いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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締結

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 「あなたは僕達と手を組みたいと言っていましたがなぜですか?」

 日向はエマに尋ねる。

 日向に集まっていた視線が一気にエマに向けられる。

 (なんだか落ち着かないわね…)

 エマは一斉に向けられる視線に少しだけ嫌悪感を抱く。

 気分的には、先生からの信頼が厚い子からいじめを受けて、先生にその子からいじめを受けていると伝えても「そんなことするわけないだろう。嘘はよくないぞ!」と叱られる時のような感覚。

 (私の考えすぎなだけなんだけどね…それでも一斉に視線を向けられるといい気分ではないわね…)

 紅茶のカップを口につけながら、流し目で観察したエマは日向だけに視線を向けて話す。

 「魔王と私が敵対しているから。敵の敵は味方って発想で」

 おかわりのクッキーを一つ摘(つま)む。

 「なるほど……聖国でチェンさんと共に魔王と戦っていたというのは?」

 日向の表情の動きなどを見る。

 「これまで何度も1人で挑んだけど魔物達に阻まれて魔王とまともな状態で戦えたことがなかったの。だから、対立している人間の中に紛れれば魔王と1対1で戦うチャンスがあると思ったから」

 目を逸らす事なく答える。

 「……」
 「……」

 互いに目を逸らす事なくしばらく見つめ合う。

 「国王様……」

 日向は隣に座る国王を見る。

 「信用しても問題ないと思います」

 エマに向いていた視線が国王に集まる。

 「日向殿が言うのなら問題ないだろうな……民もミカ殿と接して、魔族の中にも分かり合える者がいることを知ったからそちらもしっかりと伝えれば問題はないだろう」

 国王はエマからの共闘の申し出を受諾する。

 「エマ殿。よろしく頼む」

 国王が頭を下げると日向達も国王に続き

 「よろしくお願いします」

 と、エマに向かって頭を下げる。

 もう少し色々なことを詮索されると思っていたエマは、

 「そんな簡単に信じていいの?私はあなた達が憎む魔物の1人なのよ」

 と聞いてしまう。

 日向は再びエマの目を真っ直ぐ見る。

 「人は嘘をつく時、独特の雰囲気と視線は途中で下を向きます。それにあなたからは他の魔物達のような悪意は感じませんし、何よりこちらの気持ちを考えて話されている」

 国王の命令で外の隊士達が天幕を撤去し始める。

 「それだけであなたは他の魔物と違う……と僕は思います」

 日向はにっこりと笑う。

 「……」

 ドクン……

 エマは日向の笑顔を凝視する。

 (やだ……タイプだったけど本気で持ってかれたかもぉ……)

 ギュッと両手で胸を握る。

 「あ!重要なことを忘れてました。共闘するなら同じ戦場で戦ったことのあるチェンさんと一緒が良いと言うことですよね?」

 王都へ戻ろうとした日向は振り返り、エマに尋ねる。

 「あんな焼け野原はお断りよ!……20分の1」

 エマは重力を軽くして、移動速度を早め、残像を残すスピードで日向の脇へと移動する。

 「あなたがいいわぁ♡」

 日向の左腕に両手を絡め、手は恋人繋ぎをして抱きつき、頭を左肩に預ける。

 「え!ちょっ……」

 日向はエマの額を右手で引き剥がすように押す。

 「あぐ!……もう!照れてるのね♡かわいい♡」

 日向に思いっきり頭を押されて海老反りになりながらも絡めた腕だけは絶対に離さない。

 「本当に離れて欲しいんですけど!」

 日向にしては珍しく素直に拒絶する。

 「もう……い・や・よ♡」
 「身体強化「 Ⅴ」……日向殿の右腕は私だけのものだ!離れろ!」

 拒絶し続けるエマの背後にリナが現れて両足を持ち引っ張る。

 「く!身体強化している私でもビクともしない!」

 素の筋力で20mの巨木を地面から引き抜いてしまうリナの力を持ってしてもエマはびくともせず日向の右腕に抱きついたまま。

 「じゃあ、今日から私の定位置ね♡よろしくね♡」
 
 バキバキバキ……

 骨が砕ける音が響く。

 「ギャアアア!僕の右腕!」

 引き剥がそうとするリナに抵抗するために絡めた腕に思いっきり力を入れたエマによって日向の右腕が砕かれてしまう。

 特に肘から先の感覚がなく動かない。

 「くぅぅ!瞬動!」

 引き剥がさないと悟ったリナは、エマの両足を投げ捨て、残像を残す速度で日向の左腕まで移動し、両手を絡める。

 「ふん!」

 腕を絡めたリナは、このポジションだけは誰にも渡さない!と言う意思を示すように両手を絡めた後に全力で抱きつく。

 バキバキバギィィ!……

 右腕が砕けた時よりも小刻みの良い音が鳴り響く。
 
 「ぎ……きゃあああ!!」

 日向は叫び、がくん……と空を見上げたまま白目をむく。
 
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