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やはり……

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むにゅ……

「ん?な、なんだこの柔らかいものは……」

 むにゅむにゃむにゃむにゅ……

「まるでマシュマロのような……」

 むにゅむにゅむにゅむにゅ……

「き、きゃあああ!! 離しなさいよ、この変態!」

「へ?……へぶうう!!」

 アダムが顔を上げた瞬間、鋭い鞭打が、その頬を捉え、弾き飛ばした。

 大勢の貴族子女の群れにはねられ、私の強烈なドロップキックを喰らっていたアダムの体は限界を迎え、柔らかな黒のクッションへと顔を埋め、鼻血の池を作った。

「ちょ、だ、誰か!この変態を退かしてええ!!」

 悲痛な叫び声を上げる、ローラ。

「ひっひっひっ、私が許す!そのまま押さえ込んどけ、鼻血令息!」

 私は、ローラに歩み寄りながら愉快に笑う。

「さーて、まずは……手袋!」

 アダムに押しつぶされて身動きが取れないでいるローラの左手の長い白の手袋を手から外す。

「っ!返して!」

 助けを求めた時と打って変わり、手袋を外した瞬間、必死の形相となったローラは、アダムが邪魔で右腕だけを動かしてなんとか取り返そうとする。

「おー、メイドさんっていい匂いするんだな。さては、相当高い香水をプレゼントされていたな?」

「か、関係ないでしょ!人の匂いを嗅がないでよ!変態!」

「あー、同性なのに変態ってショックだなぁ……なら、変態の私はーーって邪魔だな。この変態」

 私は気絶するアダムを蹴ってずらし、ローラのエプロンの帯を外し、脱がせた。

 幸いにも、腰の部分から下を覆うタイプのエプロンなので、なんの抵抗も受ける事なく脱がせられた。

「っ!だめ!返して!」

 私がエプロンを取った瞬間、今度は青ざめ、さっきよりも激しくローラは腕を伸ばしてきた。

「……なるほど。おい、気絶してるから聞こえないだろうけど、お前の推理は完全に間違ってるぞ。変態令息」

「く……だ、誰の推理が間違っているだって!」

 起き上がる元気はないようだが、それでも意識だけは取り戻したアダムは、ローラの胸枕に顔を埋めたまま反論してきた。

「結論から言うと、そこの眼鏡令嬢は犯人じゃねえ」

「な、何?!なら、誰が犯人だと言うんだ!」

 ナイスリアクションのアダムに心の中で拍手を送りつつ、私はある人物を指差した。

「お前だ。好色ロリコン王子の愛人、ローラ」

「「な、彼女が!?」」

 騒然とする場内。皆の視線が一斉にローラへと注がれる。

「わ、私は彼を愛しております。それに彼も私と同じくらい私のことを……」

「ほう……それほど愛し合っていたのなら、二人の間には隠し事などなかったのか?」

「ええ。それはもちろんです」

 私の問いにきっぱりとローラは言い切った。

「それはいい事だね。何もなければ……なら、ソフィアのサプライズで照明が落とされる事を知っていた王子から、事前にその事を聞かされていたんじゃないか?」

「……いいえ」

 私を睨みつけてからローラは返事をした。

「ふーん……まあ、事前にその事を知ったあんたは、今日を犯行に選んだわけだが……あんたって普段はハウスメイド?」

「……? ええ。そうよ」

「普段から城中の掃除をしてるの?」

「ええ」

 犯人扱いされて苛つくローラは、不機嫌な顔をして答えた。

「という事は、事前にこの部屋の照明に細工することも出来たわけだ」

「そんなの一介のメイドである私が出来るはずないでしょ!この部屋の照明は魔法陣で運用されているのよ!しかも、ソフィア様が最近になってようやく完成された半永久的に自動で稼働する循環型魔法陣なのよ!そんなもの私がどうにかできるわ」

 口調を荒げていたローラだが、私が掲げた長手袋を見て言葉を詰まらせた。

「じゃあ、これはなーんだ」

「そ、それは……」

「私の想像でしかないけど、この手袋って魔法陣によって細工されているよね?」

 私が笑いかけるとローラは目線を逸らした。

「さっき、そこの変態が鼻血を噴射した瞬間に、手を顔の前に構えて防いだよな?」

「……」

「なのに、何で手袋に防いだはずの血がついていないんだ?」

「っ!」

 続けて、今度は純白のエプロンを見せる。

「そして、このエプロンの帯の部分……あれ?丁度おへその部分に、男の太い指が2本は入りそうな穴があるぞ。しかも、なぜか白いマジックテープで閉じれるようになってるぞー。おかしいなー」

「……」

 ローラは、無言で私を睨みつける。

「あとは……」

 私はローラの元へ移動し、

「ふふふ。失礼しまーす!」

 とローラの眼帯を外した。  

「や、やめ……ぎゃあああ!!」

 眼帯を外されたローラは、突然左目を押さえて苦しみ出す。

「やっぱりな……これで証拠は揃った」

 それから私はみんなに向かって話し始めた。この事件の一連の流れをーー
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