いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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知り合い

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 王都から東南に5kmの平原……聖国へと伸びるレンガ作りの赤い道、太陽により綺麗な黄緑色を取り戻した草原、生き残った動物達が活発に行動する森、少し離れたところには王都名物の金脈山が紅葉を迎えようとしている。

 そんな街道沿い……

 「ん!このお菓子美味しいわね!……おかわり!」

 エマがお菓子を爆食いする。

 30人の兵士達が周りを警備する天幕の中では、国王、守備隊長のチェン、日向、リサ、エミ、ミカが各々の椅子に腰掛け、脇に用意された小さな丸テーブルに紅茶、バスケットに入ったクッキーとパウンドケーキが置かれ、各々マイペースに頂いていた。


 「こら!食べてばかりいないで早く事情を説明しろ!」

 そんなエマにチェンが椅子から立ち上がり怒鳴る。

 「そうだったわね……おほほほほ!私としたことがはしたないところを……」

 ポケットからシルクの真っ白なハンカチを取り出して口を拭い、話し始める。

 時は遡ること1時間前……

 「魔王を倒すために私と共闘しない?」

 エマの突然の提案の内容が理解できず、日向は思わず、「は?」と耳にした言葉を疑い聞き返す。

 「まあ……そうなるわよね……」

 こうなることを予想していたエマは前方を見る。

 「日向殿ー」
 「日向ー」

 前方からはエミの水神魔法「リヴァイサン」の背にエミ、リナ、ミカが乗って、30mの大きな水の東洋龍が空を蛇のように体をくねくねさせて進んでくる。

 ドガン!ドガン!ドガン!……

 その後ろを15mの岩の巨人がチェンを乗せて走ってくる。

 「よかったぁ……」

 エマは岩の巨人を見て安堵する。

 「日向殿ー!」
 「勇者様!」

 更にその後方、全身赤色のタイツの国王と紅蓮の隊士30名(全員男)がスーパーマンのように白いマントを風に唸らせ飛んでくる。

 「……何、あの変態集団……」

 流石のエマも全身ぴっちりタイツの男が集団で31人も並んで飛んでくる光景には、顔を青ざめさせる。

 (勧められるままに着なくてよかったぁ)

 誇らしげに全身タイツを着て、空を飛びこちらへと飛んでくる集団を見て日向は内心着なくてよかったとほっとする。

 (機能は素晴らしいんだけど……下半身のもっこりが……)

 ドガンドガンドガン!

 みんなよりも一足先に岩の巨人が日向達の元に到着する。

 「日向殿!そいつを逃すなよ!」

 齢70を超えた老人が15m(マンション5階相当の高さ)から腰に両手を当てたまま飛び降り、ちょこん……と普通に着地する。
 
 「その様子だと私のこと覚えていたのね!チェン!」

 エマは再会を懐かしむように名前を叫ぶ。

 地面を眺めるように下を向いていたチェンが顔を上げる。

 ギロリ……と殺意全開の目でエマを睨み……

 「その風貌に、その喋り方、野太い声……王都の空を飛ぶ姿を見た時にそうではないかと思ったが…やはりか…」

 チェンは杖を投げ捨て、曲がっているはずの腰を伸ばし、100m走の選手のように綺麗に足を上げ、腕を振る。さながら、ボ〇ト選手のように30mからグングン加速し、トップスピードを維持してエマの前まで走る。

 「とう!」

 走り幅跳びの選手のようにジャンプの瞬間に上体をのけぞらせる。空中では体勢を仰向けにして両足をそろえて伸ばし、そのままエマの顔面にクリーンヒットさせる。

 「このバカ者があ!」
 「あは~ん♡」

 エマは鼻血を垂れ流し、白のワンピースを血で染め、日向の元へ幸せそうな顔で倒れ込む。

 「こ、これは!夢にまで見たお姫様抱っこのチャンス!」

 あ~れ~ぇぇぇ……と両手をあげて日向に倒れ込む。

 「……あ」

 日向は突然のドロップキックで後ろに倒れてくるとは予想しておらず槍を突き出したままにしていたので……

 「ギャアアア!」

 槍が背中に思いっきり刺さり、エマは絶叫する。

 「全く!聖国で一緒に戦っていた時から何も変わらんな!トルクス!」
 「違うわよ!何回言えばわかんのよ!この耄碌ジジイ!私は昔からエマだって言ってるでしょ!それに蹴る事ないでしょ!」
 「ふん!1の魔人だということを隠していたお前が悪い!お望みならもう一回蹴ってやるわ!」
 「良い度胸じゃない!あの時は正体を隠していたから遠慮していたけど、今は違うわ!すり潰してやる!」

 エマとチェンは睨み合い、互いに武器を構える。

 「死ね!見た目だけ詐欺!」
 「あんたこそ!死ね!天辺ハゲ!」

 2人とも一般人では消えたと錯覚するような速度で互いに距離を縮め、チェンは刃渡り50cmのナタ、エマは刃渡り100cmの大きな斧を同時に振り下ろす。

 「縮地!」
 「瞬動!」

 2人の武器が交差する直前に、日向とリナが2人の間に入り込み、チェンのナタはリナ、エマの斧は日向が受け止める。

 「邪魔するな!この見た目詐欺を仕留めるのはわしだ!」
 「そうよ!この天辺だけ焼かれたようにはげてるハゲ!を仕留めるのは私よ!」

 2人は日向とリナを睨みつける。

 「待ってください。お2人の関係について説明してください!」
 「そうです。2人とも知り合いのようですが、どのようなご関係なのですか?」
 
 そんなやりとりをしているとリヴァイアサンを解いて降りてきたエミとミカ、続いて全身タイツ集団が日向達を取り囲むように周りに着地する。

 「日向殿達のいう通りだ。チェン!説明しろ!」

 国王の命令にしぶしぶナタをマジックバックの中にしまう。

 「この見た目詐欺は、わしが魔王達を相手に聖国で義勇軍を指揮していた時の部下の1人です。見た目は少女のようですが、当時と変わらず野太い声、大きな斧を武器とし、戦場を白のワンピースと裸足で駆け回っていたので間違いありません」

 再びナタを取り出して、エマを睨みつけながら話す。

 「そうか……」

 2人が今にも斬り合いを再開しそうな雰囲気を察した国王は、「お前達!周りに見られないように天幕を張れ!」と紅蓮の隊士達に命じる。

 「は!」

 一矢乱れな敬礼をし、即座にマジックバックから大きな布、机、椅子を取り出し並べていく。

 「どうぞお触りください」

 準備はあっという間に終わり、全員が進められた椅子に腰掛け、隊士達はお辞儀をして天幕を出ていった。

 ーそして現在ー

 30分……クッキーをひたすら食べて一旦満足した様子のエマは紅茶で喉を潤わせ、話し出す。
 
 「まずは、いきなりの訪問により混乱を招く結果を生んでしまい申し訳ありません」

 エマは丁寧な言葉で謝罪する。

 これまで「あらぁ」「もう♡」など砕けた?口調で話していた印象からガラリと変わった丁寧な口調と態度に全員が今話している相手がエマなのか疑わしくなり「え?」と思わず声に出してしまう。

 「何よう!本当に申し訳ないと思ったから口調を真面目にしたのに!もういいわ!元の口調で話させてもらうわ!」

 みんなの反応に、私だって時と場所くらい考えて話すことくらいできると感じたエマはぷりぷり怒り、元の口調に戻す。

 「ほっ」

 元の口調に戻ったことに一同は安堵する。

 「本当に失礼な人たちね!もういいわ!めちゃくちゃ端折って話すからね!まずは、昨日私が魔王を襲撃して殺されかけた時に伝えるように言われた事から……」
 
 ごほん!……あーあー……

 声が低い男性の倍は出っ張っている喉仏を手で揺さぶったりしながら話し始める。

 「私のモルモット2体をよく倒した。褒めてやる」
 
 魔王と直接対峙したことのある者達は、「似てる……」とエマの声モノマネに驚愕する。

 「私って器用だから!」

 エマは胸を張る。

 「早く続きを聞かせろ!」

 要件が気になるチェンはエマに怒鳴る。

 「全く。遊び心がないんだから…ぐふん!…「褒美として私の全戦力で侵攻する。ただし、虫どもにも少しだけ猶予をやる。1ヶ月……グラビt……エマが伝えてから1ヶ月後に侵攻を開始する。それまでに少しでも準備を整え、私の遊び相手を立派に務めあげろ」……以上よ」

 魔王からの伝言が伝えられると、その場が一気に静寂に包まれる。

 「魔王からの伝言はわかりました」

 静寂を破り、日向がエマに尋ねる。
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