かわいいものが好きなボクは、ボクを否定する王子を「ざまぁ」して胸を張って生きていきます。

さくしゃ

文字の大きさ
16 / 33

大丈夫

しおりを挟む
 少し前のボクだ。

「ずっと……小さい頃からずっと好きで……」

 どれだけ勇気のいることなんだろう。自分の想いを伝えるだけ……それだけなのに、本当に伝えるとなったらーー。

「やっと想いを伝えるって覚悟が決まったのに……」

 口にする。ただそれだけがどれだけ勇気のいることか。それは関係が深ければなおさら。

「彼も私の作るお菓子が食べれるって喜んでくれたのに……」

 恋人でないとしても、好きな人と過ごす時間は何よりも幸せで言葉では表せない。

 好きな人が笑う。ただそれだけで嬉しくて。

 自分でもおかしいとわかってる。だけど、同じ感情を共有せずにはいられない。心がそれを求めてしまう。

 ボクと同じ。そう思ったら、

「ボクに任せて」

 彼女の手を握っていた。

「……」

 呆けた顔でボクを見つめるグレイスさん。

「……いやよ!なんであんたなんかに!」

 しばらくして険しい表情となりボクを睨むと、怒りの感情に任せてボクの手を強引に振りほどき、

「あんたみたいに男の格好でも女の格好でもモテる奴にわかるわけない!私の気持ちなんて!」

 自分自身に向けていた怒りの矛先をボクへと転換した。

「……」

「どうせ心の中では笑ってるくせに……!
そんなやつに誰が!」

 どうやって発散したらいいかわからない怒りをボクにぶつけることで、発散した彼女は言い終わって少しして、

「……」

 自身の口を手で覆い、バツの悪そうな表情をした。

(冷静さを取り戻したかな。それにしてもいつもなら人にここまで言われたら部屋に閉じこもりたくなるのに……)

 ボクは顔を上げて、グレイスさんと視線を交わす。

「本当に?」

 ボクから視線を逸らしたグレイスさんに、

「好きなんでしょ?」

 とボクは問う。

 そしてボクに問われる度に、苦しさを滲ませていくグレイスさんは、

「本当に諦めるの?諦められるの?」

 という最後の問いに、

「……諦めたくない」

 そう絞り出すように言った。

「なら、ボクに任せて。一緒に美味しい『ガトーショコラ』を作ろう」

 ボクはグレイスさんに笑いかけた。それに対してグレイスさんは小さく頷いた。

「でも材料が……」

 グレイスさんはキッチンの上にある残り少ない材料を指差す。

「大丈夫!板状のチョコレートが三枚、卵が三つあれば「ガトーショコラ」は作れるから」

 「キッチンの上にある材料で大丈夫」と話すと、少しだけグレイスさんの表情が明るくなった。

「って、こんなことしてる時間ない!ほらグレイスさん!こっちへ来て!」

「え、あっ、うん」

 ボクは彼女の手を握りキッチンへ向かいながら、ボクの予備のエプロンを着てもらい、

「それじゃ今から手順を説明します」

「あっ、はい。よろしくお願いします」

 調理手順の説明を始める。すると、

「押すなって!」

「おい。見えねえから前のヤツ屈んで」

 なぜか他のクラスメイト達と先生が、ボクとグレイスさんを起点にしてぐるりと囲むように並び始めた。

「板チョコ三つに、卵が三つ……と」

 先生に至っては、何やらメモを取り、真剣な眼差しをボクに向ける。

(や、やりにくい)

 みんなから見られていると思った途端、体がこわばり手に汗が滲んだ。

 急に動きを止めたボクに「どうした?」と周囲のクラスメイトたちが訝しむ。

(はぁはぁ)

 "男のくせに気色の悪いヤツだ"

 10年前のあの日、ちょうど今のようにたくさんの人がボクを囲んだ。たくさんの目にさらされた。

(はぁ!はぁ!!はぁ!!!)

 当時のことがフラッシュバックし身体が震え始める。

「ゆ、ユリウス!!」

 そのときボクの視界に慌てふためくスレインの姿が映り込んだ。

「お、おお、おちゅけ!!」

 スレインは、ボクに落ち着くようにと声をかける。

「……」

 だけど、噛みすぎて何を言っているのかわからなかった。だけど、

「……ぷっ、あははは!」

 そんな明らかにボクよりも緊張しているスレインを見ていたらおかしくて、本人には悪いけど笑ってしまった。

「わ、笑うことねえだろ!」

「ごめん。でも、ありがとう」

 スレインに感謝して、

「それではーー」

 僕は調理手順の説明を開始した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

処理中です...