いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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10日……

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 ー勇者sideー

 ザザァ……ザッパァン!……ザァ……

 かつては、国同士による貿易のために使われていた海は、太陽が隠れ、プランクトンが消え、それを食べるエビ、貝などが消え、食べるものの無くなった魚たちが死に、生命の存在しない死の水たまりとなっていた。風には磯の匂いはせずに、たまに死臭が混じっている。

 そんな、海岸線にひっそりと存在する岩に囲まれた入江には、砂浜の奥に鍾乳洞のようなものがあり、その中にローブを纏った日向が入っていく。

 「どうでした?」

 雨に濡れたローブを脱ぐ日向にリナが話しかける。

 「予想通りでした。見つからないようにくまなく探したんですけど街の中や地下の下水には魔法陣はなかったです。でも、魔人はいました」
 
 日向は濡れたローブを風で乾燥させ、マジックバックにしまう。

 「そうですか……」
 「はい。それで穴の方はどうですか?」

 2人は穴の奥に進みながら話す。

 「今はエミが掘っています。順調に進んでいますよ」

 リナは、腕を回しながら疲れた顔で話す。

 「良かったです」
 
 日向は、マジックバックから水筒を取り出し、リナに渡す。

 「ありがとうございます」
 「ゆっくりと休んでください。その間は僕が変わります」

 日向の発言にリナは、食い気味に詰めよる。

 「良いですか!1番働いているのは日向殿です!2日も寝ずに動いているのですから休んでください!休まないというのであれば……」

 リナの顔半分に闇が現れ始める。それを見た日向の頭には、10日前の夜の記憶が鮮明に思い出され、顔が青ざめていく。

 「は、はい!すぐに休ませて頂きます!」

 ピシッ!っと真っ直ぐ立ち、綺麗な敬礼を決める。その動きは滑らか、軍事パレードで行進する軍人のような滑らかな動き。

 「わかれば良いです。では、ご飯を食べてテントの中で休んでくださいね」

 リナは、日向を拠点に置いて、スコップを持って、穴の奥へと消えていく。

 日向はリナの指示通りにご飯を食べ、テントに潜り込み目を閉じる。2日も寝ずに動いていたから、すぐに眠れると思ったが、さっきのリナの迫力が忘れられず、結局眠れたのは、1時間くらい経ってからだった。


 *******************


 ーナイトメアsideー

 「おおーし!そこでバックステップ!からの!左にスライドしてオーガの右太ももを斬る!」

 かつては食堂、皇族の寝室などで入り組んでいた城の中は、柱以外の壁が壊され一つの大きな空間へ変貌している。

 その大きな空間の一画では、騎士の格好をしたグールとオーガによる一戦が繰り広げられていた。

 「よし!動けなくなったところを……っと下によけて、1度距離を取る」

 ナイトメアの操るグールが指示に従い、距離を取る。

 夢中になって遊ぶ、ナイトメアの元に一体の人形のオーガがやってくる。

 「ナイトメア様。よろしいでしょうか?」

 そのオーガは、片膝を床につけて、服従の意を示しす。

 「忙しいんだけど…….何?」

 気分のいいところに水をさされたナイトメアは、露骨に嫌な顔をする。

 「フレバンスが落とされて、2ヶ月近くが経ちますが、ナイトメア様の予想ではそろそろ攻めてくる頃だと仰っておりましたが、一向に姿を見せません。それに備えて兵を王都に向けて出兵させることを控えておりましたが、ここは兵を王都に派遣して、勇者がいるのかどうか確か見るというのは如何でしょうか?」

 オーガは、冷や汗を流しつつもナイトメアに進言する。

 「……は?」

 ナイトメアから片膝をつくオーガに向かってとんでもない殺気が向けられる。

 このオーガは、Lv.60を超えるナイトメアの部下の魔物たちの中でも1番強い。人類でも最強に近いとされていたマウリスと互角といえよう。そのオーガは、ナイトメアから殺気を放たれた途端に体が凍りついて動けなくなり、全身の毛穴が一瞬で開き、脂汗が流れる。

 「グア!」

 その間にナイトメアの操るグールがオーガによってペシャンコに潰される。

 「あ!」

 ナイトメアは、座っていた椅子から立ち上がる。

 「……お前のせいだぞ」

 後ろに控えるオーガに向かって手をかざす。その手には、魔王がフレバンスで放った時と同じ黒い球が出現する。

 「出過ぎたことをいたしました!お許しください!」

 オーガは、慌てて土下座をして自身の行為について詫びる。

 「今回だけだぞ……」

 ナイトメアはため息をつく。

 「あ、ありがとうございます!」

 助かったと思ったオーガは、嬉しそうな顔を向ける。

 「本当は全員殺してやろうと思ったけど、お前だけで許してやる……」
 「……へ?」

 許されたと思ったオーガは、予想外の言葉に間の抜けた声をあげる。そして、時間が経つに連れて、意味を理解し、安心しきっていた顔は、徐々に絶望へと変わっていく。

 「良い顔だ。その褒美として死ね」

 ナイトメアは、オーガに向かってブラックホールを放つ。

 「ギャアァァ……」

 オーガは、ブラックホールに飲み込まれて消える。

 「はぁ!スッキリした!そろそろ眠ろう」

 ナイトメアは、近くにある天蓋付きのふかふかのベッドに飛び込み、布団をかけて、夢の世界へと旅立つ。

 
 *******************


 ー勇者sideー

 「眠った」

 日向は、ナイトメアの根城の床の石板を外し、地下から500m先で眠りについたナイトメアを望遠鏡にて確認する。

 「周りはどうですか?」

 日向の下のハシゴにつかまっているリナは尋ねる。

 「敵影はなし。気配察知でも近くには誰もいない」
 「そうですか。なら、日向殿の張り込みの情報通り、ここから1時間は敵が来ないと見て良さそうですね」
 「はい。でも、想定に行くとは限りません。慎重に行きましょう。特にエミさん」
 「うるさいわね!わかってるわよ!」
 
 リナがエミの口を抑える。

 「ばか!声を抑えろ!気づかれたらどうする!」
 「あ、ごめんなさい」

 エミは素直に謝る。

 「大丈夫そうです。それでは予定通りに行きますよ」

 日向の合図に2人は頷く。

 「行きます!」

 日向は腕を振り下ろす。


 *******************


 ーナイトメアsideー

 眠っていたナイトメアに微かに地震のような振動が伝わる。

 「ん……」

 眠りについたナイトメアは目を覚ます。

 「ふああ……」

 眠い目をこすり、布団をどかして、上体を起こした。その瞬間……

 バァン……ドォン……バァン……

 城の天井を矢が突き破って、次々に城の床に刺さっていく。その光景は、矢の雨。

 「闇穴(ブラックホール)」

 ナイトメアは、ベッドに腰掛けた状態のまま、魔法を発動させて、自身に降り注ぐ矢を吸い込んでいく。

 「ふああ~……勇者が攻めてきたか……」

 再びあくびをする。

 「縮地」

 ナイトメアの耳に微かに男の声が聞こえた。

 「ん?」

 目を開けると、そこには、魔王の記憶で目にした勇者の姿があり、槍による突きを放ってきていた。
 
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