義弟に迫られてます〜制御不能な本気の恋〜

さくしゃ

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義姉弟③

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「行ってきます」

 父はいつものように仕事へ向かいました。
 
 いつものように6時に起きて、歯を磨き、朝食を食べて、7時少し前に家を出る。

 いつものように優しい笑みを浮かべて……

 私を少しでも不安にさせないように。

 しかし、父も一杯一杯である事に変わりはなく、時々目が虚な時もあります。

「行ってきます」

 私も父を心配させないように学校へ通いました。

 しかし、私も虚でした。

 色あせた世界、遠くから聞こえる人の声、味を感じないご飯……

 空っぽ。心の中には何もない。

 たまに込み上げて来るものがあったけど、なぜかそれは首元で止まって下に落ちていく。

「……」

 いつからそこに逃げ込むようになったのかはわからない。

 ただ、いつも辛い事があると来る秘密の場所……と言っても城址公園の横にある神社なので、たまに参拝客はやって来る。

 そんな神社の側に腰掛け沈む夕日に照らされた街並みを眺める。

 光が沈んでいくその光景に込み上げて来るものがありましたが、なぜか首元で突っかえて登ってこない。

「もえちゃん」

 不意に背後から自身の名前を呼ばれた。

 いつもなら離れた場所から話しかけられているように聞こえるのに、その声はやけに明瞭に私の心に響いた。

「……なおくん」

 優しく微笑む直人が居た。
 
 昔から不思議と私がどうしようもなく辛くて消えてしまいそうになる時、彼はいつも私の名前を呼んでくれる。

 色褪せた世界に色彩が戻る。
 心臓が動き出し、冷たかった体が温かくなり、今にもどこかに飛んで行ってしまいそうなほど軽かった体に懐かしい重さを感じた。

「うわあぁぁ」

 胸に溜まっていた悲しみが、首元にあった突っかえを押し破り、目から流れ出る。

「やっと出せたんだね……よかった」

 包み込む温かい感触。
 
 その感触に安心した私は、直人の胸の中で泣き続けた。

 真冬の寒さによって凍える体を温かいココアを飲んで暖める時のようにホッとした。

 それからどのくらい泣いたのかわからない。
 
 空に星が登り始めた頃、涙を流しすぎて乾燥する両目を擦りながら俯く。

「落ち着いた? なら、暗くなって来たし帰ろ」
「う、うん……」

 直人に手を引かれ神社を後にする。

 手を繋ぐなんていつもの事なのに……

 締め付けられる自身の胸をギュッと抑え、直人のクルンとした後ろ髪を自宅に着くまで眺め続けた。
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