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決闘②
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決闘②
マイクside
「おい……」
「嘘だろ」
戦いが始まる前の楽しげな雰囲気はどこへやら
「あのマイク様が」
「押されてる」
静まり返った使用人達の視線の先では、
「フラッシュ(神速の突き)!」
「ぐぅぅ」
覚醒したオリビアにマイクが追い詰められていた。
"お前にハンデをやる。俺はここから一歩も動かない。それと利き手の右も使わずに左手のみで大剣を操り戦ってやろう"
(くそ)
"そうか。なら、その案を採用してやる"
(くそ!)
そして「この俺が負けるなんて天地がひっくり返ってもありえない」と思い、オリビアとの真剣勝負ですら「見せ物」と位置付けハンデと称して「動かない」「利き手不使用」「両目を閉じる」を宣言し実行したマイクだったが蓋を開けてみれば、
(懐に飛び込んできた!普通の突きか?それとも見えない突きか?)
覚醒したオリビアの始めの一撃で驚きとともに両目を開き、
(普通の突き!これを後ろに下がって避ける!)
2突き目が繰り出される直前に大剣を両手で持ち横へずれることでなんとか被弾を免れた。しかしそれから5分ーーマイクは普通の突き、神速の突き、フェイントなどのオリビアがこれまでに積み上げてきた実力に防戦一方となっていた。その現状は、
(くそ!!)
マイクのプライドを大きく傷つけた。さらにこれまで戦う中で追い込まれ成長した 多くの敵を屠ってきた。が、ここ10年は戦いらしい戦いもなく大剣すら握っていなかったこと、もともと鍛錬などすることもなく才能任せだったこともあり
(あたれ!あたれ!)
イメージは全盛期の頃の動きを思い描くが
(くそ!外れた!)
現実はイメージ通りにいかず衰えが顕著であり恵まれた肉体が繰り出すスピード、絶大なパワー任せの攻撃は見る影もなく
(はぁはぁ……何で当たらな……ゼェゼェ)
大剣は一回に二度しか振えず、三日三晩戦えた無尽蔵の体力も5分動いた程度で息が上がってしまうほどに弱体化していた。
(ぅ!見えない突きを警戒するあまり普通の突きに被弾しちまった。くそ!)
その事実に大きく傷つくとともに
(このままじゃ……)
マイクの本能が警鐘を鳴らした。「このままじゃ負ける」と。
(嫌だ)
「力」が全てを手にしたマイクだからこそ「負ける」ということがどんな結果を自身にもたらすのか理解している。
(嫌だ!)
では、その結果とは何かーー決闘で身分や権力を掛けていない以上、それらを失うことはない。しかしそれ以上にマイクが失うのを恐れているこは全盛期時に積み上げた名誉だった。
(それを失えば俺は……)
実のところ自己中心的なマイクのことをよく思っていない人間は大勢いる。マイクを担ぎ上げようとする貴族、協力している商会、領民や使用人や騎士達ーーでは嫌う彼の元に集まっているのは「王国最強」という名誉(肩書き)があるから。
(嫌だ!)
逆を言えばそれしかなかった。そして彼は知っていた。どんなに金や権力があったとしても動いてくれる人間がいなければ何もできないということを。人の繋がりが生み出す力の強大さを。
(嫌だ!!)
故に「負ける」ということに対してとてつもない恐怖を抱くマイクは悲惨な未来を回避すべく、
「フラッシュ(神速の突き)」
自身に迫る見えない速さの突きを
「ぐあああ!」
自身の体を覆い隠す大剣を縦代わりにすることで防いだ。そして
「死ね!」
突きを防がれたことでレイピアを見つめ呆然と立ち尽くすオリビアに向けて上段から大剣を振り下ろした。
「っ!」
一瞬の隙を見せたオリビアだったがマイクの斬撃をサイドステップで右へ回避し難を逃れた。が、人外クラスの攻撃力だけは健在のままで
「ぐっ!」
地面に衝突した斬撃の余波で10メートル吹き飛ばされると地面を転がり木にぶつかった。その衝撃で肋骨2本にヒビが入った。さらに脳が揺れ視界が定まらず身体を覆う結界が大きく損傷し一撃すら回避を誤れば敗北どころか「死」という結末が待っている状態に。まさに一発逆転。一気にマイクが優勢となった。
「はは……はははは!」
そして脳しんとうにより動けないオリビアの現状を考えれば"詰み"であった。生かすも殺すもマイク次第となった状況で
「はははは!あんなに努力してきたくせに無様だなぁ!」
マイクのとった行動は、
「おい、どんな気分だ?積み上げてきたものが一切通じずに何の努力もせずに才能だけで強くなる俺ーー天才に負ける気分ってどんなだ?ん?」
自分を追い詰め無様な姿を晒すことになってしまった元凶であるオリビアの心を壊しトドメを刺すというものだった。
オルナside
「いいか?大事なのは課程じゃねえ。結果なんだよ!」
何度も見てきた光景だった。
「努力したってな。結果が出せなきゃ意味ねえんだよ!」
母として止めるべきなのはわかっている。ただ私は彼ーーマイクが怖くて仕方ない。
"わかったのかよ?あ?オルナァ!"
自分以外の存在を何とも思っていない彼のことが怖くてたまらない。だから私は彼の怒りの矛先が私に向かないように
「オルナァ!コイツって毎日どんだけの鍛えてんだ?」
他者ーーオリビアへ逸らし続ける。これから先もずっと……彼が死んで解放されるまで。
「はい。朝5時から素振りを一万回。ランニングを40キロメートル。勉強三時間。模擬試合を三時間の後に素振りを一万回とランニング30キロメートルを毎日休まずに行っています『自分の信じた道をただまっすぐと進むだけ』と口にしながら」
だからありがとう。オリビア。私の代わりになってくれて。あなたを産んで本当によかった。
マイクside
オルナがそういうと、
「よくやった」
と俺が満足気に頷くと一歩下がり使用人達の中に消えた。
「すごい努力だ。本当にすげえわ」
それから俺はオリビアを見て
「自分を信じるとかっていうのはダセエけど」
笑った。心の底からおかしくて、哀れで、
「誰にも真似できんねえ……えらい!よく頑張った!」
ああ、やっぱりいいなぁ。努力なんて馬鹿みたいなことをする人間を否定すんのは。
「……で、そんなに努力してんのに鍛錬してない俺に勝てないの?」
爽快だ。だって俺がこう口にするだけで、
「そう……だよな」
「どんなに頑張ったって」
「どうせ失敗するだけだ」
周囲の人間は諦めてくれる。諦めて俺のいうことだけを聞くようになる。
ああ。最高だ。そうだお前達が頑張ったところで何もできはしない。だから諦めて俺の命令にだけ従っていろ。
だから生贄になってくれたオリビアに感謝しつつ無様な姿をさらす結果になってしまった元凶へ溜まったフラストレーションをぶつけるために
「よくよく考えたら別にお前を使わなくても妹のエレナをお前として差し出しゃいい話だったわ。ということでお前が存在してると都合が悪いから消え……っ!」
大剣を振り上げた時だった。俺の身体を悪寒が襲った。そして本能が告げた。
ーー攻撃がくる、防げ。
俺はそれに従い急いで大剣の切先を地面に刺して剣身に隠れた。
「フラッシュ(神速の突き)」
そしてその直後オリビアの声とともに音を置き去りにする雷のようにとんでもない衝撃が両手をつたって全身を駆け巡ると遅れて「ガァァァン!」という鉄と鉄がぶつかる甲高い衝突音が辺りにこだました。
(あ、危なかった……)
冷や汗が額から滲み出た。
(後一歩反応が遅れていたら)
額に滲んだ汗は頬をつたってシャツに吸収された。
(やられてた)
そして攻撃が来ないことを確認すると盾代わりの剣身から顔を出した。
「ま、まだまだ」
立っているのもやっとといった感じのオリビがレイピアを構えてまっすぐと俺を見据えていた。虚な視線で。
「っ!」
オリビアからまっすぐと向けられる視線に俺は臆し一歩後ずさってしまった。
(お、俺が気圧された?コイツに?この死に体のやつに?)
覚悟の違いを見せつけられたような気がした。
(ふ、ふざけるな!負けたら俺は築き上げたもの全てを失う、失ってしまう!俺の方が重圧と戦っている!なのに、なのに!そんな俺よりもお前の覚悟の方が上だと……ふざけるな、ふざけるなよ!)
俺が他者を見下すことはあっても他者が俺を見下すんじゃねえ!ーー怒りの炎が燃え上がり恐怖にたじろいだ身体に力がみなぎった。
マイクside
「おい……」
「嘘だろ」
戦いが始まる前の楽しげな雰囲気はどこへやら
「あのマイク様が」
「押されてる」
静まり返った使用人達の視線の先では、
「フラッシュ(神速の突き)!」
「ぐぅぅ」
覚醒したオリビアにマイクが追い詰められていた。
"お前にハンデをやる。俺はここから一歩も動かない。それと利き手の右も使わずに左手のみで大剣を操り戦ってやろう"
(くそ)
"そうか。なら、その案を採用してやる"
(くそ!)
そして「この俺が負けるなんて天地がひっくり返ってもありえない」と思い、オリビアとの真剣勝負ですら「見せ物」と位置付けハンデと称して「動かない」「利き手不使用」「両目を閉じる」を宣言し実行したマイクだったが蓋を開けてみれば、
(懐に飛び込んできた!普通の突きか?それとも見えない突きか?)
覚醒したオリビアの始めの一撃で驚きとともに両目を開き、
(普通の突き!これを後ろに下がって避ける!)
2突き目が繰り出される直前に大剣を両手で持ち横へずれることでなんとか被弾を免れた。しかしそれから5分ーーマイクは普通の突き、神速の突き、フェイントなどのオリビアがこれまでに積み上げてきた実力に防戦一方となっていた。その現状は、
(くそ!!)
マイクのプライドを大きく傷つけた。さらにこれまで戦う中で追い込まれ成長した 多くの敵を屠ってきた。が、ここ10年は戦いらしい戦いもなく大剣すら握っていなかったこと、もともと鍛錬などすることもなく才能任せだったこともあり
(あたれ!あたれ!)
イメージは全盛期の頃の動きを思い描くが
(くそ!外れた!)
現実はイメージ通りにいかず衰えが顕著であり恵まれた肉体が繰り出すスピード、絶大なパワー任せの攻撃は見る影もなく
(はぁはぁ……何で当たらな……ゼェゼェ)
大剣は一回に二度しか振えず、三日三晩戦えた無尽蔵の体力も5分動いた程度で息が上がってしまうほどに弱体化していた。
(ぅ!見えない突きを警戒するあまり普通の突きに被弾しちまった。くそ!)
その事実に大きく傷つくとともに
(このままじゃ……)
マイクの本能が警鐘を鳴らした。「このままじゃ負ける」と。
(嫌だ)
「力」が全てを手にしたマイクだからこそ「負ける」ということがどんな結果を自身にもたらすのか理解している。
(嫌だ!)
では、その結果とは何かーー決闘で身分や権力を掛けていない以上、それらを失うことはない。しかしそれ以上にマイクが失うのを恐れているこは全盛期時に積み上げた名誉だった。
(それを失えば俺は……)
実のところ自己中心的なマイクのことをよく思っていない人間は大勢いる。マイクを担ぎ上げようとする貴族、協力している商会、領民や使用人や騎士達ーーでは嫌う彼の元に集まっているのは「王国最強」という名誉(肩書き)があるから。
(嫌だ!)
逆を言えばそれしかなかった。そして彼は知っていた。どんなに金や権力があったとしても動いてくれる人間がいなければ何もできないということを。人の繋がりが生み出す力の強大さを。
(嫌だ!!)
故に「負ける」ということに対してとてつもない恐怖を抱くマイクは悲惨な未来を回避すべく、
「フラッシュ(神速の突き)」
自身に迫る見えない速さの突きを
「ぐあああ!」
自身の体を覆い隠す大剣を縦代わりにすることで防いだ。そして
「死ね!」
突きを防がれたことでレイピアを見つめ呆然と立ち尽くすオリビアに向けて上段から大剣を振り下ろした。
「っ!」
一瞬の隙を見せたオリビアだったがマイクの斬撃をサイドステップで右へ回避し難を逃れた。が、人外クラスの攻撃力だけは健在のままで
「ぐっ!」
地面に衝突した斬撃の余波で10メートル吹き飛ばされると地面を転がり木にぶつかった。その衝撃で肋骨2本にヒビが入った。さらに脳が揺れ視界が定まらず身体を覆う結界が大きく損傷し一撃すら回避を誤れば敗北どころか「死」という結末が待っている状態に。まさに一発逆転。一気にマイクが優勢となった。
「はは……はははは!」
そして脳しんとうにより動けないオリビアの現状を考えれば"詰み"であった。生かすも殺すもマイク次第となった状況で
「はははは!あんなに努力してきたくせに無様だなぁ!」
マイクのとった行動は、
「おい、どんな気分だ?積み上げてきたものが一切通じずに何の努力もせずに才能だけで強くなる俺ーー天才に負ける気分ってどんなだ?ん?」
自分を追い詰め無様な姿を晒すことになってしまった元凶であるオリビアの心を壊しトドメを刺すというものだった。
オルナside
「いいか?大事なのは課程じゃねえ。結果なんだよ!」
何度も見てきた光景だった。
「努力したってな。結果が出せなきゃ意味ねえんだよ!」
母として止めるべきなのはわかっている。ただ私は彼ーーマイクが怖くて仕方ない。
"わかったのかよ?あ?オルナァ!"
自分以外の存在を何とも思っていない彼のことが怖くてたまらない。だから私は彼の怒りの矛先が私に向かないように
「オルナァ!コイツって毎日どんだけの鍛えてんだ?」
他者ーーオリビアへ逸らし続ける。これから先もずっと……彼が死んで解放されるまで。
「はい。朝5時から素振りを一万回。ランニングを40キロメートル。勉強三時間。模擬試合を三時間の後に素振りを一万回とランニング30キロメートルを毎日休まずに行っています『自分の信じた道をただまっすぐと進むだけ』と口にしながら」
だからありがとう。オリビア。私の代わりになってくれて。あなたを産んで本当によかった。
マイクside
オルナがそういうと、
「よくやった」
と俺が満足気に頷くと一歩下がり使用人達の中に消えた。
「すごい努力だ。本当にすげえわ」
それから俺はオリビアを見て
「自分を信じるとかっていうのはダセエけど」
笑った。心の底からおかしくて、哀れで、
「誰にも真似できんねえ……えらい!よく頑張った!」
ああ、やっぱりいいなぁ。努力なんて馬鹿みたいなことをする人間を否定すんのは。
「……で、そんなに努力してんのに鍛錬してない俺に勝てないの?」
爽快だ。だって俺がこう口にするだけで、
「そう……だよな」
「どんなに頑張ったって」
「どうせ失敗するだけだ」
周囲の人間は諦めてくれる。諦めて俺のいうことだけを聞くようになる。
ああ。最高だ。そうだお前達が頑張ったところで何もできはしない。だから諦めて俺の命令にだけ従っていろ。
だから生贄になってくれたオリビアに感謝しつつ無様な姿をさらす結果になってしまった元凶へ溜まったフラストレーションをぶつけるために
「よくよく考えたら別にお前を使わなくても妹のエレナをお前として差し出しゃいい話だったわ。ということでお前が存在してると都合が悪いから消え……っ!」
大剣を振り上げた時だった。俺の身体を悪寒が襲った。そして本能が告げた。
ーー攻撃がくる、防げ。
俺はそれに従い急いで大剣の切先を地面に刺して剣身に隠れた。
「フラッシュ(神速の突き)」
そしてその直後オリビアの声とともに音を置き去りにする雷のようにとんでもない衝撃が両手をつたって全身を駆け巡ると遅れて「ガァァァン!」という鉄と鉄がぶつかる甲高い衝突音が辺りにこだました。
(あ、危なかった……)
冷や汗が額から滲み出た。
(後一歩反応が遅れていたら)
額に滲んだ汗は頬をつたってシャツに吸収された。
(やられてた)
そして攻撃が来ないことを確認すると盾代わりの剣身から顔を出した。
「ま、まだまだ」
立っているのもやっとといった感じのオリビがレイピアを構えてまっすぐと俺を見据えていた。虚な視線で。
「っ!」
オリビアからまっすぐと向けられる視線に俺は臆し一歩後ずさってしまった。
(お、俺が気圧された?コイツに?この死に体のやつに?)
覚悟の違いを見せつけられたような気がした。
(ふ、ふざけるな!負けたら俺は築き上げたもの全てを失う、失ってしまう!俺の方が重圧と戦っている!なのに、なのに!そんな俺よりもお前の覚悟の方が上だと……ふざけるな、ふざけるなよ!)
俺が他者を見下すことはあっても他者が俺を見下すんじゃねえ!ーー怒りの炎が燃え上がり恐怖にたじろいだ身体に力がみなぎった。
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