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その後

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試合から2日……

「う……ここは……」

メイナスは目を覚ます。

石造りじゃない天井に上等なベッド、ふかふかの布団、松明の明かりとは違い陽の光が差し込む部屋……

「どうやら地下の檻とは違うようだ……」

メイナスは上体を起こす。

「……ない」

首を触る。いつもは首を動かすときに「カチャン」と音がするのだが、今はしなかった。

これが意味するのは、メイナスが自由になったということ。

「は……ははは!あははは!」

他の人が見たら気でも狂ったのかと心配してしまうが、そんなことは構わず自由になったという事実を噛み締める。

(メアリーに会える!)

「元気そうで何よりだ」

メイナスが喜んでいると中年の太った白衣を着た男が現れる。

恥ずかしいところを見られてしまった!とメイナスは「ゴホン」と咳払いしてから何事もなかったように真顔に戻る。

「それだけ元気ならもう大丈夫だな。ほら、おまえさんの荷物だ。それを持ってさっさとベッドを空けてくれ」

男は刀身がなくなっているレイピアとボロボロの奴隷服を渡して来て、強引にメイナスをベッドから下ろす。

「こっちへ来い」

男はメイナスを引っ張り部屋の端にある扉へと連れて行く。

その扉を開けると闘技場の外へと繋がっており、右に少し歩けば、観覧席へとつながる入り口があった。

「これでおまえさんは自由だ。じゃあな」

男はバタンと扉を閉める。

「……結構あっさりしたものなんだな……」

とりあえず、北へと向かって歩き出す。

歩くたびに闘技場が遠ざかっていく。離れるたびに自由になったことを再度実感して、うれしさが込み上げてくる。

試合の傷が完璧には癒えていないので走ることはできないが、気持ちは走り出したいほど嬉しかった。

(やった!おじさん!僕やったよ!自由だ!メアリー!お兄ちゃん自由になったよ!)

歩く速度が自然と速くなる。

だが、ふと黒髪の少年のことを思い出し、闘技場を振り返る。

建物の影に隠れて、闘技場の歓声しか聞こえない。

(お兄さん。ありがとう)

メイナスはこれまでの特訓の日々を思い出し見えはしないが、1番お世話になった人物に向かってお辞儀をする。

(お兄さんなら絶対に大丈夫!)

メイナスは歩き出す。

 
 ********************


メイナスの試合終了直後……

「どうなったんだ?」

メイナスが檻を出て行ってから相当な時間が経つ。勝ったのか?負けたのか?それが気になって気になって仕方がない。

「そろそろ飯の時間か……」

ガタンガタン……

噂をすれば、係員が飯の入ったカートを押す音が聞こえる。

(教えてくれるかわからないが、係員から飯をもらう時にそれとなく聞いてみるか)

係員が奴隷に順番に飯を盛り、俺のいる檻へとやってきた。

「奴隷番号98!アーク!飯だ!」

係員がパンと豆のスープをよそいトレーに乗せ渡してくる。

「一つ尋ねてもいいか?」

トレーを受け取る時に他の奴隷たちに聞こえないように声をかける。

「なんだ?手短にしろ」
「今日の試合結果を知りたいんだ」
「そんなことか……確か1試合目は……」

関係ないやつの試合も一応聞く。俺と仲良くしていたことがこいつらにバレるとメイナスが俺の人質として国に利用される可能性が出てくるから。

「で、最終試合が凄い盛り上がりでな!あの3大魔「火薬」のシューベルトがとんでもない火薬を使ってメイナスを追い詰めたんだが、最後の最後でメイナスが右手を犠牲にしてシューベルトを倒して逆転勝ちをしたんだ。3大魔が倒されるなんて制度ができてから5年もなかったからよ!すげえことを成したぜ!おっと。仕事中だった。じゃあな」

係員はカートを押して来た道を戻っていく。

(そうか。メイナスは勝ったのか。おめでとう)

俺は1人、笑顔でご飯をいただく。

その後、昨日までもう1人いた檻は、静かで少し寂しさを感じた。

(……特訓相手が欲しいな)

瞑想中に体がうずうずしてしまい、結局「瞬」の1時間連続発動の訓練と火事場の馬鹿力を使いこなすための訓練を4時間。夜がふけるまで行った。

(ふむが、神速を使っても5回までなら足が耐えられるようになってきたな。確実に成長してきている。よかった)

床に腰を下ろし、もう一度瞑想を行い、ハルバートとロイの一戦を思い出す。

ロイはスマッシュという必殺技を普通の攻撃のように連続で放っていた。そして、その攻撃はハルバートを吹き飛ばす程の攻撃だった。

(俺にも居合だけではなく、抜刀の状態で振るう刀にもあのようなためのいらない重く相手を後ろに下げるような攻撃があれば……何か現状の手の中で良い手は……)

この前の3大魔の「毒使い」とのようにやりにくい相手との試合もあるだろう。そんな時居合だけではなく、刀を抜いた状態で居合並の攻撃を何度も何度も放てれば相手は攻撃ができずに防御に徹するしかなくなる。そうすれば、相手に攻撃をする隙を与えずに一方的に攻めて続けることができる。

(……!抜刀状態で刀が相手に当たる時に火事場の馬鹿力を一瞬だけ爆発させて一気に力を上げて、斬鉄並の一撃が何度も放てるようになるかもしれないな……ぶっつけ本番になってしまうが、奥の手の一つとして取っておこう)

アークは次の試合に向けて準備を進めていく。

次の3大魔との試合まであと2日。
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