義弟に迫られてます〜制御不能な本気の恋〜

さくしゃ

文字の大きさ
9 / 12

私のバカ……

しおりを挟む
屋上に響く直人の元気な声。

「いただきまーす!」

 あの後、突然現れた直人は、小学校からの共通の幼馴染である武藤尊くんの腕を引っ張り、私たちの隣へと腰掛けた。

「この4人で食べるの久しぶりだなー」

 尊くんは、懐かしそうに私、ちーちゃん、直人の顔を見渡す。

「そう言えばそうだな。確か中1以来か?」

「もうそんなになるんだ。尊くんは見ない間に随分大きくなったねぇ」

「わかる? そうなんだよ、あれから30cmも伸びて、今じゃ185cmまで成長しました! 酷い成長痛に悩まされておりますので、まだまだ成長すると思われます!」

 熱い意気込みを語る政治家のようなガッツポーズを決める健くん。

 似てる……めっちゃ似てる!

「はぁ……相変わらず局長に似た素晴らしいお顔をされている。ありがたやありがたや」

 私の推し(土方歳三)さんの永遠の相棒、局長(近藤勇)さんによく似ていて、感動すら覚える。

 しかも、当時は体格がひょろっとしていていまいちだったのが、今では体格も大きくて、その姿は完全に局長。

 拝まずにはいられない。

「相変わらずだな。萌は」

 屈託のない笑顔を浮かべる直人。

 普段なら推し活中は、どんな事があっても集中が途切れないのに。

「ま、まあね!」

 直人の笑顔に吸い込まれてしまい、慌てて顔を逸らす。

 ダメ……ダメダメ!絶対にダメ!

 と、分かってはいても視線が直人に行ってしまう。

「いただきます!」

 今は直人の事を意識しすぎるのは良くないとお弁当に集中する。

 黙々と食べ進める。

「そんな勢いよく食べ」

「ゔ! ゲホッ! ゴホッ!」

 ハンバーグをそのまま噛み忘れて飲み込んでしまい喉でつっかえる。

「ほら、言わんこっちゃない」

 呆れつつ、サッと私の横へ来て背中を叩いてくれる直人。

「ゲホッ、ゴホッ……ごめん」

「良いって。ほら、落ち着いたなら水飲んで」

「ありがとう」

 渡された水を飲み干す。

「あー、助かった……!」

「おー、よかったよかった。ただ、俺も飲みかけだったから少し残して欲しかったな」

 予想以上に直人の顔が近くにあって、仰反る私。

「の、飲み掛け……」

 それってつまり関節……

 情報処理が追い付かず、煙を上げる私の頭。

「ーーて、ごめん!お詫びに代わりの水買ってくるよ!」

 このままではまずい。

 そう思った私は、直人の反応を待たず、屋上から逃げました。

 しかし、その後ちゃんと買って返しにいくあたり自分の真面目さが恨めしいです。

 その後、午後の授業で直人の事が気になってしまいチラチラ見ていたら、目線が合ってしまい。

「見過ぎ」

 と、笑われました。
 しかも、楽しそうに。

 掃除の時も、肩を叩かれたので振り返えれば、ほっぺを優しく摘まれたり……最後は赤面する私を見て笑ってどこかへ消えていきます。

 このままでは身が保たないと思った私は、ちーちゃんにラインで「また明日」と伝えて、速攻で教室を飛び出し、自宅へ駆け込みました。

「ふぅ……落ち着」

「ただいま」

 しかし、私の行動などお見通しの直人が玄関の扉を開けて私に迫ってくる。

「なんで逃げんの?」

 壁に追いやられ、両手で逃げ道を塞がれる。

「……」

「黙ってないで教えて欲しいんだけど」

 怒気を含んだ声で尋ねてくる直人。

 高鳴る鼓動。

 好きな人がここまで私に迫ってくれるという喜びが胸に広がる。と同時に、このまま受け入れたら家族が壊れるという思いが出現、「直人が好き」という想いと対立。

 その戦いの余波で、心はボロボロ。

 それでも答えを出そうとするあまり戦いは苛烈さを増し……

 涙が溢れた。

「……そっか、そうだよな」

 そんな私を見た直人は両腕を退け、一歩後ろへ下がる。

「ごめん、忘れてくれ」

 何かが詰まっているような苦しそうな表情で笑う直人。

 違う、違うの!直人が迷惑だから泣いてるんじゃないの!

 という想いとは裏腹に言葉が詰まって出てこない。

「晩御飯になったら教えて」

 そのまま靴を脱ぎ、部屋へと行ってしまった。

「私の……バカ」

 いつもいつも肝心な時に思いを伝えられない自分が憎い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜ ※AI不使用です。

処理中です...