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ざまあside 捨てる

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 4時間目の授業が終わった私ーーマリアベルは、屋上へ続く階段を登っていた。

「ねぇ聞いた?ロベルト殿下とキャロルなんとかって男爵令嬢の噂」

「聞いた聞いた。校内を仲良さげに笑い合いながら歩いていたってやつでしょ」

 その時ちょうど3階の方から2人組の女子が、

「キャロルなんとかって例の『老婆』でしょ」

「そうそう。ロベルト殿下ってもっと聡明な人だと思ってたけど女の見る目ないのね」

 ひそひそ話しながら私の横を通り過ぎて行った。

(出来損ないとロベルト殿下が……)


 ◇◇◇◇◇


 私には姉がいる。名前はキャロル。貴族のくせに魔力を持たずに生まれてきた我が家の「出来損ない」

 その出来損ないぶりは凄まじい。まず社交ダンス、刺繍といった令嬢に必要なことが全くできないダメぶりだ。ただ勉強だけは生意気にも得意らしく同年代でも数本の指に入るらしい。

(まあ、容姿は絶対に私の方が可愛い。げんに私の方がモテる)

 そんなキャロルは存在するだけで両親から疎まれていた。姿を見かけたら「目障りだ」と平手打ちされ、時にはストレスの捌け口として理不尽に罵られたり服を目の前で切り裂かれたり……それでもキャロルはシャツの裾をギュッと握りしめて耐えていた。

 私はキャロルの耐える姿がおかしくて面白くて両親に有る事無い事を告げ口しては理不尽な目にあうキャロルを見て笑った。

 しかしキャロルは生意気にも人生で初めて好きになった人に振られ、私が落ち込んでいたのにマイクと親しくなって笑うようになった。

「なんでお前が笑ってるんだよ」

 その笑顔を見た瞬間、私の中でこれまでの人生で感じたことのない怒りが込み上げてきた。

(出来損ないの分際で……お前なんて一生私のオモチャとして理不尽に怒られて、私を笑わせてくれればいいんだよ!)

 そうして私はあいつーーキャロルが心から大切にしていたマイクを奪ってやった。

「マリアベル!この前話していたダイヤのアクセサリーなんだけど、やっぱり僕の出せる額じゃないから他の宝石でもいいかな?」

 屋上に着くと先に待っていたマイクが私の所へやってきて申し訳なさそうに頭を下げた。そんなマイクを

(こいつも用済みだな)

 白けた目で見つめると私は、

「そう。なら用済みね。二度と私の前に現れないで」

「え?」

「じゃあね」

 そう言って屋上を後にした。

"ロベルト殿下とキャロルなんとかって男爵令嬢が笑い合っていたらしいわよ"

 少し前に階段をすれ違った令嬢達が話していた内容が頭をよぎった。

(そう。今、この時もあの出来損ないは笑ってるのね)

 乾いた笑みを浮かべ

(奪ってやる。全部壊してやる)

 階段を降りた。
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