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決闘③
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決闘③
オリビアside
「ふん。そんな立ってるのもやっとの状態で俺に勝てると思ってるのか?」
大剣の切先を私に向けたまま吐き捨てるように父ーーマイクが言った。苦虫を噛み潰したような忌々しそうな顔で。
(ああ、痛いなぁ)
息をする時に膨らんだ肺が折れた肋骨を圧迫して、その度にピリピリとした電気が全身を巡った。
(全身打撲に、至る所内出血……何でこんな状態で私立ててるの?)
本当はそのまま眠りたかった。
(ああ。あのまま眠ったら楽だったろうなぁ)
楽になりたかった。けど、
"自分を信じるとかっていうのはダセぇけど"
聞き捨てならなかった。本当は辛くてやめたくて……それでも人より何倍も努力しなくては父……いや、マイクに追い越すことなんてできないことはわかっていたから。そんな私を支えてくれた言葉だった。
「おい。そんな目を俺に向けんじゃねえ」
マイクが吠えた。
「さっさと諦めろ!」
鋭い視線を私に向けて。
「いいか?お前みたいのがどんなに努力したって俺に勝つことなんてできねえんだよ!」
でも私は関係なくマイクへと歩を進めた。その度にマイクは吠えながら一歩一歩と下がった。
(あんなことを言われたら)
私は、
「来るな!来るんじゃねぇぇ!」
屋敷の壁にまで追い詰めたマイクを、マイクが向ける大剣を見て
「ふふ」
笑った。
『自分が信じた道をただまっすぐと進むだけだ』
たとえ可能性が1%しかないとしてもラルクならきっと迷わずに進む。
不意に浮かんだラルクの笑った顔に釣られて
「ふふ」
私は笑った。
(いつのまにか私を前に向かせてくれる言葉になってたな。それをあんな風に言われたら黙っていられない)
そうして私は身体に残った最後の力を振り絞ると
「フラッシュ・バレット(連続する神速の突き)」
マイクに向けて爆発させた。
マイクside
「フラッシュ・バレット(連続する神速の突き)」
見えない突きが雨のように俺に降り注いだ。
(最後の搾りカスだ!これを耐えれば)
その雨は大粒というよりは小さな粒だった。
「ぐ!うおおおお!!」
しかし小粒だとしても絶え間なく放たれる突きに俺は徐々に押され始めた。
(ぐおおお!し、死に体のどこにこんな力が!?)
そして背中が屋敷の壁についた。逃げ道がなくなった。
(ぐおお!耐えろ耐えろぉぉ!)
「負け」の二文字が脳裏にチラついた。
「負けてたまるかぁ!」
攻撃の速度が上がり大剣から伝わる衝撃も大きくなった。その衝撃は俺越しに屋敷の壁へと伝わり亀裂が入った。
(ぐおおお!!)
しかしオリビアも限界が近いのか攻撃の威力が少しずつ弱まってきた。が、依然として気は抜けなかった。
「ぐおおお!!」
ただ必死に耐え続けた。力の限りを込めて……徐々に筋肉も疲労から痙攣し始めていたが関係なく込め続けた。
(負けてたまるかァァ!)
負けるわけにはいかなかったから。耐えに耐えた。するとオリビアの攻撃に耐えきれなくなった屋敷の壁が崩壊した。
「うお!」
壁を支えにしていた俺は突然支えが消えたことで体勢を崩してしまい背中から地面に倒れた。すると、
「っ!」
オリビアは攻撃を空振りした。立っているのもやっとの状態。空振りした反動で前へ倒れそうになった自身の体を何とか足で支えて持ち直そうと踏ん張ったが、後ろへの反動が強すぎたため背中から地面に倒れてしまった。
「……は……はは、ははは!」
俺は慌てて立ち上がった。もしかしたらオリビアの演技という可能性もあったから近づいて倒れているオリビアを見た。そしてオリビアが気を失っているのを確認したら安堵感が込み上げてきて笑ってしまった。
「おれの、俺の勝ちだ!」
それから万が一オリビアが立ち上がってくるかもしれないと思った俺は勝利の余韻も程々に、
「じゃあな。愚娘」
オリビアへトドメを刺すべく大剣を振り上げた。が、突如としてオリビアの前に黒髪の男が現れた。
オリビアside
倒れる数秒前ーー。
本能が訴えかけてくる。
「もうすでに身体は限界を超えている。これ以上無理するのは良くない。それにそこまで無理して何にしがみつこうとしているの?」
と、それに対して理性が、
「ヒヒヒ!そんな本能のいうことなんかに耳を傾けんじゃねぇ」
とささやく。
「いいか忘れんなよ。私自身はラルクが好きなんだ。それに将来なりたいのは誰かの奥さんじゃねえ。そんな私の想いを邪魔するのが今回の婚約話でこの決闘はそれを覆すための、自分の意思を通すのための戦い何だろ?だったら何が何でも勝て!」
そしてとっくに限界を超え動けているのも不思議な状態の身体。本能の訴えかけに流されそうになってしまったが口の悪い理性の強い想いに遠のいていく意識を何とか繋ぎ止めた。
(はぁ……)
私の攻撃を防ぎ続けるマイクの大剣の刃の真ん中には欠けたような部分があった。
"武器の手入れ?そんなのは弱者のすることであって俺のような強者はやる必要なんてねぇ"
いつだったかマイクの執務室に呼び出された時にマイクが騎士長とそう話していたのを耳にしたことがあった。
(偶然だろうと何だろうとまともに動けない今の私の唯一の勝ち筋)
私は大剣の欠けた部分へ攻撃を集中させた。
(この好機、絶対にモノにする!)
肋骨のヒビが拡大して右の二本からパキン!という音がした。身体中の打撲も酷く、内出血の色も変化していた状態の身体を無理やり動かし続けたことで痛みが強さを増し徐々に痛覚が麻痺していった。そのためちゃんとレイピアが握れているのか、地面に立っているのか触覚では判断できず、
(大丈夫)
視線で確認しつつ攻撃を続けた。そして攻撃を数十秒浴びせ続けるとマイクの大剣ヒビが広がり始めていた。
(ヒビが広がった)
あと少しで……ヒビが半分まで広がった。それを視認した私は突きの威力を上げた。
「ぐおおお!!」
マイクを壁際に追い詰めた。壁が邪魔で身動きを取りづらそうにするマイクを見て私は「ここだ」と思ってスパートをかけた。
(あと少し!)
大剣のヒビが広がっていく。武器が壊れれば私の突きを防ぐことはできない。そうすれば一撃、一撃入れるだけでマイクの結界は崩壊する。そして結界の崩壊は決闘終了ーーすなわち私の勝利となる。
(ほんの少し!)
今までずっと否定され、見下され、笑いものにされてきた相手ーー悔しくて、どんなに頑張ろうと勝てなくてずっと暗いトンネルの中を走っているようだった。けど、修練を始めて10年ーー今日よくやく一筋の光が差し込んだ気がした。
(いけぇぇ!)
しかし
「ぐあっ!」
私は忘れていた。
(ぐ!)
最後はいつも私が望んだ結末とは真逆になってしまうということを
(耐えろ!)
今回もそうだった。あと少し、ほんの少しで大剣を壊してマイクに一撃入れて勝利というところで屋敷の壁が崩れた。そして支えがなくなったマイクは地面へ倒れ私の放った突きは空振りした?
(耐えろ!)
私の身体はとうに限界超えてしまっている。もう痛覚も全て麻痺していて自分がまともに地面に立てているのかさえ感覚では分からず視認していた。そんな状態で空振りした突きの反動を耐え切れるわけもなく気がつくと空を見上げていた。
(ああ……私は倒れたのか)
煌めく太陽の眩い光、風に揺れる草の青臭い匂いーー、
(……なんでいつも私は)
穏やかな春の風景だったが、薄れゆく意識の中で私の胸には自分を呪いたくなるほどの強烈な悔しさが滲んだ。
(かん、じんな……とき、に)
悔しさのあまりに涙が溢れて自然と閉じたまぶたによってその涙は頬をつたって地面に流れ落ちた。
オリビアside
「ふん。そんな立ってるのもやっとの状態で俺に勝てると思ってるのか?」
大剣の切先を私に向けたまま吐き捨てるように父ーーマイクが言った。苦虫を噛み潰したような忌々しそうな顔で。
(ああ、痛いなぁ)
息をする時に膨らんだ肺が折れた肋骨を圧迫して、その度にピリピリとした電気が全身を巡った。
(全身打撲に、至る所内出血……何でこんな状態で私立ててるの?)
本当はそのまま眠りたかった。
(ああ。あのまま眠ったら楽だったろうなぁ)
楽になりたかった。けど、
"自分を信じるとかっていうのはダセぇけど"
聞き捨てならなかった。本当は辛くてやめたくて……それでも人より何倍も努力しなくては父……いや、マイクに追い越すことなんてできないことはわかっていたから。そんな私を支えてくれた言葉だった。
「おい。そんな目を俺に向けんじゃねえ」
マイクが吠えた。
「さっさと諦めろ!」
鋭い視線を私に向けて。
「いいか?お前みたいのがどんなに努力したって俺に勝つことなんてできねえんだよ!」
でも私は関係なくマイクへと歩を進めた。その度にマイクは吠えながら一歩一歩と下がった。
(あんなことを言われたら)
私は、
「来るな!来るんじゃねぇぇ!」
屋敷の壁にまで追い詰めたマイクを、マイクが向ける大剣を見て
「ふふ」
笑った。
『自分が信じた道をただまっすぐと進むだけだ』
たとえ可能性が1%しかないとしてもラルクならきっと迷わずに進む。
不意に浮かんだラルクの笑った顔に釣られて
「ふふ」
私は笑った。
(いつのまにか私を前に向かせてくれる言葉になってたな。それをあんな風に言われたら黙っていられない)
そうして私は身体に残った最後の力を振り絞ると
「フラッシュ・バレット(連続する神速の突き)」
マイクに向けて爆発させた。
マイクside
「フラッシュ・バレット(連続する神速の突き)」
見えない突きが雨のように俺に降り注いだ。
(最後の搾りカスだ!これを耐えれば)
その雨は大粒というよりは小さな粒だった。
「ぐ!うおおおお!!」
しかし小粒だとしても絶え間なく放たれる突きに俺は徐々に押され始めた。
(ぐおおお!し、死に体のどこにこんな力が!?)
そして背中が屋敷の壁についた。逃げ道がなくなった。
(ぐおお!耐えろ耐えろぉぉ!)
「負け」の二文字が脳裏にチラついた。
「負けてたまるかぁ!」
攻撃の速度が上がり大剣から伝わる衝撃も大きくなった。その衝撃は俺越しに屋敷の壁へと伝わり亀裂が入った。
(ぐおおお!!)
しかしオリビアも限界が近いのか攻撃の威力が少しずつ弱まってきた。が、依然として気は抜けなかった。
「ぐおおお!!」
ただ必死に耐え続けた。力の限りを込めて……徐々に筋肉も疲労から痙攣し始めていたが関係なく込め続けた。
(負けてたまるかァァ!)
負けるわけにはいかなかったから。耐えに耐えた。するとオリビアの攻撃に耐えきれなくなった屋敷の壁が崩壊した。
「うお!」
壁を支えにしていた俺は突然支えが消えたことで体勢を崩してしまい背中から地面に倒れた。すると、
「っ!」
オリビアは攻撃を空振りした。立っているのもやっとの状態。空振りした反動で前へ倒れそうになった自身の体を何とか足で支えて持ち直そうと踏ん張ったが、後ろへの反動が強すぎたため背中から地面に倒れてしまった。
「……は……はは、ははは!」
俺は慌てて立ち上がった。もしかしたらオリビアの演技という可能性もあったから近づいて倒れているオリビアを見た。そしてオリビアが気を失っているのを確認したら安堵感が込み上げてきて笑ってしまった。
「おれの、俺の勝ちだ!」
それから万が一オリビアが立ち上がってくるかもしれないと思った俺は勝利の余韻も程々に、
「じゃあな。愚娘」
オリビアへトドメを刺すべく大剣を振り上げた。が、突如としてオリビアの前に黒髪の男が現れた。
オリビアside
倒れる数秒前ーー。
本能が訴えかけてくる。
「もうすでに身体は限界を超えている。これ以上無理するのは良くない。それにそこまで無理して何にしがみつこうとしているの?」
と、それに対して理性が、
「ヒヒヒ!そんな本能のいうことなんかに耳を傾けんじゃねぇ」
とささやく。
「いいか忘れんなよ。私自身はラルクが好きなんだ。それに将来なりたいのは誰かの奥さんじゃねえ。そんな私の想いを邪魔するのが今回の婚約話でこの決闘はそれを覆すための、自分の意思を通すのための戦い何だろ?だったら何が何でも勝て!」
そしてとっくに限界を超え動けているのも不思議な状態の身体。本能の訴えかけに流されそうになってしまったが口の悪い理性の強い想いに遠のいていく意識を何とか繋ぎ止めた。
(はぁ……)
私の攻撃を防ぎ続けるマイクの大剣の刃の真ん中には欠けたような部分があった。
"武器の手入れ?そんなのは弱者のすることであって俺のような強者はやる必要なんてねぇ"
いつだったかマイクの執務室に呼び出された時にマイクが騎士長とそう話していたのを耳にしたことがあった。
(偶然だろうと何だろうとまともに動けない今の私の唯一の勝ち筋)
私は大剣の欠けた部分へ攻撃を集中させた。
(この好機、絶対にモノにする!)
肋骨のヒビが拡大して右の二本からパキン!という音がした。身体中の打撲も酷く、内出血の色も変化していた状態の身体を無理やり動かし続けたことで痛みが強さを増し徐々に痛覚が麻痺していった。そのためちゃんとレイピアが握れているのか、地面に立っているのか触覚では判断できず、
(大丈夫)
視線で確認しつつ攻撃を続けた。そして攻撃を数十秒浴びせ続けるとマイクの大剣ヒビが広がり始めていた。
(ヒビが広がった)
あと少しで……ヒビが半分まで広がった。それを視認した私は突きの威力を上げた。
「ぐおおお!!」
マイクを壁際に追い詰めた。壁が邪魔で身動きを取りづらそうにするマイクを見て私は「ここだ」と思ってスパートをかけた。
(あと少し!)
大剣のヒビが広がっていく。武器が壊れれば私の突きを防ぐことはできない。そうすれば一撃、一撃入れるだけでマイクの結界は崩壊する。そして結界の崩壊は決闘終了ーーすなわち私の勝利となる。
(ほんの少し!)
今までずっと否定され、見下され、笑いものにされてきた相手ーー悔しくて、どんなに頑張ろうと勝てなくてずっと暗いトンネルの中を走っているようだった。けど、修練を始めて10年ーー今日よくやく一筋の光が差し込んだ気がした。
(いけぇぇ!)
しかし
「ぐあっ!」
私は忘れていた。
(ぐ!)
最後はいつも私が望んだ結末とは真逆になってしまうということを
(耐えろ!)
今回もそうだった。あと少し、ほんの少しで大剣を壊してマイクに一撃入れて勝利というところで屋敷の壁が崩れた。そして支えがなくなったマイクは地面へ倒れ私の放った突きは空振りした?
(耐えろ!)
私の身体はとうに限界超えてしまっている。もう痛覚も全て麻痺していて自分がまともに地面に立てているのかさえ感覚では分からず視認していた。そんな状態で空振りした突きの反動を耐え切れるわけもなく気がつくと空を見上げていた。
(ああ……私は倒れたのか)
煌めく太陽の眩い光、風に揺れる草の青臭い匂いーー、
(……なんでいつも私は)
穏やかな春の風景だったが、薄れゆく意識の中で私の胸には自分を呪いたくなるほどの強烈な悔しさが滲んだ。
(かん、じんな……とき、に)
悔しさのあまりに涙が溢れて自然と閉じたまぶたによってその涙は頬をつたって地面に流れ落ちた。
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