いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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ナイトメア②

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 「ぐわああ!!!」

 自身の主に牙を向いた敵を滅ぼすために城に向かっていた人型のオーガ達は、帝都の空を覆っていた雲が消え、差し込む太陽の光によってチリと化していく。

 「ナイトメア様!」

 帝都に残る最後のオーガは、目前に迫った太陽の光があたり黒光りする城に手を伸ばし消えた。

 ******************

 ー勇者sideー

 城壁のすぐ近くの芝の上では、太陽の光を浴びたナイトメアが悶え苦しんでいた。

 「ああああああ!」

 体が黒いスライム状になり、それが広がっていき、その苦しみを表すように激しく隆起し、時には城壁に体をぶつける。

 「さすがは魔人ね……」
 「ああ。なかなかにしぶといな。だが、これで奴も終わりだ」

 吹き飛んだナイトメアによって空いた大きな壁の穴から、ナイトメアの最後の姿を見届ける。

 「はっ!はっ!はっ!」

 その後方では、魔力欠乏症と限界突破による能力以上の力を発揮した反動により、日向は過呼吸となり苦しそうに胸を抑える。

 「日向殿!」
 「日向!」

 リナとエミは、慌てて日向に駆け寄り、水魔法の「療水(ヒール)」で過呼吸を止め、マジックポーションをゆっくりと飲ませる。

 「はぁ……助かりました。ありがとうございます」

 日向はリナのもちむちっとした雪のように綺麗な太ももを枕にして、お礼を言う。

 「良かった……」

 2人は胸を撫で下ろす。

 「ナイトメアはどうなりました?」

 日向はリナの太ももから起き上がり、2人に尋ねる。

 リナは少し寂しそうな顔をして、「はい。まだ消えていませんが、外で悶え苦しんでいます」とナイトメアの声がする方を指差す。

 「もう。本当に!気持ち悪い姿だったから見ない方がいいわよ」

 エミは、鳥肌の立つ腕をさすりながら、心底嫌そうに話す。

 「ははは。なら、遠慮しておきます」

 戦いが終わり和やかな空気が流れる。

 「やっと隙を見せたな……」

 大きく開いた壁の穴の方から外で苦しんでいたはずの魔人の声……

 その声を聞いた3人は一気に臨戦体勢へと移ろうとして体が動かない……

 (ふん!く!)

 体に力は入るがなぜか動こうとすると無意識にブレーキがかかり、体が震えて動かない。

 (この世界にきて初めてゴブリンやオーガを目にした時と同じ。逃げたいのに、恐怖から思考が定まらず、体が動かない。腰を抜かした時のような感じ……) 

 「遅い……もうすでに俺の魔法によってお前達は支配されている」

 ナイトメアは不気味に笑う。

 ********************

 ーナイトメアsideー

 (ち!3人の連携攻撃を全て受け切っているのに苛立ちや焦りが見えない……)

 ナイトメアのオリジナル闇魔法「精神支配(メンタルコントロール)」は、生物の心が不安や苛立ち、安心などによって横線を保っていた感情の線がプラスやマイナスに上下した時にできる心の隙間に自身の魔力を流し込んで恐怖で支配する魔法。

 その為、相手が冷静だと使えない。日向達3人が心の隙を見せないから、内心では少し苛立っていた。

 しかし、常に計算し、どんな状況でも利用して魔法にかけてきたナイトメアは、すでに次の手を考えついていた。

 (2つの盾を手に変更)

 自身の周りを飛ぶ闇魔力の盾を手へと変形させる。

 その瞬間、後方に下がっていた勇者が前に出てきた。

 (よしよし。いいぞ)

 そして、勇者と赤い髪の女が飛び出してきたので、闇の手で攻撃、左右に分かれて避け、右からの勇者の攻撃を剣で止める。

 女に向けて闇の手で殴りつけ時間を次の行動への算段をつける。

 女が切り掛かってきたのを察知し、勇者が前のめりに体重をかけた瞬間に剣を消して、左前に飛ぶ。

 攻撃を避けられた勇者どもは、目配せをすると俺の目論見通り、勇者は、魔王様の記憶で見たスキルを使ってきた。

 (よしよし。後は、勇者の攻撃に反応するだけ……)

 準備の終わった勇者は、予想通り、風の槍を構えて消えた。

 (……うお!)

 こればかりは反応が遅れてギリギリで剣を滑り込ませる。

 (ぐっ!……よし。このくらい耐えればいいか……)

 今までわざと余裕を演じてきた甲斐もあり、ナイトメアが不自然な体勢で受けて、狙い通りに吹き飛ばされても日向達の目には不自然には映らず、騙し通した。

 (これが吹っ飛ぶ感覚か……ゴミ共にやられると頭にくるな……)

 怒りによって判断が鈍らぬように怒りをそのまま解放することにした。

 そして、勇者の女共が魔法を使って俺を閉じ込める。

 ナイトメアは、怪しまれないように激しく怒りつつも魔法の檻を全て吸い込まないように加減する。

 それから少しして、パリィン!と割れる音が聞こえて、帝都を覆っていた雲が消えた。

 太陽の光が差し込み、街の方から傀儡共の叫び声が聞こえてきた。

 「やったな!」
 「やった!」

 女達は喜んでいた。

 (さて、そろそろ……)
 
 それから、太陽の光に照らされて悶え苦しむ姿を見せた。

 (ゴミ共の赤ん坊が駄々をこねる感じで良いか……)

 スライム状になった体を激しく隆起させて、たまにアクセントとして壁にぶつけてみたりした。

 「しぶといわね」
 「ああ。だが、これで奴も終わりだ」

 女達は話していた。

 (クソ!後で地獄を見せてやるからな!いつまでも見てないでさっさと勇者の元へ行ってしまえ!)

 「ああああああ!」

 苦しむ演技をしながら内心でキレる。

 それからしばらくして、女達は勇者の元に駆けつけていった。

 「ふぅ……やっといなくなったか」

 ナイトメアは元の少女の姿に戻る。

 (魔法陣を犠牲にした甲斐があった。どうせあんな使えない傀儡共など必要性を感じていなかったから、逆にスッキリしたな。それに最後だけは役にたったな。勇者共の心に隙が生まれた……)

 「精神支配(メンタルコントロール)」

 ナイトメアは魔法を発動し、空気中に自身の魔力を気取られないように漂わせ、呼吸と共に勇者達の体内へと魔力を流し込んでいく。

 ****************

 ー現在ー

 「いい表情だ!動きたいのに動けなくて苦しいか!あははは!」

 生物の苦しむ顔を見るのが堪らなく好きなナイトメアは、高らかに笑う。

 「ああ……こんなに笑ったのは久方ぶりだ。その礼として、私からは悪夢を贈ろう。悪夢にうなされ、精神を壊して、死ね!「悪夢(ナイトメア)」」

 ナイトメアは、勇者達に向けて手を開いて向ける。手をかざすと、周りには赤黒い魔力が現れ、透明な雲のような形になり、勇者達に向かって飛んでいく。

 「くそ!」
 「動け!私の体!」
 「く!」

 必死に抵抗する日向達。

 しかし、体は動かず、魔力の源である、心臓の中赤黒い雲は入っていった。
 
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