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鐘がなった。
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鐘が鳴った。
オリビアside
リーンゴーン!リーンゴーンーー時間が来た。
「すぅぅ」
気分は悪くない。身体も心も軽い。少し前まであんなに苦しくて重かったのに……不思議だった。鼓動は早いままなのに全然苦しくなくて心地いい。私の中では色んな感情が騒いでいるけど思考で制御できてしまった。
「ふぅぅ」
これから私は閉じた瞳を開くと腰掛けていたシーツの山から立ち上がりドアを目指して歩き出した。そしてすぐドアへ辿り着くと、
「はぁぁ」
ドアノブに手をかけ、回そうとした時ある感情が私の動きを止めた。
(大丈夫。これまでにやって来たことを、積み上げて来たことをそのままやればいいだけなんだから)
それはラルクとの時間で一時的に忘れていただけでずっと私の心の奥にあった「不安」だった。
"本当に勝てるの?"
と不安が私にささやいた。これまでに何千、何万と向き合って来た感情なだけにこのまま流されてしまうのはよくないと理解していた私は、
「大丈夫」
と冷静に答えた。心を乱すことなく。ごく普通に。ただ「不安」ら私の答えなんてお見通しだったようで、
"なら、もし負けてしまったら"
と聞いて来た。
マイクは自己中心的で「良い父」とは決して言えない。だけど、その強さは間近で見てきてる分、誰よりも本物であることは私が知っている。戦闘中に進化する天才。
それに私はスピード重視で火力に欠ける。一方のマイクはスピードは魔狼を翻弄し、火力は15メートルのドラゴンを一撃で屠る。
相性が悪い上に地力も上……はっきりと絶対に勝てるなんて断言できない。
"これでラルクと会うのは最後になるわね"
最後に「不安」は私にそう囁いて消えた。
(現実的に考えたら、その可能性は高い)
と思った私は背後のラルクは振り返った。
「……あ」
しかし何を伝えたらいいのか。確かな想いはあるのにそれがうまく言葉にできなくて、出てこなくて、
「……」
私は無言で笑った。「何に対して?」と聞かれたら自分の語彙力のなさに?それもある。ただこの時笑ったのは「こんな時ラルクなら」と考えたらラルクならきっと……いや、確実に、
"やってみるまで結果はわからねえ"
そう何事でもなさそうに言っていつも通りに戦うと思ったら笑ってた。
(そうだよ。この時のために10年間鍛えて私は強くなった)
心が軽くなった。
(そうだ。何事もやってみるまでわからない)
そんな私はラルクにお辞儀するとドアノブを回してドアを開いた。
(でも……)
一歩踏み出した。
(できることならラルクから何か言って貰えばよかったな)
ラルクなら……そう考えた時に言うであろうラルクの言葉に胸は軽くなったけど、それでも贅沢をいうならラルクから直接「頑張れ」とか何か一言でもいいから言って貰えばよかったと思ったらそのことが心残りになってしまった。
(ふぅぅ……さぁ、決闘。切り替えて)
それでもこのあとはすぐに決闘が待っている。いつまでも悩んでいるわけにいかない。それからすぐに思考を切り替えて神経を集中させようとした。
「オリビア!」
その時だった。背後からラルクの声がした。
ラルクside
鐘が鳴った。隣で座っていたオリビアが立ち上がった。そしてドアまで歩くとドアノブをひねった。
(いえ!今言わないと!)
そんなオリビアを見て俺の心が今、その想いを言わないと一生後悔すると警鐘を鳴らす。が、
(いや、逆に言わない方がいいのかもしれない。そんなキャラでもないし)
俺自身は「言わない方がいい」と思う気持ちもあって、その通りに行動しようとしたら緊張から解放されて気分が軽くなった。だけど、見てしまった。ドアノブをひねろうとして動きを止めたオリビアが俺へ振り返った。
「あ……っ」
その時の不安そうな、苦しそうな顔。
「……」
しかしすぐにそれを誤魔化すように無表情になった。それからオリビアはドラを開くと一歩踏み出した。
「っ!オリビア!」
反射的だった。気がつけば身体が動いていて6歩目でオリビアに追いついていて後ろから抱きしめていた。
「……え」
突然の俺の行動にオリビアは戸惑ってうわずった声を出した。それでも俺は冷え始めている心の熱が消えてしまう前に行ってしまおうと思った。
「お、俺は……」
けど、何をいうか考えているわけではないからうまく言葉が出てきたわけじゃなかった。
「オリビアのことを尊敬している!誰よりも努力してきた姿を俺は知ってる!」
回りくどい言い方になってしまってちゃんと伝わっているか不安だった。でも、俺の胸の内から出てくる想いを
「俺はオリビアのそんな姿にどれだけ勇気をもらったか」
口にした。回りくどくてもいい。とにかく今は、
「うまくまとまってなくて……えっと、だから、オリビアなら相手があの王国最強だろうと」
溢れるこの想いを言葉にして伝えたかった。
「絶対に負けない!」
オリビアside
「絶対に負けない!」
不思議だった。ラルクの言葉一つで「もし負けたら……」と私にささやき続けた不安が一瞬で消えた。心に残ってたささくれも消えた。
「見ててね」
憂いはなくなった。振り返らずに私はラルクにそう言って歩み出した。決闘相手の元へ。
「おうよ!」
そんな私はラルクからの強い返事。嬉しさから思わず口がほころんだ。ラルクが見ていてくれる。そう思うと力が湧いてきた。
「ふぅぅ」
それから私はたくさんの使用人や母、そして決闘相手である父ーーマイクの前へ歩いていった。
「怖気つかずによくきたな」
父の眼前に立つと酒瓶を手にしてほんのり頬を赤く染めた父ーーマイクがニヤリと笑った。
オリビアside
リーンゴーン!リーンゴーンーー時間が来た。
「すぅぅ」
気分は悪くない。身体も心も軽い。少し前まであんなに苦しくて重かったのに……不思議だった。鼓動は早いままなのに全然苦しくなくて心地いい。私の中では色んな感情が騒いでいるけど思考で制御できてしまった。
「ふぅぅ」
これから私は閉じた瞳を開くと腰掛けていたシーツの山から立ち上がりドアを目指して歩き出した。そしてすぐドアへ辿り着くと、
「はぁぁ」
ドアノブに手をかけ、回そうとした時ある感情が私の動きを止めた。
(大丈夫。これまでにやって来たことを、積み上げて来たことをそのままやればいいだけなんだから)
それはラルクとの時間で一時的に忘れていただけでずっと私の心の奥にあった「不安」だった。
"本当に勝てるの?"
と不安が私にささやいた。これまでに何千、何万と向き合って来た感情なだけにこのまま流されてしまうのはよくないと理解していた私は、
「大丈夫」
と冷静に答えた。心を乱すことなく。ごく普通に。ただ「不安」ら私の答えなんてお見通しだったようで、
"なら、もし負けてしまったら"
と聞いて来た。
マイクは自己中心的で「良い父」とは決して言えない。だけど、その強さは間近で見てきてる分、誰よりも本物であることは私が知っている。戦闘中に進化する天才。
それに私はスピード重視で火力に欠ける。一方のマイクはスピードは魔狼を翻弄し、火力は15メートルのドラゴンを一撃で屠る。
相性が悪い上に地力も上……はっきりと絶対に勝てるなんて断言できない。
"これでラルクと会うのは最後になるわね"
最後に「不安」は私にそう囁いて消えた。
(現実的に考えたら、その可能性は高い)
と思った私は背後のラルクは振り返った。
「……あ」
しかし何を伝えたらいいのか。確かな想いはあるのにそれがうまく言葉にできなくて、出てこなくて、
「……」
私は無言で笑った。「何に対して?」と聞かれたら自分の語彙力のなさに?それもある。ただこの時笑ったのは「こんな時ラルクなら」と考えたらラルクならきっと……いや、確実に、
"やってみるまで結果はわからねえ"
そう何事でもなさそうに言っていつも通りに戦うと思ったら笑ってた。
(そうだよ。この時のために10年間鍛えて私は強くなった)
心が軽くなった。
(そうだ。何事もやってみるまでわからない)
そんな私はラルクにお辞儀するとドアノブを回してドアを開いた。
(でも……)
一歩踏み出した。
(できることならラルクから何か言って貰えばよかったな)
ラルクなら……そう考えた時に言うであろうラルクの言葉に胸は軽くなったけど、それでも贅沢をいうならラルクから直接「頑張れ」とか何か一言でもいいから言って貰えばよかったと思ったらそのことが心残りになってしまった。
(ふぅぅ……さぁ、決闘。切り替えて)
それでもこのあとはすぐに決闘が待っている。いつまでも悩んでいるわけにいかない。それからすぐに思考を切り替えて神経を集中させようとした。
「オリビア!」
その時だった。背後からラルクの声がした。
ラルクside
鐘が鳴った。隣で座っていたオリビアが立ち上がった。そしてドアまで歩くとドアノブをひねった。
(いえ!今言わないと!)
そんなオリビアを見て俺の心が今、その想いを言わないと一生後悔すると警鐘を鳴らす。が、
(いや、逆に言わない方がいいのかもしれない。そんなキャラでもないし)
俺自身は「言わない方がいい」と思う気持ちもあって、その通りに行動しようとしたら緊張から解放されて気分が軽くなった。だけど、見てしまった。ドアノブをひねろうとして動きを止めたオリビアが俺へ振り返った。
「あ……っ」
その時の不安そうな、苦しそうな顔。
「……」
しかしすぐにそれを誤魔化すように無表情になった。それからオリビアはドラを開くと一歩踏み出した。
「っ!オリビア!」
反射的だった。気がつけば身体が動いていて6歩目でオリビアに追いついていて後ろから抱きしめていた。
「……え」
突然の俺の行動にオリビアは戸惑ってうわずった声を出した。それでも俺は冷え始めている心の熱が消えてしまう前に行ってしまおうと思った。
「お、俺は……」
けど、何をいうか考えているわけではないからうまく言葉が出てきたわけじゃなかった。
「オリビアのことを尊敬している!誰よりも努力してきた姿を俺は知ってる!」
回りくどい言い方になってしまってちゃんと伝わっているか不安だった。でも、俺の胸の内から出てくる想いを
「俺はオリビアのそんな姿にどれだけ勇気をもらったか」
口にした。回りくどくてもいい。とにかく今は、
「うまくまとまってなくて……えっと、だから、オリビアなら相手があの王国最強だろうと」
溢れるこの想いを言葉にして伝えたかった。
「絶対に負けない!」
オリビアside
「絶対に負けない!」
不思議だった。ラルクの言葉一つで「もし負けたら……」と私にささやき続けた不安が一瞬で消えた。心に残ってたささくれも消えた。
「見ててね」
憂いはなくなった。振り返らずに私はラルクにそう言って歩み出した。決闘相手の元へ。
「おうよ!」
そんな私はラルクからの強い返事。嬉しさから思わず口がほころんだ。ラルクが見ていてくれる。そう思うと力が湧いてきた。
「ふぅぅ」
それから私はたくさんの使用人や母、そして決闘相手である父ーーマイクの前へ歩いていった。
「怖気つかずによくきたな」
父の眼前に立つと酒瓶を手にしてほんのり頬を赤く染めた父ーーマイクがニヤリと笑った。
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