父に虐げられてきた私。知らない人と婚約は嫌なので父を「ざまぁ」します

さくしゃ

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決闘①

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決闘①


マイクside

 眩しい。太陽が、その光に輝く白亜の屋敷、草……全てが眩しかった。

「決闘においてのルールの確認です」

 決闘の見届け人である俺の女ーーアンナが長々とルールの説明を始めた。

(こいつは出会った時から何をやるにもトロい。本当に役に立たない。ただ身体だけはいいがな)

 決闘におけるルールを簡単に説明すると、

1、死人は絶対に出さない。故に結界を身体に纏わせて戦う。勝敗は結界が壊れた方が負けとする。

2、武器の変更や交換は出来ない。

3、試合時間は三十分。この間に結界が壊れていなければ一回のみ誰かと交代ができる。

4、上記のルールを破りし者は女神より制裁が下る。

 これが決闘のルールだ。

「2、女神様が定めし……」

 俺が全てのルールを説明し終わる頃にアンナはまだ二つのルールの説明を行なっていた。

(本当に使えない奴だ)

 酒を飲み始めて3時間ーー何本目になるかわからない酒の口を開けて飲んだ。

(しかしいい感じに酔いが回ってきたな)

 目にするもの全てが二重、三重に映った。

(ちょっと飲みすぎ……ということもないな。これくらいのハンデがあってようやく遊べるというものか)

 目を閉じて静かに精神統一をする愚娘を見て

(どうせ俺に勝てるわけないのに、この日のために10年も鍛えてきたとか言ってたっけか……)

 笑ってしまった。

(ブハッ!ハハハ!……無駄な努力ほど見てて笑えるものはないな)

 所詮この世は才能が全て。俺のような天才が愚民どもを虐げるのが普通だ。

「ーー説明は以上です。それでは宣誓を」

 もの思いにふけっていたらアンナのクソ長い説明が終わった。

「グズが!長すぎるわ!」

「っ!す、すみませんでした!」

 俺はクソ長い説明をしてくれたアンナを怒鳴ってから、

「チッ!……女神の名の下に誓う」

 宣誓した。そして決闘が始まった。


 オリビアside

 「お前にハンデをやる。俺はここから一歩も動かない。それと利き手の右も使わずに左手のみで大剣を操り戦ってやろう」

 父ーマイクは酒瓶を投げ捨てると2メートルの大剣を左手のみで持ち、構えた。ニヤついた顔で私を見ながら

「おい。このくらいのハンデがあった方がお前達は見てて盛り上がるか?」

 父は私たちを囲む30人の使用人や騎士達に尋ねた。

「両目をつぶってようやくいいハンデになるんじゃないかと思います」

「確かに。それくらいしないと一瞬で終わってしまいますよね」

 そして聞かれた使用人達は一度私を見て笑うと父へそう答えた。

「そうか。なら、その案を採用してやる」

 使用人達の返答に父は、玉座の間で国王が臣下へ褒美を贈る時のように振る舞うと、

「ははぁ!ありがたき幸せぇ!」

 話を振られた使用人は片膝をつき、騎士が主君へ誓いをたてる時のように振る舞った。

「ばっか!お前そこは片膝をついたあとはさ」

 普段は他者を寄せ付けない父だが飲酒すると

「おお!さすが領主!」

 陽気になり使用人たちと悪ノリして遊ぶことがある。

「ふふん!そうだろうそうだろう!」

 和気藹々と……まるで飲みの先であるかのように楽しそうに盛り上がっていた。今が「決闘」という真剣勝負の場であるにも関わらず。

「ええ!さすが領主です!」

 では、そんな場において父や使用人達に余裕があるのは何故かーーそれはどんな展開になろうとマイクが負けるわけないと確信しているから。

「最高の見せ物にしてやるからしっかりと楽しめよ!」

「ういっす!」

 本来なら騎士同士が己の意志を通すための真剣な場であるにもかかわらず父と使用人達の態度は軽薄で真剣に決闘に臨む私にとっては屈辱でしかない。

「ふぅぅ」
 
 しかしそんな場にあって私は集中していた。

(調子がいい)

 その集中力は時間の経過とともにどんどん深くなっていって対戦相手の情報ーー声、呼吸音、筋肉の動き、目線といったこと以外は遮断されていった。

(これならもしかしたら……)

 そして予感がした。今までは構想だけで実現に決して至ることのなかった突き。

"エミリア。見ててね。今日こそ「武の真髄」を見せてあげるから。光速を超えた神なる速さーー神速……今日こそモノにしてみせるわ。そして今日、正々堂々ラルクを倒して私が勝ち越す!"

 いつかのラルクとの決闘でエミリアに約束して結局は実現できないと思って断念した武の真髄。

「ほら。両目も瞑ってやったぞ。早く来い」

 両目を瞑り、左手のみで大剣を構えたまま棒立ちの父ーーマイクの懐へ飛び込み、

(神速の突き)

 自身の胸の前で構えたレイピアを打ち出した。

(フラッシュ)

 誰にも認識できない速度で。

「……は?」

 私が打ち出した突きが着弾してから数十秒ーー

「はぁ?」

 ピキッという何かが割れる音ともに、

「はぁぁ?!」

 父ーーマイクの体を覆う結界に亀裂が入った。
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