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私のバカ……
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屋上に響く直人の元気な声。
「いただきまーす!」
あの後、突然現れた直人は、小学校からの共通の幼馴染である武藤尊くんの腕を引っ張り、私たちの隣へと腰掛けた。
「この4人で食べるの久しぶりだなー」
尊くんは、懐かしそうに私、ちーちゃん、直人の顔を見渡す。
「そう言えばそうだな。確か中1以来か?」
「もうそんなになるんだ。尊くんは見ない間に随分大きくなったねぇ」
「わかる? そうなんだよ、あれから30cmも伸びて、今じゃ185cmまで成長しました! 酷い成長痛に悩まされておりますので、まだまだ成長すると思われます!」
熱い意気込みを語る政治家のようなガッツポーズを決める健くん。
似てる……めっちゃ似てる!
「はぁ……相変わらず局長に似た素晴らしいお顔をされている。ありがたやありがたや」
私の推し(土方歳三)さんの永遠の相棒、局長(近藤勇)さんによく似ていて、感動すら覚える。
しかも、当時は体格がひょろっとしていていまいちだったのが、今では体格も大きくて、その姿は完全に局長。
拝まずにはいられない。
「相変わらずだな。萌は」
屈託のない笑顔を浮かべる直人。
普段なら推し活中は、どんな事があっても集中が途切れないのに。
「ま、まあね!」
直人の笑顔に吸い込まれてしまい、慌てて顔を逸らす。
ダメ……ダメダメ!絶対にダメ!
と、分かってはいても視線が直人に行ってしまう。
「いただきます!」
今は直人の事を意識しすぎるのは良くないとお弁当に集中する。
黙々と食べ進める。
「そんな勢いよく食べ」
「ゔ! ゲホッ! ゴホッ!」
ハンバーグをそのまま噛み忘れて飲み込んでしまい喉でつっかえる。
「ほら、言わんこっちゃない」
呆れつつ、サッと私の横へ来て背中を叩いてくれる直人。
「ゲホッ、ゴホッ……ごめん」
「良いって。ほら、落ち着いたなら水飲んで」
「ありがとう」
渡された水を飲み干す。
「あー、助かった……!」
「おー、よかったよかった。ただ、俺も飲みかけだったから少し残して欲しかったな」
予想以上に直人の顔が近くにあって、仰反る私。
「の、飲み掛け……」
それってつまり関節……
情報処理が追い付かず、煙を上げる私の頭。
「ーーて、ごめん!お詫びに代わりの水買ってくるよ!」
このままではまずい。
そう思った私は、直人の反応を待たず、屋上から逃げました。
しかし、その後ちゃんと買って返しにいくあたり自分の真面目さが恨めしいです。
その後、午後の授業で直人の事が気になってしまいチラチラ見ていたら、目線が合ってしまい。
「見過ぎ」
と、笑われました。
しかも、楽しそうに。
掃除の時も、肩を叩かれたので振り返えれば、ほっぺを優しく摘まれたり……最後は赤面する私を見て笑ってどこかへ消えていきます。
このままでは身が保たないと思った私は、ちーちゃんにラインで「また明日」と伝えて、速攻で教室を飛び出し、自宅へ駆け込みました。
「ふぅ……落ち着」
「ただいま」
しかし、私の行動などお見通しの直人が玄関の扉を開けて私に迫ってくる。
「なんで逃げんの?」
壁に追いやられ、両手で逃げ道を塞がれる。
「……」
「黙ってないで教えて欲しいんだけど」
怒気を含んだ声で尋ねてくる直人。
高鳴る鼓動。
好きな人がここまで私に迫ってくれるという喜びが胸に広がる。と同時に、このまま受け入れたら家族が壊れるという思いが出現、「直人が好き」という想いと対立。
その戦いの余波で、心はボロボロ。
それでも答えを出そうとするあまり戦いは苛烈さを増し……
涙が溢れた。
「……そっか、そうだよな」
そんな私を見た直人は両腕を退け、一歩後ろへ下がる。
「ごめん、忘れてくれ」
何かが詰まっているような苦しそうな表情で笑う直人。
違う、違うの!直人が迷惑だから泣いてるんじゃないの!
という想いとは裏腹に言葉が詰まって出てこない。
「晩御飯になったら教えて」
そのまま靴を脱ぎ、部屋へと行ってしまった。
「私の……バカ」
いつもいつも肝心な時に思いを伝えられない自分が憎い。
「いただきまーす!」
あの後、突然現れた直人は、小学校からの共通の幼馴染である武藤尊くんの腕を引っ張り、私たちの隣へと腰掛けた。
「この4人で食べるの久しぶりだなー」
尊くんは、懐かしそうに私、ちーちゃん、直人の顔を見渡す。
「そう言えばそうだな。確か中1以来か?」
「もうそんなになるんだ。尊くんは見ない間に随分大きくなったねぇ」
「わかる? そうなんだよ、あれから30cmも伸びて、今じゃ185cmまで成長しました! 酷い成長痛に悩まされておりますので、まだまだ成長すると思われます!」
熱い意気込みを語る政治家のようなガッツポーズを決める健くん。
似てる……めっちゃ似てる!
「はぁ……相変わらず局長に似た素晴らしいお顔をされている。ありがたやありがたや」
私の推し(土方歳三)さんの永遠の相棒、局長(近藤勇)さんによく似ていて、感動すら覚える。
しかも、当時は体格がひょろっとしていていまいちだったのが、今では体格も大きくて、その姿は完全に局長。
拝まずにはいられない。
「相変わらずだな。萌は」
屈託のない笑顔を浮かべる直人。
普段なら推し活中は、どんな事があっても集中が途切れないのに。
「ま、まあね!」
直人の笑顔に吸い込まれてしまい、慌てて顔を逸らす。
ダメ……ダメダメ!絶対にダメ!
と、分かってはいても視線が直人に行ってしまう。
「いただきます!」
今は直人の事を意識しすぎるのは良くないとお弁当に集中する。
黙々と食べ進める。
「そんな勢いよく食べ」
「ゔ! ゲホッ! ゴホッ!」
ハンバーグをそのまま噛み忘れて飲み込んでしまい喉でつっかえる。
「ほら、言わんこっちゃない」
呆れつつ、サッと私の横へ来て背中を叩いてくれる直人。
「ゲホッ、ゴホッ……ごめん」
「良いって。ほら、落ち着いたなら水飲んで」
「ありがとう」
渡された水を飲み干す。
「あー、助かった……!」
「おー、よかったよかった。ただ、俺も飲みかけだったから少し残して欲しかったな」
予想以上に直人の顔が近くにあって、仰反る私。
「の、飲み掛け……」
それってつまり関節……
情報処理が追い付かず、煙を上げる私の頭。
「ーーて、ごめん!お詫びに代わりの水買ってくるよ!」
このままではまずい。
そう思った私は、直人の反応を待たず、屋上から逃げました。
しかし、その後ちゃんと買って返しにいくあたり自分の真面目さが恨めしいです。
その後、午後の授業で直人の事が気になってしまいチラチラ見ていたら、目線が合ってしまい。
「見過ぎ」
と、笑われました。
しかも、楽しそうに。
掃除の時も、肩を叩かれたので振り返えれば、ほっぺを優しく摘まれたり……最後は赤面する私を見て笑ってどこかへ消えていきます。
このままでは身が保たないと思った私は、ちーちゃんにラインで「また明日」と伝えて、速攻で教室を飛び出し、自宅へ駆け込みました。
「ふぅ……落ち着」
「ただいま」
しかし、私の行動などお見通しの直人が玄関の扉を開けて私に迫ってくる。
「なんで逃げんの?」
壁に追いやられ、両手で逃げ道を塞がれる。
「……」
「黙ってないで教えて欲しいんだけど」
怒気を含んだ声で尋ねてくる直人。
高鳴る鼓動。
好きな人がここまで私に迫ってくれるという喜びが胸に広がる。と同時に、このまま受け入れたら家族が壊れるという思いが出現、「直人が好き」という想いと対立。
その戦いの余波で、心はボロボロ。
それでも答えを出そうとするあまり戦いは苛烈さを増し……
涙が溢れた。
「……そっか、そうだよな」
そんな私を見た直人は両腕を退け、一歩後ろへ下がる。
「ごめん、忘れてくれ」
何かが詰まっているような苦しそうな表情で笑う直人。
違う、違うの!直人が迷惑だから泣いてるんじゃないの!
という想いとは裏腹に言葉が詰まって出てこない。
「晩御飯になったら教えて」
そのまま靴を脱ぎ、部屋へと行ってしまった。
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いつもいつも肝心な時に思いを伝えられない自分が憎い。
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