tuberose

山代裕春

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夜凪

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ピンポーン…

殺風景な団地、古びた壁、無機質な呼び鈴。
少し錆びれたドアが開き、初老の男が顔を出す。
高瀬「おじさん…」
おじさん「……夏泉くん?」
高瀬「ご無沙汰しております」
おじさん「…どうぞ」

……おじさんの家にて

年季の入ったテーブル、熱い紅茶、綺麗に整理されたリビング。
高瀬「…」
おじさん「…」
おばさん「あなた…」
おじさん「…夏泉く」
高瀬「千才さんの居場所がわかりました」
おじさん「!!」
高瀬「警察は僕を使って居場所を炙り出すでしょう…」
おじさん「…」
高瀬「そして、マスコミも黙っていない…」
おじさん「逃げろってことか?」
高瀬は頷く。
おじさん「…」
高瀬「すみませんでした」
深々と頭を下げ謝罪する、それを見た夫婦は顔を見合わせた。
おじさん「顔をあげなさい」
高瀬「…」
おじさん「俺はね夏泉くん…あの子の帰りをずっと待ってるんだ」
高瀬「!」
おじさん「俺たちがここを離れればあの子…千弥は独りぼっちになるだろう…」
高瀬「…」
おじさん「千弥がしたことは許されることではない…だがな…俺たちから見たらあいつも被害者なんだよ」
手が震えている。
おじさん「夏泉くん」
高瀬「はい…」
おじさん「千弥の味方でいてくれてありがとう…」
違う…そんなんじゃない…
おじさん「俺たちはここで千弥の帰りを待つ…それが俺たちが親としてできる唯一のことなんだ」

…玄関前

高瀬「お邪魔しました」
おじさん「元気でな」
ドアが閉まる、少しだけ佇みエレベーターに向かうと扉が開く音がした。
おばさん「夏泉ちゃん」
振り向くと髪を一つに束ねた優しそうな女性。
高瀬「おばさん…」
おばさん「…辛いことがあったらいいなさいね?」
高瀬「!?」
おばさん「それと…夫の手前言えなかったのだけど…」
高瀬「?」
おばさん「_______…」
高瀬「は?…」
おばさん「私も聞いた時驚いたわ…まさかあの子があんな事を言うなんて…」
高瀬「…」
千瀬(あかちゃん)
その瞬間、高瀬は一つの仮説ができた。
高瀬「まさか…な」
おばさん「?」
高瀬「おばさん、それ警察に言わないでください」
おばさん「!」
高瀬「あと…もう一つ聞きたいことがあります。
おばさん「なに?」
高瀬「人間のことなんですが…」
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