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氷の知らせ、夢物語
しおりを挟む__この世の中には、神様がいる__
じいちゃんは昔、そういって私の頭を撫でてくれた。
「…神?」
「そう、神。この世の全てには、至るところに神さんがいる」
「…ふーん」
とある夏の日。風鈴の涼しい、縁側での話。子供ながらに嘘だと思って聞いていた、夢物語__でも
「神さまがいると、どうなるの?」
麦茶の中で氷がおどって…ふと、気になった。
あの言葉を聞いた後の私はいつも、何かが見える気がしていた。どこかに何かが居るような。
そんなのどこかに何かあるのは当然だし、分かっている。だけど、例えばこの、麦茶でさえ。黄色く光る、庭でさえ。
遠くに広がる空、にさえ。
何かがあるような、居るような気がしてならなかった。
「そうだなぁ、咲が分かるところだと…。こんなのは知ってるか? むかーし昔、あるところに__」
話は今日も続いていく。
幼い私が何か発せば、じいちゃんはいつも考え始めて…そして結局、同じ話をする。
…当然だ。これは所謂、夢なのだから。
毎回同じ内容の夢に飽き飽きしながらも、私はその話を聞かなきゃならない。今回もこれからも、このことは変わらない。
_それなのに今日は、やけにおかしかった。いつもと同じ、知っている話のはずなのに、どんどん脳みそが止まっていく。訳の分からない言葉が、次から次へと流れてくる。
じいちゃんの顔を見た。おかしい。何故私を見ないで遠くを見ている、瞳が紫色になって、ぐるぐる渦を巻いて、瞬きをしないで__!!
じいちゃんはその話をするとき、いつも私を見ていただろう!!庭の向こうではなく、何もない場所ではなく、膝に乗せた、幼い私を__!!
「…? それって___てこと?」
……今までにないことをした。私がだ。
話を止めて、じいちゃんに疑問を言った。
声が所々聞こえないなんて、そんなのしょっちゅうだ。この夢を見始めた時から耳を塞がれたように聞こえないことは多々あった。
でも、それでも夢の内容が変わることなんて、私が話を遮ることなんて、一度もなかった!
「…まぁ、今はその解釈でいい。後に全て分かる。…それでだな? 咲。__」
そのとき、じいちゃんが私を見た。
見えていない筈の私を。
じいちゃんはどちらとも言わず、私に曖昧な返しをすると、また話を進めた。
…自動修正か? 夢の中のじいちゃんが私の夢を直した…?
その顔は既に幼い頃の私を見ている。
その後は今まで通り、同じ話が続いていく。
「__ってなるだろ? そしたら何と__まぁこんなところになるわけよ! はっは!」
そして、終わった。そのまま、私の知っている夢のまま、終わった。
あのとき
「…そっか。じゃあ__」
「じぃちゃん___?」
「!!」
私は何て言った?
「…」
あのとき
「___!」
じいちゃんは何故私を見た?
何を思って、そんなことを言ってくれたの?
この後の夢が分からないくらいだよ。ねえ、じいちゃん__
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