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何やってん俺!どうなるの私!(キャロル、ロベルト視点)
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授業開始を告げる鐘を背に俺ーーロベルトは、
(何やってんの)
二学年棟の廊下を走っていた。
(何やってんの!おれ!)
どこか人気のない場所を目指して。
「はぁはぁ……」
なぜなら
「ちょ、ちょっと待って」
女の手を引いて走っていたから。
(何で連れてきてんの俺!)
女の手を取って教室から走り出したことに特に意味はなかった。ただとっさに、気がついたら手を引いていた。
(それにさっきから心音がうるせぇ!)
女を見てからというもの、うるさく鳴り続ける心臓を左手で掴んで握った。
(どうなってんだよおれー!)
◇◇◇◇◇
キャロルside
「はぁはぁ……」
運動が嫌いで体力のない私は力強く握られて外せそうにない右手を見つめた後に、私の前を走る男ーーロベルト殿下の背中へと視線を移した。
(やっぱりさっきのこと怒ってるのかな?)
不可抗力による結果とはいえ、私はこのボルテン王国の王族にして、王位継承権第三位の地位にあらせられる方のお尻に左手をめり込ませてしまった。
「……洗いたい」
王子のお尻にめり込んだ左手を見ていたらなんか無性に手を洗いたくなって、思わずボソッと口に出してしまった。
(……って何口走ってんの私!)
しかし、すぐに我に返って己がしでかしてしまった事に深く後悔した。なぜなら、
(知らないわけじゃないでしょ!ロベルト殿下の噂を!)
ロベルト殿下には噂があったからだ。
(学者を凌駕するほどの頭脳、そして同性異性問わず魅了してしまうほどの端麗な容姿)
というもの。まあ、ここまでは歴代の王族なら誰しもが、その偉大さを誇張するために噂される内容となっている(実際の所は真反対であることも少なくない)
(まあ、ロベルト殿下は……)
廊下の突き当たりを曲がり、渡り廊下へ突入した。その時にチラリとロベルト殿下の横顔が見えた。が、太陽の眩しい光に照らされているわけではないのにロベルト殿下の横顔は眩しすぎて直視できなかった。しかし視界が霞む一瞬、その顔を見ることができた。
(やばい……めっちゃイケメンだった)
一瞬にしてトキめいてしまった私の心はしばらく騒がしく鳴り続けた。
(……て、いけないいけない!)
でも、それどころではない状況であると思い出して我を取り戻した。
(えっと、確か。性格に関しては、全ての王侯貴族が手本にするほど素晴らしい人格者である。なんてのを耳にしたっけ)
これだけ聞けば、
「何だ。そんな人格者なら浣腸してしまったことくらい些末な事として許してくれるはずだ」
と安心できるだろう。だけど、世の中はそう上手くいかないもので、この噂には続きがある。
(だが、その本質はとても厳しい。王族に対する愚痴を耳にしただけで愚痴を言った者の首を刎ねてしまうほど容赦ない)
というものである。
(……ぎゃあああ!!私のしたことって愚痴以上の非礼じゃん!!だってめり込ませちゃったもん!!お花を積む以外ではそのご尊顔をお隠しになっている肛〇様に「こんにちは」しちゃったもん!!私の左手が!)
頭を抱えたくなった。しかし左手は今現在、王子の尻によって穢れてしまっていることを思い出して踏みとどまった。
(死にたくないー!)
◇◇◇◇◇
ロベルトside
渡り廊下の真ん中まで進んだ所で右へ曲がって中庭へ突入した。人気のない場所まで残り半分の距離。
(と、とりあえずおちゅつ……落ち着け!!)
俺はテンパった自分を落ち着けるために女に気づかれないように深呼吸をした。すると、数秒前よりはいくらか冷静さを取り戻せた。
(まずは状況を整理しよう)
冷静になった頭でも即座に何から手をつけて良いかわからなかった俺は、まずは現在までの出来事を振り返る事にした。
(確か俺は次に書く絵が思い浮かばず、ひどく悩んでいて、いつもならあり得ない「登校」を456日ぶりにしてしまった)
と状況を整理する間も深呼吸して自身を落ち着けた。
(そのあとは絵から離れてみても結局はアイデアなんて降ってこないと気づいてアトリエへ戻ろうとしたんだ。その時に女の声がしたと同時にケツからとんでもない衝撃が発生して脳天を直撃してずっと降ってこなかったアイデアが降臨なされて)
振り返るという一つのことだけに集中する事で次第に混乱していた思考が正常に働くようになって冷静さが戻ってきた。
(次作品の構想が固まって、そのことが嬉しくてお礼を言おうとして振り返った時に……)
絹のような透明感のある白い肌、小さく可愛らしいピンクの唇に、整った鼻。そして何よりも魔導灯の光に照らされた白い髪は夜空を照らす灰色の月のように妖しく輝いて見えて……ものすごく美しかった。
(……って思い出したら、また心臓がっ!)
ようやく冷静さを取り戻した心臓がまたうるさく鳴り始めたので意識を現実へと引き戻した。
(と、とにかく!そう言った事に鈍い俺でも、さすがに今のこの反応が何なのかわかる。俺は今……恋してます!)
声に出してはいない。あくまでも心の中で自答しただけ。なのに、恋をしてしまったと認めた瞬間に今まで以上に心臓が弾けた。
(え、え、待って!今って人気のない場所に向かって走ってんじゃん!これって流れ的に "アレ" をしなくちゃいけないんじゃね!自分には無縁だと思っていた思春期特有の "アレ" を)
思春期特有の "アレ" とはーー好きな人を校舎裏に呼び出す手紙を下駄箱に忍ばせてからドキドキした1日を過ごし、夕陽が照らす校舎裏に現れた意中の相手に想いを伝える的なやつだ。
(……無理!リアルに想像したけど、想いを伝えるとかどんな勇者だよ!それに勇気を振り絞って伝えたのに断られたら立ち直れそう……にないな!ない!)
「無理」ーー早々にそう結論づけた俺の頭の中では、人気のない場所に着いたら女に対してどう言い訳をするかという議論が始まっていた。
(とりあえず一言目は謝って……その次がどうすればいいか思いつかないな。どうするか)
なかなかに良い案は出なかったけど、何とかなるだろうと思考を切り替えて次の議題に移ろうとした時、
" 何か申し開きすることはありますか? "
不意に母ーーエリザベス女王陛下の顔が、王城を追い出される当日の朝に最後に言い残すことはないかと問われた時のことが思い浮かんだ。
(何で今)
思えば生まれてから母であるエリザベス女王陛下と初めてまともに話したのがあの時だった。物心ついた時から優秀な上の兄二人はエリザベス女王陛下と勉強や将来なんかについて話していた。だけど、出来損ないの俺の事には興味がなかったのか話しかけようとすると執事が遮ることが多く、向こうから話しかけられることもなかった。
(……)
本当は伝えたい事があった。
「俺。王子としてはダメダメだけど「絵」が好きで、描いているうちにこんなに上手くなったんだぞ」
って自慢したかった。だけど、何か申し開きがあるかと問われた俺は、何も言わなかった。言ったところで迷惑になるだろうって思ったから。でも、あの後ものすごく後悔した。「想い」は思ってるだけじゃ、言葉にしなくちゃ伝わらない。
(……)
◇◇◇◇◇
キャロルside
中庭を抜け、体育館裏へ通じる小道を駆ける。
(まだ死にたくないー!まだ「俺って王子なの?物語」だって読みかけなのにー!)
そんな中、私はどうしたらこの窮地を脱することができるのか策を練るために必死に思考を巡らせた。
(どうしよ……どうしよう!)
でも、そんなすぐに良いアイデアなんて浮かぶはずもなく、焦りばかりが募っていった。
(まだ死にたくない!こんな所で!)
迫りくる「死」を必死に振り払い「生」にしがみつくために思考を巡らせ続けた。たとえ良いアイデアが浮かばなくても巡らせた。それだけ今の状況をどうにかして生きたかった。だけど、
" 君との日々は苦痛でしかなかった "
マイクの顔がよぎった。
" さよなら、醜い老婆さん "
私の大嫌いなマリアベルを隣に侍らせて、清々しい顔を浮かべたマイクが最後に私に言い残した言葉がよぎった。
(……)
大好きだった。嫌いで嫌いでたまらなかった自分の髪を少しだけ好きになれたきっかけをくれた人。こんな私でもこの世界に存在して良いんだと肯定してくれた人ーーかけがえのない存在だった。なのに……、
(どうして)
将来を誓い合った彼は、
(どうして……何かいけないことをしてしまったの?)
突然、私を捨てた。
(何がいけなかったの?何か気に障ることをしてしまったの?)
何で?ーー突然のことで理解できず疑問ばかりが浮かぶ。だけど、何で?と聞きたい人はもういない。私の前からいなくなった。私のことなんか見向きもしなかった。
(もういいや……どうなろうと)
私が諦めた時、
「……」
ロベルト殿下が足を止めた。だから、私もそれに合わせて殿下にぶつからないように足を止めた。
◇◇◇◇◇
ロベルトside
"「想い」は思ってるだけじゃ "
「ふぅ……」
人気のない体育館裏に着いた俺は足を止めた。学園の北に位置するため、北西の空で輝く太陽が体育館の屋根から少しだけ顔を出し、俺たちを照らした。
(何だろう……名前も知らない女にいきなり告白するとか頭がおかしいヤツだって事はわかってる)
" 言葉にしなくちゃ伝わらない "
(でも、何だろう……なんかやだな)
俺らしくないって事はわかってる。でも、ここで言わなくちゃ俺の大切な何かが壊れるような気がした。
「ふぅぅ」
空気を吸って鼓動を落ち着ける。俺はいつも肝心な時に噛んだりするからまずは冷静になることが大事。
(……よし!)
それから覚悟を決めて女へと振り返り、
「お、俺はさっき、あなたを一目見てからずっとあなたのことが頭から離れなくて……た、頼む!君の全てを俺にくれ!」
回りくどくなってしまったけど、俺にしてはストレートに想いを伝えた、と思う。
「え」
俺の想いを聞いた女は、
「……」
しばらく固まった後、
「えええええ!!!」
と頬を赤く染めて絶叫した。
(何やってんの)
二学年棟の廊下を走っていた。
(何やってんの!おれ!)
どこか人気のない場所を目指して。
「はぁはぁ……」
なぜなら
「ちょ、ちょっと待って」
女の手を引いて走っていたから。
(何で連れてきてんの俺!)
女の手を取って教室から走り出したことに特に意味はなかった。ただとっさに、気がついたら手を引いていた。
(それにさっきから心音がうるせぇ!)
女を見てからというもの、うるさく鳴り続ける心臓を左手で掴んで握った。
(どうなってんだよおれー!)
◇◇◇◇◇
キャロルside
「はぁはぁ……」
運動が嫌いで体力のない私は力強く握られて外せそうにない右手を見つめた後に、私の前を走る男ーーロベルト殿下の背中へと視線を移した。
(やっぱりさっきのこと怒ってるのかな?)
不可抗力による結果とはいえ、私はこのボルテン王国の王族にして、王位継承権第三位の地位にあらせられる方のお尻に左手をめり込ませてしまった。
「……洗いたい」
王子のお尻にめり込んだ左手を見ていたらなんか無性に手を洗いたくなって、思わずボソッと口に出してしまった。
(……って何口走ってんの私!)
しかし、すぐに我に返って己がしでかしてしまった事に深く後悔した。なぜなら、
(知らないわけじゃないでしょ!ロベルト殿下の噂を!)
ロベルト殿下には噂があったからだ。
(学者を凌駕するほどの頭脳、そして同性異性問わず魅了してしまうほどの端麗な容姿)
というもの。まあ、ここまでは歴代の王族なら誰しもが、その偉大さを誇張するために噂される内容となっている(実際の所は真反対であることも少なくない)
(まあ、ロベルト殿下は……)
廊下の突き当たりを曲がり、渡り廊下へ突入した。その時にチラリとロベルト殿下の横顔が見えた。が、太陽の眩しい光に照らされているわけではないのにロベルト殿下の横顔は眩しすぎて直視できなかった。しかし視界が霞む一瞬、その顔を見ることができた。
(やばい……めっちゃイケメンだった)
一瞬にしてトキめいてしまった私の心はしばらく騒がしく鳴り続けた。
(……て、いけないいけない!)
でも、それどころではない状況であると思い出して我を取り戻した。
(えっと、確か。性格に関しては、全ての王侯貴族が手本にするほど素晴らしい人格者である。なんてのを耳にしたっけ)
これだけ聞けば、
「何だ。そんな人格者なら浣腸してしまったことくらい些末な事として許してくれるはずだ」
と安心できるだろう。だけど、世の中はそう上手くいかないもので、この噂には続きがある。
(だが、その本質はとても厳しい。王族に対する愚痴を耳にしただけで愚痴を言った者の首を刎ねてしまうほど容赦ない)
というものである。
(……ぎゃあああ!!私のしたことって愚痴以上の非礼じゃん!!だってめり込ませちゃったもん!!お花を積む以外ではそのご尊顔をお隠しになっている肛〇様に「こんにちは」しちゃったもん!!私の左手が!)
頭を抱えたくなった。しかし左手は今現在、王子の尻によって穢れてしまっていることを思い出して踏みとどまった。
(死にたくないー!)
◇◇◇◇◇
ロベルトside
渡り廊下の真ん中まで進んだ所で右へ曲がって中庭へ突入した。人気のない場所まで残り半分の距離。
(と、とりあえずおちゅつ……落ち着け!!)
俺はテンパった自分を落ち着けるために女に気づかれないように深呼吸をした。すると、数秒前よりはいくらか冷静さを取り戻せた。
(まずは状況を整理しよう)
冷静になった頭でも即座に何から手をつけて良いかわからなかった俺は、まずは現在までの出来事を振り返る事にした。
(確か俺は次に書く絵が思い浮かばず、ひどく悩んでいて、いつもならあり得ない「登校」を456日ぶりにしてしまった)
と状況を整理する間も深呼吸して自身を落ち着けた。
(そのあとは絵から離れてみても結局はアイデアなんて降ってこないと気づいてアトリエへ戻ろうとしたんだ。その時に女の声がしたと同時にケツからとんでもない衝撃が発生して脳天を直撃してずっと降ってこなかったアイデアが降臨なされて)
振り返るという一つのことだけに集中する事で次第に混乱していた思考が正常に働くようになって冷静さが戻ってきた。
(次作品の構想が固まって、そのことが嬉しくてお礼を言おうとして振り返った時に……)
絹のような透明感のある白い肌、小さく可愛らしいピンクの唇に、整った鼻。そして何よりも魔導灯の光に照らされた白い髪は夜空を照らす灰色の月のように妖しく輝いて見えて……ものすごく美しかった。
(……って思い出したら、また心臓がっ!)
ようやく冷静さを取り戻した心臓がまたうるさく鳴り始めたので意識を現実へと引き戻した。
(と、とにかく!そう言った事に鈍い俺でも、さすがに今のこの反応が何なのかわかる。俺は今……恋してます!)
声に出してはいない。あくまでも心の中で自答しただけ。なのに、恋をしてしまったと認めた瞬間に今まで以上に心臓が弾けた。
(え、え、待って!今って人気のない場所に向かって走ってんじゃん!これって流れ的に "アレ" をしなくちゃいけないんじゃね!自分には無縁だと思っていた思春期特有の "アレ" を)
思春期特有の "アレ" とはーー好きな人を校舎裏に呼び出す手紙を下駄箱に忍ばせてからドキドキした1日を過ごし、夕陽が照らす校舎裏に現れた意中の相手に想いを伝える的なやつだ。
(……無理!リアルに想像したけど、想いを伝えるとかどんな勇者だよ!それに勇気を振り絞って伝えたのに断られたら立ち直れそう……にないな!ない!)
「無理」ーー早々にそう結論づけた俺の頭の中では、人気のない場所に着いたら女に対してどう言い訳をするかという議論が始まっていた。
(とりあえず一言目は謝って……その次がどうすればいいか思いつかないな。どうするか)
なかなかに良い案は出なかったけど、何とかなるだろうと思考を切り替えて次の議題に移ろうとした時、
" 何か申し開きすることはありますか? "
不意に母ーーエリザベス女王陛下の顔が、王城を追い出される当日の朝に最後に言い残すことはないかと問われた時のことが思い浮かんだ。
(何で今)
思えば生まれてから母であるエリザベス女王陛下と初めてまともに話したのがあの時だった。物心ついた時から優秀な上の兄二人はエリザベス女王陛下と勉強や将来なんかについて話していた。だけど、出来損ないの俺の事には興味がなかったのか話しかけようとすると執事が遮ることが多く、向こうから話しかけられることもなかった。
(……)
本当は伝えたい事があった。
「俺。王子としてはダメダメだけど「絵」が好きで、描いているうちにこんなに上手くなったんだぞ」
って自慢したかった。だけど、何か申し開きがあるかと問われた俺は、何も言わなかった。言ったところで迷惑になるだろうって思ったから。でも、あの後ものすごく後悔した。「想い」は思ってるだけじゃ、言葉にしなくちゃ伝わらない。
(……)
◇◇◇◇◇
キャロルside
中庭を抜け、体育館裏へ通じる小道を駆ける。
(まだ死にたくないー!まだ「俺って王子なの?物語」だって読みかけなのにー!)
そんな中、私はどうしたらこの窮地を脱することができるのか策を練るために必死に思考を巡らせた。
(どうしよ……どうしよう!)
でも、そんなすぐに良いアイデアなんて浮かぶはずもなく、焦りばかりが募っていった。
(まだ死にたくない!こんな所で!)
迫りくる「死」を必死に振り払い「生」にしがみつくために思考を巡らせ続けた。たとえ良いアイデアが浮かばなくても巡らせた。それだけ今の状況をどうにかして生きたかった。だけど、
" 君との日々は苦痛でしかなかった "
マイクの顔がよぎった。
" さよなら、醜い老婆さん "
私の大嫌いなマリアベルを隣に侍らせて、清々しい顔を浮かべたマイクが最後に私に言い残した言葉がよぎった。
(……)
大好きだった。嫌いで嫌いでたまらなかった自分の髪を少しだけ好きになれたきっかけをくれた人。こんな私でもこの世界に存在して良いんだと肯定してくれた人ーーかけがえのない存在だった。なのに……、
(どうして)
将来を誓い合った彼は、
(どうして……何かいけないことをしてしまったの?)
突然、私を捨てた。
(何がいけなかったの?何か気に障ることをしてしまったの?)
何で?ーー突然のことで理解できず疑問ばかりが浮かぶ。だけど、何で?と聞きたい人はもういない。私の前からいなくなった。私のことなんか見向きもしなかった。
(もういいや……どうなろうと)
私が諦めた時、
「……」
ロベルト殿下が足を止めた。だから、私もそれに合わせて殿下にぶつからないように足を止めた。
◇◇◇◇◇
ロベルトside
"「想い」は思ってるだけじゃ "
「ふぅ……」
人気のない体育館裏に着いた俺は足を止めた。学園の北に位置するため、北西の空で輝く太陽が体育館の屋根から少しだけ顔を出し、俺たちを照らした。
(何だろう……名前も知らない女にいきなり告白するとか頭がおかしいヤツだって事はわかってる)
" 言葉にしなくちゃ伝わらない "
(でも、何だろう……なんかやだな)
俺らしくないって事はわかってる。でも、ここで言わなくちゃ俺の大切な何かが壊れるような気がした。
「ふぅぅ」
空気を吸って鼓動を落ち着ける。俺はいつも肝心な時に噛んだりするからまずは冷静になることが大事。
(……よし!)
それから覚悟を決めて女へと振り返り、
「お、俺はさっき、あなたを一目見てからずっとあなたのことが頭から離れなくて……た、頼む!君の全てを俺にくれ!」
回りくどくなってしまったけど、俺にしてはストレートに想いを伝えた、と思う。
「え」
俺の想いを聞いた女は、
「……」
しばらく固まった後、
「えええええ!!!」
と頬を赤く染めて絶叫した。
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