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ロベルト・ボルテン

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 俺の名前は「ロベルト・ボルテン」

 ボルテン王国の第三王子をしている。趣味……というレベルを超えて熱中しているものがある。それは「絵」を描くこと。

 昔から「王子」という自身の立場についてピンとこないというかやる気が出なかった。上の兄二人は国王の座を巡って争ってる。

 ただ、俺はそんなことよりも「絵」に夢中だった。寝ても覚めても「絵」のことばかりが頭を支配した。

"出来損ない"   "落ちこぼれ王子"

 なんて言われたりもして辛かったけど「絵」を書いている時は自分が王子であること、出来損ないと言われている現実を全て忘れられた。

 そのうち手に負えなくなった俺を見かねて俺の母ーーボルテン王国女王「エリザベス・ボルテン」の命で王城を追い出される形で王立学院に入学した。

 実の親に捨てられたーーその事実は辛くはあった。それでも俺には「絵」があった。

 授業はほとんど受けずにアトリエ兼生活拠点である学院北の外れにある廃墟にこもってひたすらに絵を描いた。

(やっぱり絵は楽しい!最高だ!)

 とにかく思いつく限り手当たり次第に……だが、そんな大好きな絵も最近は苦しくて仕方なくなっていた。

「ダメダメだ」

 今までならスラスラと迷いなく描けていたのだけど、最近の俺は何を描いたらいいのかわからなかった。なぜなら、

「あ、アイデアが降ってこない!?」

 という状態がずっと続いていたから。根を詰めているのが良くないのかと思って読書したり、散歩したり、俺にしては珍しく456日ぶりに登校してみたりと少しだけ絵から離れた。が、

「あ、アイデアが降ってこない」

 という状態が改善することはなかった。どうしたらいいのか全くわからなかった。

(とりあえず帰るか)

 絵から離れても状態が改善するわけではないと悟った俺は、456日ぶりに登校した教室から自室へ戻ろうと出口に向かって歩き出した。

「あ!」

 しかし女の声が背後から聞こえた。直後、ものすごい痛みがケツから発生して、一気に体内を駆け巡り脳天に直撃した。

(っ!)

 瞬間、

(あ、アイデアが)

 どんなに考えても降りてこなかった

(降ってきたぁぁぁ!!)

 次作品についてのアイデアが降ってきた。

「お、お前……」

 俺は声のした方へ振り返った。お礼を言いたかったから。ただ、

「……」

 お礼を言おうとした俺は女を見て固まってしまった。

「……?」

 女は状況が理解できないのか俺を見て首を傾げた。

(な、なななな……)

 しばらく俺は俺のケツに手を突っ込んだままの女を見つめていた。そしたら急に鼓動が激しくなって身体が熱くなった。

「はうっ!」

 鼓動はどんどん激しくなって一気に弾けた。その反動で苦しい胸を押さえたまま無様な言葉を発した。

「?」

 俺の突然の反応に戸惑う女やクラスメイト達。

(う、美しい)

 しかし周囲の反応なんて今の俺にはどうでも良かった。しばらく天井を見つめたあとに女へと向き直り、
 
「一緒に来い!」

「えっ?!」

 女の手を掴むと俺は教室を飛び出した。
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