が掴み、引っ張った。
「な、な?」
なぜ?と問うボクに、
「さぁ……しいて言うなら『なんとなく』かな」
ボクの言いたいことを理解した彼女はそう返答すると朗らかに笑った。
「やっと見つけた」
ヌッとスライスが姿を現し、少し遅れて、
「まずは一発殴ってから殿下の元へ連れて行くぞ」
肩を激しく上下させたモスが拳を鳴らしボクたちの方へ歩くスライスに指示を出す。
「任せとけ……おい、ピンクの女。そこをどけ」
不適な笑みを浮かべたスライスが少女に凄む。
「はぁ……どいつもこいつも。自分勝手なやつって……本当にバカなやつばかりだな!」
少女は、自身の倍以上は大きなスライスを前にしても怯えを一切見せず、堂々と言い放つ。
「バカ……誰がバカだ!女!」
スライス……ではなく、なぜか背後のモスが少女の言葉に憤慨しキレ返す。
「『自分勝手なやつ』がなんで『バカ』なんだ?」
これまでの人生のすべてを鍛えることに費やした脳筋のスライスは首を傾げ、疑問符を浮かべていた。
「そっちが釣れたか……まあ、い・い・や!!」
いい終わりと同時に少女は前へ体を倒すと、
「……っ!」
とんでもない速度でスライスとの間合いを詰め、
「急所がガラ空きだよ!」
右足を男の急所へと蹴り上げた。
「ま、……!」
一瞬遅れてスライスが反応し構えを取る。しかし、
「おっそ」
少女の右足がスライスの急所を捉え、蹴り上げる。
「っ!……」
同じ男として想像したら青ざめるような激痛がスライスを襲う。
「はぅぅぅ!!……」
青い顔で股を抑えるスライス。その顔は徐々に色素が抜けていき白目をむいて背中から地面に倒れた。
「……す、スライス!!」
倒れたスライスにモスが駆け寄る。
「お、お前!俺たちにこんなことしてタダで済むと……ってよく見たらお前は?!」
「気づくのも遅いな」
モスに対して、ふん!と鼻息を荒げる少女。
「そのピンクの髪、幼い見た目、肉食獣のような瞳……『クリーピー』!!」
「そうです。私が『クリーピー』です」
少女の返答にモスは青ざめ、
「や、やめてくれ!お、俺を……俺たちを使って変な妄想だけは」
急に取り乱し始めた。それを見た少女は、
「ほー……なら、こんな物語はどうかな?」
邪悪な笑みを浮かべると、
「夕日が沈む王城の一室でその大男にしなだれ掛かられたお前は、あつい口付けを交わす。しかしそれは許されない恋。主人にバレてしまったら命なんてない。それでも心が求めてやまない」
少女の妄想が加速、
「や、やめてくれェェェェェェェ!!」
それを聴くにつれて顔色が紫になると、モスは抱えていたスライスの頭を放り投げ、
「俺には大切な女性がいるんだああ!! ママぁぁ!!」
校舎の方へと走り去っていった。
「な、南無ぅぅ」
西暦805年第4の月、トドメの一撃をくらったスライス、校舎裏に眠る。チーン。
「ケッ。私にだって好みがあんだよ。誰がお前らみたいな奴らで妄想するかよ!」
吐き捨てるように言うと、少女は背後にいるボクへと振り返り、
「じゃ、あたしは行くから。あいつらが戻ってくる前にあんたも早くどこかへ行きなよ。じゃあな」
最後に優しく微笑むと踵を返して立ち去っていった。
「……」
ボクは見えなくなるまで彼女の背中を見つめた。
「……かっこいい」
見知らぬ少女とぶつかったボクは、転びはしなかったけど、数歩後ろに下がり踏みとどまる。
それからぶつかった時に入った少女の肘でズキズキと痛むお腹を抑え、苦悶の表情のまま、
「……ご」
地面に倒れ込み空を眺める少女へ手を差し出した。
「ご、ごご、ご」
カタカタカタと揺れる体。
(ど、どうしよ……スレイン以外の人間と話すなんて何年もしていないからなんて話したらいいかわかんない!)
少女に手を伸ばしながら、内心では謝らないとと思いつつも人に対する恐怖心や緊張からうまく言葉が出てこない。
「ご、ごごご、ご」
と、連呼するボクに、
「ああ、心配いらないよ」
少女はけろっとした顔で答えると、
「ほっ」
寝転がったままの体勢から器用にブリッジをすると、
「そっと」
難なく立ち上がった。
「……」
ボクは少女の運動部顔負けの身体能力に驚愕し目を見開く。
「どもどもー」
少女はボクの反応を見て笑うと手を振った。
(ってそうじゃない!よく見ていなかったボクが悪いんだから謝らなくちゃ!)
とにかく謝罪の意を込めて少女に向かって頭を下げた。
「あんた『ユリウス・ワーグナー』でしょ? 無感情なヤツかと思ってたけど案外いろんな反応するのね」
弾んだ声で少女は嬉しそうに話すと、
「私の方こそよく見ずにぶつかってごめん」
ボクが頭を上げると少女はそう言い頭を下げた。
「っ!、っ!」
ボクはそんな少女に向かって身振り手振りで「悪いのはボクだから」と伝える。
「お互い様だって。それより私なんかと一緒にいるところを見られたらどんな噂が流れるかわからないから早くどこかへ」
と、少女が話し切る直前、
「ユリウス・ワーグナー!!」
「ブレイク殿下が話している途中で逃げ出すとはこの無礼者が!!早く姿を見せんと二度と歩けない体にしてやるぞ!」
背後……それもすぐ近く、渡り廊下の方からモスとスライスの怒気のこもった声が響いた。
「!!」
その声に震え上がり、青い顔で隠れる場所を探す。しかし、校舎裏はテニスコート、陸上部が使う400メートルトラックと、ひらけた場所しかなく隠れる場所がどこにもない。
(どうしよ、どうしたら……)
走って逃げるにしても、遮蔽物がない今の場所では、ブレイクの近衛兵たるスライスに追いつかれてしまう。
「私の後ろへ」
次の行動に迷ってあたふたしていたら、ボクの制服の袖を少女が掴み、引っ張った。
「な、な?」
なぜ?と問うボクに、
「さぁ……しいて言うなら『なんとなく』かな」
ボクの言いたいことを理解した彼女はそう返答すると朗らかに笑った。
「やっと見つけた」
ヌッとスライスが姿を現し、少し遅れて、
「まずは一発殴ってから殿下の元へ連れて行くぞ」
肩を激しく上下させたモスが拳を鳴らしボクたちの方へ歩くスライスに指示を出す。
「任せとけ……おい、ピンクの女。そこをどけ」
不適な笑みを浮かべたスライスが少女に凄む。
「はぁ……どいつもこいつも。自分勝手なやつって……本当にバカなやつばかりだな!」
少女は、自身の倍以上は大きなスライスを前にしても怯えを一切見せず、堂々と言い放つ。
「バカ……誰がバカだ!女!」
スライス……ではなく、なぜか背後のモスが少女の言葉に憤慨しキレ返す。
「『自分勝手なやつ』がなんで『バカ』なんだ?」
これまでの人生のすべてを鍛えることに費やした脳筋のスライスは首を傾げ、疑問符を浮かべていた。
「そっちが釣れたか……まあ、い・い・や!!」
いい終わりと同時に少女は前へ体を倒すと、
「……っ!」
とんでもない速度でスライスとの間合いを詰め、
「急所がガラ空きだよ!」
右足を男の急所へと蹴り上げた。
「ま、……!」
一瞬遅れてスライスが反応し構えを取る。しかし、
「おっそ」
少女の右足がスライスの急所を捉え、蹴り上げる。
「っ!……」
同じ男として想像したら青ざめるような激痛がスライスを襲う。
「はぅぅぅ!!……」
青い顔で股を抑えるスライス。その顔は徐々に色素が抜けていき白目をむいて背中から地面に倒れた。
「……す、スライス!!」
倒れたスライスにモスが駆け寄る。
「お、お前!俺たちにこんなことしてタダで済むと……ってよく見たらお前は?!」
「気づくのも遅いな」
モスに対して、ふん!と鼻息を荒げる少女。
「そのピンクの髪、幼い見た目、肉食獣のような瞳……『クリーピー』!!」
「そうです。私が『クリーピー』です」
少女の返答にモスは青ざめ、
「や、やめてくれ!お、俺を……俺たちを使って変な妄想だけは」
急に取り乱し始めた。それを見た少女は、
「ほー……なら、こんな物語はどうかな?」
邪悪な笑みを浮かべると、
「夕日が沈む王城の一室でその大男にしなだれ掛かられたお前は、あつい口付けを交わす。しかしそれは許されない恋。主人にバレてしまったら命なんてない。それでも心が求めてやまない」
少女の妄想が加速、
「や、やめてくれェェェェェェェ!!」
それを聴くにつれて顔色が紫になると、モスは抱えていたスライスの頭を放り投げ、
「俺には大切な女性がいるんだああ!! ママぁぁ!!」
校舎の方へと走り去っていった。
「な、南無ぅぅ」
西暦805年第4の月、トドメの一撃をくらったスライス、校舎裏に眠る。チーン。
「ケッ。私にだって好みがあんだよ。誰がお前らみたいな奴らで妄想するかよ!」
吐き捨てるように言うと、少女は背後にいるボクへと振り返り、
「じゃ、あたしは行くから。あいつらが戻ってくる前にあんたも早くどこかへ行きなよ。じゃあな」
最後に優しく微笑むと踵を返して立ち去っていった。
「……」
ボクは見えなくなるまで彼女の背中を見つめた。
「……かっこいい」
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