婚約破棄された私。大嫌いなアイツと婚約することに。大嫌い!だったはずなのに……。

さくしゃ

文字の大きさ
4 / 41
婚約者現る。お前かよ!

レントside

しおりを挟む
「いいか。暴れるなよ!さもなくば」

 隣に座る俺の親父ーーケントス・ロープウェイが目を血走らせてマジマジと見てくる。

「ごくっ」

 俺はそんな親父を無視してコップの水を飲み干し、ダン!と叩きつけるようにしてテーブルに置いた。

「……」

 それから「チッ!」と舌打ちをして親父を睨んだ。

"縁談だ!支度しろ!行くぞ!"

 今日の朝、鍛錬していたらいきなり近衛兵に拘束され、無理やり今いるレストランに連れてこられた。だから逃げようとしたが、

"逃げようものならお前が隠し続けている5歳の時にあった恥ずかしい出来事を王都中に知らしめるぞ"

 俺の弱みを盾にされてしまい渋々縁談の場に留まっていた。

「くっ!」

 それでもやはり怒りは収まらなかった。

「はぁ……無理やり連れてきたことは悪いと思っている。だけどな」

 俺がイライラしていると親父は申し訳なさそうにため息を吐いた後、肩をプルプル振るわせて

「毎日ように誰彼構わずに決闘をしているせいでだな!この国の第三王子にも関わらず縁談話を募っても七十代を迎えられるほとんどかんおk……御婦……ご令嬢からしか話が来ないんだぞ!」

 と怒鳴りながら親父は懐から写真の束を取り出すと

「いいのか?本当にいいのか?!」

 勢いよく俺の顔へ投げつけてきた。

(ふっ甘いな。その程度の速さが俺に当たるか)

 俺は至近距離から飛んできた写真を首を捻って回避した。が、

「……っ!」

 見えてしまった。避けた際に顔の横を通り過ぎていく瞬間にチラリと写真に写った

「親父」

 白い粉をこれでもかと塗りたくったマダム、スリムな体型が魅惑的な60代の微笑んで可愛い子犬を抱くマダム達が見えてしまった。

「なんだ?この後に及んでまさか」

 親父は俺を訝しげに見た。しかしそんな親父に構わず俺は

「俺。頑張るわ!」

 覚悟を伝えた。

「この縁談をモノにするわ!」

 そう。覚悟を。

(母親より年上と結婚してたまるくぁぁ!)

 という魂の叫びが込められた覚悟を伝えた。

「 ?  よくわからんが、その意気だ!」

 急にやる気を出した俺を見て親父は首を傾げたが、それでも俺がやる気になったのを見て嬉しそうにしていた。

(なんとしてもこの縁談をモノにしてやる!)

 親父の声援を受けてやる気をみなぎらせていると、

「失礼致します」

 ドアが開けられ今回の縁談相手が個室へと入ってきた。

「失礼致します。ブラッティー・ヴェイロン。ただいま参りました」

「おお!待っておったぞ!」

「はは。この度は我が娘とレント殿下との縁談をご了承くださりありがとうございます」

「よい。今日は無礼講だ。気にせず入って席につくが良い」

「はは!」

 そしてお決まりの挨拶が行われ辺境伯が頷くと奥方と今回の縁談相手が部屋に入ってきた。

(もうこの際だ。若けりゃなんだっていい!どんな相手だろうと婚約を決める!)

 「いざ勝負!」とゴングが鳴った気がした。気合十分!さあ、かかってこい!と心の中でファイティングポーズをとったときだった。

「これは私のわがままで申し訳ないのですが……」

 奥方の脇を通り抜けると俺の前にやってきて頭を下げようとした女を見て驚愕した。

「ちぇ」

 どんな相手だろうとこの縁談をモノにしてやると覚悟を決めていた。が、

「チェーーンジ!!」

 とまさかの相手に思わず叫んでしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)
恋愛
【あらすじ】  第一王子ヴィルヘルムに婚約破棄を宣言された公爵令嬢クリスチナ。しかし、2人の婚約は国のため、人民のためにする政略結婚を目的としたもの。  個人の意思で婚約破棄は出来ませんよ? 【楽しみ方】  笑い有り、ラブロマンス有りの勘違いコメディ作品です。ボケキャラが多数登場しますので、是非、突っ込みを入れながらお楽しみ下さい。感想欄でもお待ちしております! 突っ込み以外の真面目な感想や一言感想などもお気軽にお寄せ下さい。 【注意事項】  安心安全健全をモットーに、子供でも読める作品を目指しておりますが、物語の後半で、大人のロマンスが描写される予定です。直接的な表現は省き、詩的な表現に変換しておりますが、苦手な方はご注意頂ければと思います。  また、愛の伝道師・狸田真は、感想欄のお返事が初対面でも親友みたいな馴れ馴れしいコメントになる事がございます。ご容赦頂けると幸いです。

【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。 しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。 婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。 ーーーーーーーーー 2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました! なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!

百谷シカ
恋愛
伯爵令嬢イーリス・レントリヒは、王妃アレクサンドラの侍女として宮廷で働いている。 ぽっちゃりしていて特に美人でもないので、誰の寵愛も受けないかわりに敵もいない。 ところがある日、王妃付きのコックから賄いを都合してもらった際に、酒を拝借しにきた第二王子ヨハンに見初められてしまう。 「はぁ……可愛い。丸くて白くてぷにぷにしてて、食べちゃいたいよ」 芸術好きで戦争嫌いの平和主義者ヨハンは、イーリスの見た目から性格までとにかく大好き! ♡無欲なぽっちゃり令嬢が幸せを掴むシンデレラストーリー♡ ==================================== (他ベリーズカフェ様・野いちご様、エブリスタ様に投稿)

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

処理中です...