21 / 41
決意……しかし
セシルside
しおりを挟む
あれからどれくらい経ったのか、空が紅く染まっていた。
「帰るよ」
「はーい」
公園で友人と話し込む主婦たちが子供を連れて家路へとつき
「ウィィ……イエス!ワンカ〇〇!」
「はぁぁ……やめられないの?そう止まらないの、ならしょうがない!ワンカ〇〇ぅぅ!」
お酒を片手に奇声を上げるおじさんたちと
「はぁぁ……」
ため息をついてボーッと。
(お店を出たのがお昼過ぎだったから……3時間くらい?)
ベンチに腰掛けてただボーッと夕陽を眺める私だけだった。春になったとはいえまだまだ夕方はどこか冬の寒さが残っていて日が沈むたびに昼間の暖かさが嘘のように消えていった。
「はぁ……何してるんだろ私」
良い子は風邪をひかないように早く帰らなきゃいけないというのに私の身体はちっとも動こうとしなかった。なぜなら今の私は
(ああもう!なんで切り替えられないかな!)
意識をコントロールしようとするのだけど大嵐の中を進む船の舵が人の力では操作できないように
(レント。楽しそうに話してたな)
逆に意識に囚われてしまっていた。
(私の時と違って……)
昨日のことだって……わ、私レントにき、キスしちゃってたし。
「はぁぁ……」
ため息しか出ない。レントに対するこの想いって
"任せろ"
その顔が、声がよぎるたびに
"ハモったな"
嬉しくて、恥ずかしくて、苦しい。この思いって……クリスの時はこんなことなかった。
"キャサリン"
他の人じゃなくて私にだけあの笑顔を見せてほしい。そんな想いまで出てきてしまって
「これじゃまるで私、レントのこと……」
途中で止めた。なぜか言葉が出てこなくて頬がすごく熱い。
(そ、そんなわけないよ!だって相手はあの)
そして顔を思い浮かべると高熱で頭がボーッとするみたいに
"セシル"
私の名前を呼ぶレントの妄想に夢中になった。
「な、何かの間違い」
それでもやっぱり素直になれなくて認められなかった。
「いた!」
しかし夕日が完全に沈むと同時に
「セシル!」
汗だくで息もたえだえのレントが私の方へ走ってきた。
「れ、レント!」
なんでレントがここのいるのかわからず私は困惑した。しかしレントは私の前にやってくると
「見つかった!」
笑顔を浮かべて私を抱きしめた。
「えっ……ええええ!!」
優しく。
「よかったぁ!」
私の耳元で囁いた。瞬間、
(ちょ、い、今はタイミング的によくないってェェェ!)
突然の出来事の連続に戸惑い状況整理をしようとしたが思考が追いつかずショートしてしまい叫ぶのと同時に考えるのを止めた。そんな私は
(……まあ、レントだし仕方ないか)
流れに身を任せることにした。それになんだろう。
(ああ)
レントの腕の中にいるとだんだんモヤモヤしていたことが馬鹿馬鹿しくなって、
(安心する)
少し前まで感じていたイライラがサッと消えてしまった。そうしてただただレントの腕の中を満喫し、
(好きだなぁ)
ここは誰にも譲りたくない。私の場所にしたいとレントには勝手ながら思ってしまった。
「帰るよ」
「はーい」
公園で友人と話し込む主婦たちが子供を連れて家路へとつき
「ウィィ……イエス!ワンカ〇〇!」
「はぁぁ……やめられないの?そう止まらないの、ならしょうがない!ワンカ〇〇ぅぅ!」
お酒を片手に奇声を上げるおじさんたちと
「はぁぁ……」
ため息をついてボーッと。
(お店を出たのがお昼過ぎだったから……3時間くらい?)
ベンチに腰掛けてただボーッと夕陽を眺める私だけだった。春になったとはいえまだまだ夕方はどこか冬の寒さが残っていて日が沈むたびに昼間の暖かさが嘘のように消えていった。
「はぁ……何してるんだろ私」
良い子は風邪をひかないように早く帰らなきゃいけないというのに私の身体はちっとも動こうとしなかった。なぜなら今の私は
(ああもう!なんで切り替えられないかな!)
意識をコントロールしようとするのだけど大嵐の中を進む船の舵が人の力では操作できないように
(レント。楽しそうに話してたな)
逆に意識に囚われてしまっていた。
(私の時と違って……)
昨日のことだって……わ、私レントにき、キスしちゃってたし。
「はぁぁ……」
ため息しか出ない。レントに対するこの想いって
"任せろ"
その顔が、声がよぎるたびに
"ハモったな"
嬉しくて、恥ずかしくて、苦しい。この思いって……クリスの時はこんなことなかった。
"キャサリン"
他の人じゃなくて私にだけあの笑顔を見せてほしい。そんな想いまで出てきてしまって
「これじゃまるで私、レントのこと……」
途中で止めた。なぜか言葉が出てこなくて頬がすごく熱い。
(そ、そんなわけないよ!だって相手はあの)
そして顔を思い浮かべると高熱で頭がボーッとするみたいに
"セシル"
私の名前を呼ぶレントの妄想に夢中になった。
「な、何かの間違い」
それでもやっぱり素直になれなくて認められなかった。
「いた!」
しかし夕日が完全に沈むと同時に
「セシル!」
汗だくで息もたえだえのレントが私の方へ走ってきた。
「れ、レント!」
なんでレントがここのいるのかわからず私は困惑した。しかしレントは私の前にやってくると
「見つかった!」
笑顔を浮かべて私を抱きしめた。
「えっ……ええええ!!」
優しく。
「よかったぁ!」
私の耳元で囁いた。瞬間、
(ちょ、い、今はタイミング的によくないってェェェ!)
突然の出来事の連続に戸惑い状況整理をしようとしたが思考が追いつかずショートしてしまい叫ぶのと同時に考えるのを止めた。そんな私は
(……まあ、レントだし仕方ないか)
流れに身を任せることにした。それになんだろう。
(ああ)
レントの腕の中にいるとだんだんモヤモヤしていたことが馬鹿馬鹿しくなって、
(安心する)
少し前まで感じていたイライラがサッと消えてしまった。そうしてただただレントの腕の中を満喫し、
(好きだなぁ)
ここは誰にも譲りたくない。私の場所にしたいとレントには勝手ながら思ってしまった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません
狸田 真 (たぬきだ まこと)
恋愛
【あらすじ】
第一王子ヴィルヘルムに婚約破棄を宣言された公爵令嬢クリスチナ。しかし、2人の婚約は国のため、人民のためにする政略結婚を目的としたもの。
個人の意思で婚約破棄は出来ませんよ?
【楽しみ方】
笑い有り、ラブロマンス有りの勘違いコメディ作品です。ボケキャラが多数登場しますので、是非、突っ込みを入れながらお楽しみ下さい。感想欄でもお待ちしております! 突っ込み以外の真面目な感想や一言感想などもお気軽にお寄せ下さい。
【注意事項】
安心安全健全をモットーに、子供でも読める作品を目指しておりますが、物語の後半で、大人のロマンスが描写される予定です。直接的な表現は省き、詩的な表現に変換しておりますが、苦手な方はご注意頂ければと思います。
また、愛の伝道師・狸田真は、感想欄のお返事が初対面でも親友みたいな馴れ馴れしいコメントになる事がございます。ご容赦頂けると幸いです。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
ぽっちゃり令嬢に王子が夢中!
百谷シカ
恋愛
伯爵令嬢イーリス・レントリヒは、王妃アレクサンドラの侍女として宮廷で働いている。
ぽっちゃりしていて特に美人でもないので、誰の寵愛も受けないかわりに敵もいない。
ところがある日、王妃付きのコックから賄いを都合してもらった際に、酒を拝借しにきた第二王子ヨハンに見初められてしまう。
「はぁ……可愛い。丸くて白くてぷにぷにしてて、食べちゃいたいよ」
芸術好きで戦争嫌いの平和主義者ヨハンは、イーリスの見た目から性格までとにかく大好き!
♡無欲なぽっちゃり令嬢が幸せを掴むシンデレラストーリー♡
====================================
(他ベリーズカフェ様・野いちご様、エブリスタ様に投稿)
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる