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最終章
神視点
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「すんばらしいわ!サ、す……せ?とにかくにあなた素晴らしいわ!」
自分の名前に対しては敏感なピエール先生だが生徒の名前だけは絶対に覚えない。だけど「ダンスは自由」というくらい型にはめようとしないいい先生でもある。だから
「いい!ダンスはね、じっゆぅぅぅなのよ!じっゆぅぅぅ!にね形にこだわらずに表現しなさい!」
セシルの音感の無さに気づいていながらもそれを無理やり矯正することなくとにかく褒めた。少しでも楽しんでほしいから。
「ピエール先生……わかりました!」
「良い返事よ!か、す?名前なんだっけさん!」
しかし生徒の名前だけは何があっても覚えない!先生だが、その優しさがダンスホールを初夏の草原のような爽やかでのほほんとした平和な雰囲気をかもし出していた。が、
「ちょっと外に出てきます」
ダンスパートナーのルイーズがいなくなったのをいいことに
「バカもの!」
空気を読まないバカ王……失礼。クリスがとりまきを引き連れ、ピエール先生へと迫った。
「ダンスとは決められた型をどれだけ美しく踊れるかというものだ!それなのに貴様は……クビだ!今この瞬間からダンスは僕が教える!」
そして見下すようにして唐突に解雇を通達した。
「……は?」
突然の解雇通達に
「え?」
ダンスホールにいる者たちは呆気に取られた。
「聞き間違いでしょうか殿下。私にクビとおっしゃいましたか?」
それからしばらくしてピエール先生は聞き返した。クリスが話した内容は理解していた。けど、もしかしたら聞き間違いではないか、いや聞き間違いであってくれと願って。
「ああ。言った」
しかしそんな願望も自分至上主義であるクリスの前では打ち砕かれ砂塵と化し、
「おい。お前はクビになったんだ。いつまで学院にいるつもりだ?さっさと出ていけ」
理不尽というナイフが無情にもピエール先生の心に突き立てられた。が、
「いや、いやいや!それはおかしい!」
それでもピエール先生はクリスの横暴に一歩も引く気はみせなかった。
「いくら王太子といえど学院の人事権を有しているのは国王陛下のみです!」
それは教師として生徒の間違いをただし諭すという使命感もあった。それに何より新学期に入ってからというものクリスの横暴に耐えかねて辞めていった教師があとをたたなかった。
「ですのであなたに教師をヒメンする権限なんてない!」
だからもう被害者を出さないためにも、ここで食い止めたかった。
「そんなもの知るか!おい。つまみ出せ」
しかしやはり自分主義のクリスにとって定められたものがルールではなく、
「は、放して!」
自分自身が思ったこと全てがその他大勢が従うべきルールになるというぶっ飛んだ考えを持っているため響くことはなく、ピエール先生はクリスの取り巻き達によって腕を掴まれ引きずられていく。
「こ、こんな横暴が許されていいはずがない!」
「は!許すも許さぬも僕は王太子だ!この国の法律を変える権力(ちから)を持つ人間だ!すなわち僕自身がルールだ!」
結局、現実というものはいつだって権力(ちから)を持つ者だけが思いのままに生きられる。淡い期待を抱くだけ無意味というもの。しかし
「なわけねえだろ!」
現実とは不思議なものでごくたまに本当にごくたまに心の底から感謝したくなるほどの飴という希望をくれる時がある。だからだろうか
「ぐえええ!」
人は無意味とわかっていても未来に期待して祈ってしまう。そして今日はピエール先生の信念に対して女神が微笑み救いの手を差し伸べた。
「ピエール先生を放しなさい!」
まずレントが容赦なくクリスの顔面にキックをめり込ませ鼻血ブー。鮮血が舞う中でピエール先生を拘束しているクリスの取り巻きたちをセシルが足を蹴って転ばせて助け出した。
「あなた達!」
自分の名前に対しては敏感なピエール先生だが生徒の名前だけは絶対に覚えない。だけど「ダンスは自由」というくらい型にはめようとしないいい先生でもある。だから
「いい!ダンスはね、じっゆぅぅぅなのよ!じっゆぅぅぅ!にね形にこだわらずに表現しなさい!」
セシルの音感の無さに気づいていながらもそれを無理やり矯正することなくとにかく褒めた。少しでも楽しんでほしいから。
「ピエール先生……わかりました!」
「良い返事よ!か、す?名前なんだっけさん!」
しかし生徒の名前だけは何があっても覚えない!先生だが、その優しさがダンスホールを初夏の草原のような爽やかでのほほんとした平和な雰囲気をかもし出していた。が、
「ちょっと外に出てきます」
ダンスパートナーのルイーズがいなくなったのをいいことに
「バカもの!」
空気を読まないバカ王……失礼。クリスがとりまきを引き連れ、ピエール先生へと迫った。
「ダンスとは決められた型をどれだけ美しく踊れるかというものだ!それなのに貴様は……クビだ!今この瞬間からダンスは僕が教える!」
そして見下すようにして唐突に解雇を通達した。
「……は?」
突然の解雇通達に
「え?」
ダンスホールにいる者たちは呆気に取られた。
「聞き間違いでしょうか殿下。私にクビとおっしゃいましたか?」
それからしばらくしてピエール先生は聞き返した。クリスが話した内容は理解していた。けど、もしかしたら聞き間違いではないか、いや聞き間違いであってくれと願って。
「ああ。言った」
しかしそんな願望も自分至上主義であるクリスの前では打ち砕かれ砂塵と化し、
「おい。お前はクビになったんだ。いつまで学院にいるつもりだ?さっさと出ていけ」
理不尽というナイフが無情にもピエール先生の心に突き立てられた。が、
「いや、いやいや!それはおかしい!」
それでもピエール先生はクリスの横暴に一歩も引く気はみせなかった。
「いくら王太子といえど学院の人事権を有しているのは国王陛下のみです!」
それは教師として生徒の間違いをただし諭すという使命感もあった。それに何より新学期に入ってからというものクリスの横暴に耐えかねて辞めていった教師があとをたたなかった。
「ですのであなたに教師をヒメンする権限なんてない!」
だからもう被害者を出さないためにも、ここで食い止めたかった。
「そんなもの知るか!おい。つまみ出せ」
しかしやはり自分主義のクリスにとって定められたものがルールではなく、
「は、放して!」
自分自身が思ったこと全てがその他大勢が従うべきルールになるというぶっ飛んだ考えを持っているため響くことはなく、ピエール先生はクリスの取り巻き達によって腕を掴まれ引きずられていく。
「こ、こんな横暴が許されていいはずがない!」
「は!許すも許さぬも僕は王太子だ!この国の法律を変える権力(ちから)を持つ人間だ!すなわち僕自身がルールだ!」
結局、現実というものはいつだって権力(ちから)を持つ者だけが思いのままに生きられる。淡い期待を抱くだけ無意味というもの。しかし
「なわけねえだろ!」
現実とは不思議なものでごくたまに本当にごくたまに心の底から感謝したくなるほどの飴という希望をくれる時がある。だからだろうか
「ぐえええ!」
人は無意味とわかっていても未来に期待して祈ってしまう。そして今日はピエール先生の信念に対して女神が微笑み救いの手を差し伸べた。
「ピエール先生を放しなさい!」
まずレントが容赦なくクリスの顔面にキックをめり込ませ鼻血ブー。鮮血が舞う中でピエール先生を拘束しているクリスの取り巻きたちをセシルが足を蹴って転ばせて助け出した。
「あなた達!」
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