いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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10日……②

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 槍先で風が高速回転し、ドリルのようになって貫通力の上がった勇者の槍が、ナイトメアの胸の魔核めがけて突き出される。

 「うお!」

 ナイトメアは、まさかの展開に驚き、目を見開く。

 「はぁ!」

 反応できずにいるナイトメアに槍が迫る。

 (いける!貫ける!)

 日向は確信する。しかし、背筋に悪寒のようなものを感じ、ナイトメアの顔を見る。

 (笑ってる……)

 ナイトメアは余裕の笑みを浮かべていた。

 ナイトメアの胸に日向の槍先が触れるというところで、ナイトメアの体から真っ黒な魔力が現れ、体を覆う。

 (なんだ?)

 ナイトメアの体を覆う得体の知れない魔力に驚きを隠せないが、千載一遇のチャンス。これを逃す訳にはいかない。槍を止めずにそのまま胸を突く。

 「はあ!」

 槍がナイトメアの体に触れる。その瞬間、槍はナイトメアの体を覆う闇は、手の形へと変形し、槍先を掴む。

 「く!」

 掴まれた槍を外そうと力一杯に引くが、びくともしない。

 「お返しだ」

 手がもう一つ出現し、日向のアゴに向かってロケットパンチのように飛んでくる。

 「縮地!」
 
 日向は槍から手を離し、高速移動で、自身に迫る黒い手から逃れる。槍は、闇の手に飲み込まれていった。

 「大丈夫ですか!日向殿!」
 「水弾(ウォーターバレット)!」

 リナが日向に駆け寄り、エミは牽制の意味も込めて、ナイトメアに水弾を20発打ち込む。

 しかし、ナイトメアの手によって飲み込まれる。

 「ははは!驚いたぞ!勇者!」
 
 ナイトメアは、興奮が抑えられずに笑う。

 なぜなら、未だかつて自分に冷や汗をかかせる人間と戦ったことがなく、死を間近に感じて汗を流したのは、2の魔人と戦った時以来だったからだ。

 (心地いい……この強く脈打つ胸、あと一歩で死んでいたであろうことを実感した時の緊張感と刺激……たまらない)

 「ははは!面白いぞ!帝都は統率の取れたオーガ共が空も地上も地下の下水も見張っている!一体どうやって掻い潜ってここまで侵入してきた!」

 ナイトメアは体を纏っていた真っ黒な魔力を消し、笑いながら日向に問う。


 ー時は遡り10日前ー

 「端から攻めるとはどういうことですか?」

 リナは、日向の発言の意味が分からず質問する。

 「そのままです。他の街は後にして、万全の状態のまま、魔人の方を先に叩きましょう」

 普段は臆病でビクビクしている日向からは想像できない大胆な発言が飛び出す。

 リナとエミは驚いているが、意味のないことを口にする人ではない事はわかっているので、「なぜですか?」「何で?」と理由を問う。

 「相手も馬鹿ではありません。こちらがそろそろ帝国に攻めてくることくらいはわかっているはずです。なので、どの街も普段より警戒が強くなっていると思います」

 日向はお茶を飲む。

 「そんな所を少数で攻めても数で押し切られるだけです。それに街を攻略できたとしても消耗してしまいます。そんな状態で最後に帝都を攻めて、万全の魔人とその部下を相手に戦ったら100%勝てません」
 「そんな……こともあるわね」
 「確かに。その通りですね」

 2人は納得する。

 「それに、帝都周辺の街を攻略中に3の魔人と殺し合いをした2の魔人が攻めて来て挟み撃ちになることもあるかも知れません。なので、後ろに敵勢力のいない帝都から攻めた方が確実だと思います」

 日向は国王達との話し合いの時に感じた不安から1ヶ月悩み続け考えた大まかな作戦を話す。1人で考えたからかなり無理なところはある。

 日向の作戦を聞いたリナとエミは、しばらく考えて、「なら、こんな状況もあるのでは」とか「奇襲を確実にするなら」とか日向の作戦を軸にして、意見を出し合い、3人で確実な作戦へと昇華していく。

 (仲間っていいな)

 日向は日本にいたら「考えすぎだ」と言われて、聞いてもらえなかった自分の意見を聞いて、ここまで真剣に話し合ってくれる2人を見て、嬉しさから微笑む。

 ー翌日ー

 「では、行きましょう」

 朝ごはんを食べ終えた3人は、荷物をしまい出発。それから2日。帝都近くの海岸線に絶好の入江を発見する。

 「いい場所がありましたね。ここなら、作業がはかどりそうです」

 リナは、入江を見渡す。帝都との間に森があり、周りは岩に囲まれていて、海からか森を抜けてこないと侵入できない絶好の場所。

 「そうですね。ここを拠点にまずは準備を整えましょう」

 日向達は早速テントを張り、拠点を作り、日向はまだ掴めていない魔人の特定と魔法陣の設置場所を確かめるために帝都へ。リナ達は城へ侵入するためのトンネル工事へと分かれる。

 ******************

 ー勇者sideー

 「ふぅ……」

 日向は帝都の中にある時計塔の中から帝都の真ん中にある城を望遠鏡で覗き込んでいた。

 「間違いない。他の魔物と比べて明らかに飛び抜けた魔力に存在感……見た目からは想像できないが黒のワンピースを着た少女が魔人「ナイトメア」」

 帝都中に広げた気配探知から魔人を特定。

 「街の中をくまなく探したけど、魔法陣は見当たらなかった。あと探していないのは、城の中だけ……フレバンスの時もその街で1番強い者が守っていたから、おそらく魔人の近くに魔法陣はある」

 容疑者を張り込みする刑事のようにパンを食べながら、時計塔の小さな窓を開けて魔人の行動パターンに隙がないか張り込む。

 ******************

 ーリナ&エミsideー

 一方、日向が張り込みをしている頃、2日前に城に魔人がいることを知らされた2人は、ほとんど休まずにトンネル工事に勤しんでいた。

 「頑張れぇ~」

 バテたエミは、真面目に工事に勤しむリナにエールを送っていた。

 「はい!はい!はい!」

 身体強化を使ったリナは、硬い岩盤もサクサク掘り進めていく。

 「方角は!」

 掘りながら、エミに尋ねる。

 「えっと……北東に30kmだからそのまま掘り進めていいよ。目標まであと1km」

 エミは方位磁針で方角を確かめ、地中にある水分の反響を利用して、目標までの距離を測る。

 「わかった」

 リナは驚異的な速度で掘り進めていく。

 次の日には、城の下までトンネルを開通させた。
 
 ******************

 ー勇者&リナ&エミー

 トンネル開通から4日目の朝……

 昨晩、帝都から戻ってきた日向を交えて、3人で作戦会議を行った。

 「城の中に侵入して確認しましたが、魔人は必ず1日に3回、1回1時間眠ります。その時は、必ず城の中から魔物達がいなくなりますので、奇襲を仕掛けるならそこです」

 日向は3日張り込んだ情報を2人に共有する。

 「眠る時間は?」

 リナが日向に問う。

 「8時、16時、24時です」
 
 日向は答える。

 「なら……」とリナは切り出し、「……分かった!8時ね!」とリナの言おうとした答えがわかったエミは、反射的に口に出してしまう。

 リナはごほん!と咳払い。

 少し気まずい空気が流れる中、日向が慌てて話し出す。

 「そ、そうですね。その時間がベストです!後は、作戦決行の1時間前に地下の石床まで掘り進めて、城の地下に侵入、様子を伺い、眠ってしばらくしてから突入して、ナイトメアを僕が攻撃します。城の中は全ての壁が壊されて吹き抜けになっているので、多分どこかしらかに魔法陣があると思いので、その間に見渡して見つけてください」

 口早に話す。

 「出来ることなら油断している街の魔物達も一緒に攻撃して、なるべく数を減らしたいですね。もし攻撃を防がれてナイトメアと正面から戦う事になったら、大量の魔物達が私達に殺到してくるでしょうから」
 「それは嫌ね。考えただけでゾッとするわ」

 リナは不安そうな話し、エミはゴキブリを見た時のようなリアクションをする。

 「ああ。それなら心配ありません。作戦決行の2時間前に帝都の街の上空に火炎石を300個程を風で、城の上空には300の矢を放って操作して止めて、待機させておきます。それらを突入と共に解放して、街と城にいる魔物を殲滅します」

 日向はお茶を飲みながら言う。

 「……味方で良かった」
 「本当だ」

 リナとエミは心の底から日向が敵ではなくて良かったと安心する。

 その後、奇襲が失敗した際の行動についても話し合い、作戦の成功率を上げていった。

 *****************

 ーそして、現在ー

 (そう簡単にうまくはいかないか……)

 ナイトメアへの奇襲が失敗した日向達は次の作戦へと行動を移す。
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