煙草

山代裕春

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煙草

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「もう!兄ちゃん!外で吸ってよ!」
「ん?あぁすまん」
妹に怒られて足早に外に出る
「さむ!!」
コートを羽織っているがそれでも寒い
「冬好きだけど寒いの嫌い…」
なんて独り言を言いながら
ポケットに入れていた煙草とライターを
取り出す
「つかねぇ」
火がなかなか点かない摩擦音が
虚しい心と重なる
やっと火がつき咥えていた煙草につけた
「ふぅー…」
吐き出された煙がふわふわと浮く
壁によしかかってボーッとする
降り積もる雪が街灯に照らされ淡く光る
「……」
口の中が甘く苦い味に満たされていき
煙はいつもより消えるのが遅かった
ふと昔のことを思い出す



まだ幼い時父に連れてってもらったあの場所
真っ白な世界
キラキラの宝石箱
一瞬で魅入られた
そんな時漂ってきた苦い香りと
ふわふわな白い煙が目に入る
目を押さえ痛がっていると
父が笑う頭を撫で
俺の手を引き家路に帰った
それが父との思い出
「糞親父…」
あれから数年大変な置き土産を残して死んだあいつを許さない
「兄ちゃん?」
妹の声でハッとした
「兄ちゃん大丈夫?外で吸ってなんて言って怒ってごめんなさい」
何故謝る?見ると自分の体には霜が出ていた
(え!?そんないたの?)
気づいた瞬間体が悴み凍えた
「さっっっむ!!」
「でしょうね…」
「あばばばば…はやく入ろ」
煙草を携帯灰皿に押し潰し家に入る
「はぁーさむさむさむさむ」
即座にストーブを占拠し暖をとる
「兄ちゃん大丈夫?」
「…うん!」
心配そうに見る妹に兄は笑いかける
すると妹は兄に寄り添う
「どうした?」
「この方があったかいなと思った」
「ああそう」
二人はストーブの火を暫く見つめる
「兄ちゃん」
「なに?」
「僕お散歩行きたい」
(…本当大変な置き土産だな)
「うん、いいよ」
妹のはじめての頼み頭を撫で外に出た…


「兄ちゃん」
「ん?どした?」
僕は時折兄が怖い
「うぅん、なんでもない」
だけど…ね…
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