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婚約者現る。お前かよ!
神視点
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「なんであなたがここにいるのよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
テーブルを間に睨み合うセシルとレント。普通なら和やかなムードで進むのだが、それとは真逆のピリついた空気感が漂い始めた。
「セシルちゃん!落ち着いて!」
「レント!ハウス!」
しかし見かねたケントス国王とブラッティーが止めに入った。が
「うるさい!」
「親父は黙ってろ!」
収拾がつかず逆に火に油を注ぐ結果となり二人の炎がさらに燃え上がってしまいセシルとレントが近くのモノを手に取って相手へと投げつけようとした、ときだった。
「静まりなさい」
セシルの母ーーエミルが一喝。よく通る声だった。そこまで大きな声ではなかったにも関わらず、その場にいる者たちの耳を通って心へと響き
「……」
「……」
みな動きを止めた。そしてエミルへと視線が集まった。
「ふふ。和やかに過ごしましょうね?」
そういうとエミルは三十代とは思えない可愛らしい少女のような笑みを浮かべた。
「「「は、はいぃぃ!!」」」
しかし目が笑っていなかった。愛くるしい見た目とは打って変わって子を産んだ経験を持つ女性でもあった。
死を覚悟する痛みを乗り越えた者だからこそ醸し出せる風格と迫力に、その場にいた者たちは圧倒され、頭を垂れる形で縁談はスタートとあいなった。
(なんで国王のわしがこうべをたれてんの?)
しかしさすがは国王だ。ただ一人、この状況に疑問符を浮かべた。
………
……
…
「ふぅ……美味しかった」
セシルとレントーー2人による騒ぎから一時間。
「ごちそうさま」
最初のうちは気まずい雰囲気が流れていたが美味しい食事がやってきてお腹を満たせば不思議と皆の心に余裕ができ、
「ふぅぅ」
食後の紅茶によって張り詰めた神経も緩み、少しずつではあったが、雰囲気は和やかなものへと変わっていった。
「はぁ……いい香りね」
お湯に浸かったときのようなリラックスした状態でお茶菓子を楽しむまったりとした時間。
「はぁぁ」
レントとセシルもすっかり自身の縁談の場であることを忘れてまったりと過ごして
(は!)
(美味しい料理にすっかり忘れてたわ!)
いたのだが、
(このままじゃ)
(あいつとの婚約が決まっちまうじゃねえか!)
本能がそれを許さず、今の状況は危険なのだと警鐘を鳴らし二人は幻想の世界から抜け出した。
(それだけはなんとしても)
(阻止しなくては!)
紅茶の香りを楽しむふりをして対面に座る互いへと視線を向けた。しかし視線が交差した事に目を丸くし
「お、美味しい(何見てるのよ!)」
「いい香りだなぁ(お前こそ!)」
言葉に裏の意味を乗せて微笑んだ。(目は全く笑っていない)
(ていうか阻止するつってもどうすりゃいいんだ?)
この縁談を阻止する。と答えは出たが、具体的にどう行動するべきか全く思い浮かばないレントは頭を悩ませた。
(ねえ)
そんなレントに
(手を組まない?)
対面に座るセシルからアイコンタクトと共に協力の申し出がやってきた。
(……)
その申し出に一瞬迷いをみせたレントだったが、
(……わかった)
背に腹は変えられんと受諾した。
(で、どんな作戦があるんだ?)
これにより縁談破壊共同戦線が誕生した。
(ふふ。とっておきのがあるわ)
レントの問いにセシルはニヤリと笑った。が、
(ふふ……掌で踊らされているとも知らずに)
そんな二人を見て心の中でニヤリと得意げに笑う者が一人存在したことをセシルとレントは知らなかった。
「それはこっちのセリフだ!」
テーブルを間に睨み合うセシルとレント。普通なら和やかなムードで進むのだが、それとは真逆のピリついた空気感が漂い始めた。
「セシルちゃん!落ち着いて!」
「レント!ハウス!」
しかし見かねたケントス国王とブラッティーが止めに入った。が
「うるさい!」
「親父は黙ってろ!」
収拾がつかず逆に火に油を注ぐ結果となり二人の炎がさらに燃え上がってしまいセシルとレントが近くのモノを手に取って相手へと投げつけようとした、ときだった。
「静まりなさい」
セシルの母ーーエミルが一喝。よく通る声だった。そこまで大きな声ではなかったにも関わらず、その場にいる者たちの耳を通って心へと響き
「……」
「……」
みな動きを止めた。そしてエミルへと視線が集まった。
「ふふ。和やかに過ごしましょうね?」
そういうとエミルは三十代とは思えない可愛らしい少女のような笑みを浮かべた。
「「「は、はいぃぃ!!」」」
しかし目が笑っていなかった。愛くるしい見た目とは打って変わって子を産んだ経験を持つ女性でもあった。
死を覚悟する痛みを乗り越えた者だからこそ醸し出せる風格と迫力に、その場にいた者たちは圧倒され、頭を垂れる形で縁談はスタートとあいなった。
(なんで国王のわしがこうべをたれてんの?)
しかしさすがは国王だ。ただ一人、この状況に疑問符を浮かべた。
………
……
…
「ふぅ……美味しかった」
セシルとレントーー2人による騒ぎから一時間。
「ごちそうさま」
最初のうちは気まずい雰囲気が流れていたが美味しい食事がやってきてお腹を満たせば不思議と皆の心に余裕ができ、
「ふぅぅ」
食後の紅茶によって張り詰めた神経も緩み、少しずつではあったが、雰囲気は和やかなものへと変わっていった。
「はぁ……いい香りね」
お湯に浸かったときのようなリラックスした状態でお茶菓子を楽しむまったりとした時間。
「はぁぁ」
レントとセシルもすっかり自身の縁談の場であることを忘れてまったりと過ごして
(は!)
(美味しい料理にすっかり忘れてたわ!)
いたのだが、
(このままじゃ)
(あいつとの婚約が決まっちまうじゃねえか!)
本能がそれを許さず、今の状況は危険なのだと警鐘を鳴らし二人は幻想の世界から抜け出した。
(それだけはなんとしても)
(阻止しなくては!)
紅茶の香りを楽しむふりをして対面に座る互いへと視線を向けた。しかし視線が交差した事に目を丸くし
「お、美味しい(何見てるのよ!)」
「いい香りだなぁ(お前こそ!)」
言葉に裏の意味を乗せて微笑んだ。(目は全く笑っていない)
(ていうか阻止するつってもどうすりゃいいんだ?)
この縁談を阻止する。と答えは出たが、具体的にどう行動するべきか全く思い浮かばないレントは頭を悩ませた。
(ねえ)
そんなレントに
(手を組まない?)
対面に座るセシルからアイコンタクトと共に協力の申し出がやってきた。
(……)
その申し出に一瞬迷いをみせたレントだったが、
(……わかった)
背に腹は変えられんと受諾した。
(で、どんな作戦があるんだ?)
これにより縁談破壊共同戦線が誕生した。
(ふふ。とっておきのがあるわ)
レントの問いにセシルはニヤリと笑った。が、
(ふふ……掌で踊らされているとも知らずに)
そんな二人を見て心の中でニヤリと得意げに笑う者が一人存在したことをセシルとレントは知らなかった。
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