私の相棒はモテモテです!

凰雅柚月

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始まり

別れてください

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多少の残業はあったものの7時前に業務を終えた。
ロッカーから荷物を出して会社を出て駅に向かう途中で声を掛けられる。


「華村さん、ちょっとよろしいかしら?」


キタ~~っ!!!!


今週も平和に過ごせそうにナイナ……
そんな事を考えながら振り向くと営業事務の雛形京子が立っていた。

「なんでしょうか?雛形さん」

「お話があるの。斎条さんのことで……」

あぁー、ハイハイ……
やっぱりね……

いいですよ~

お話を伺いましょう!


来た道を戻り会社の裏に有るカフェへと向かった。


席に座り注文をした。
注文した品物が来るまでは当たり障りの無い話をする。
話してる最中に飲み物が来れば話の腰を折られてしまうしスタッフも居た堪れなくなるのは経験上良く判っている。



飲み物が来て一口飲む。
そして徐に相手から言葉が吐き出された。


「斎条さんと別れてくださらない?貴女に彼は相応しくないし、足を引っ張るだけよ?彼は将来有望で会社のトップに立つの。その斎条さんを支えられるのは私だけよ?」


あぁー、そうか。
雛形さんの父親はうちの会社の専務だぁ。
その専務が後ろ楯になれば向かうところ敵無しだね。

ウンウン、確かにそうだわ。


「私の父もね、斎条さんを買ってるし目を掛けてるの。彼みたいな男と結婚させたいって常々言っているし…!でも今は・・・貴女と付き合ってる。彼は優しいからきっと言い出せないから貴女から身を引いてくれたなら悪いようにはしないわ。別れたら同じ会社には居辛いでしょ?父に頼んで其なりの事はさせてもらうわ」


あららぁー、そこまで考えてくれているの?
遣り手の専務だから転職先も良いところ紹介してもらえそうだしきっと手切れ金もたんまり有るんだろうなぁ……。


少し考えるフリをして俯き悲しげな顔で声を震わせながら……。

「解りました…彼が貴女を選んだなら潔く別れます」


「華村さんが物分かりが良くて良かったわ。私も手荒な真似はしたくないし」

そう言って私にニッコリと満面の笑顔を向けた。

手荒な真似はってなんだ?
了承しなかったらどんな事をするつもりだったんだ?
きっと専務に泣き付いて私を会社からイビり倒し追い出すつもりだったのだろう……
そうなったら退職金もたいしてもらえ無かったのだろうなぁ。


ここは奢ると伝票を持ってさっさと帰って行った。
彼女の頭の中では既に彼と結婚式を挙げているのだろう。
足取り軽く雑踏の中に消えた。





残された私は温くなったコーヒーを飲み干すとカフェのオーナーが淹れたばかりのコーヒーのおかわりを持って来てくれた。


「チィちゃん、いい加減この店でああいう話をしないで欲しいなぁ」

笑いながら先程まで雛形さんが座っていた場所に腰をおろしたら。

「だって、混雑した場所であんな話はできないじゃない。この店なら落ち着いて話が出来るし万が一泣かれても誰にも迷惑かけないでしょ?」

「それってこの店が流行ってないって言いたいのか?あんまりな言い方だな」

「私は好きよ?ゆっくりコーヒー味わえてのんびり時間を過ごせるし…」

このカフェは裏通りにあるせいか混雑した事がない。
オフィス街なのに昼時すら座れる。
そんなでやって行けてるのかと心配する常連客もいる。
それでも潰れないのはそこそこには利益があるのだろう。


「相変わらずチィちゃんの相棒はモテモテだね。今回は…あの専務のご令嬢かい?専務はご存知なのかな?」

「さぁ…どうなんだろうか?私にはどっちでもいいの。選ぶのは彼だから…彼が彼女を選んだなら潔く身を引くから……」

「斎条君も可哀想に……こんな薄情な女が相棒だなんて…万が一にも他の女を選ぶなんて無いな。もうチィちゃんにベタぼれだしね」



そうなんだよね。
私にベタぼれなんだよね。
何故私なんかと常々思っている。
彼ほどの男ならばオンナは選り取りミドリちゃんだと……

それでも何年も私だけを思ってくれている。

勿論私も彼を愛してる。
だからこそ彼ほどの男が私に尽くしてくれるのが申し訳ないとさえ……。
私のせいで彼の人生すら変えてしまった。
彼は私と一緒に居られるなら何でも無い事だと笑ってくれる。


だからこそ……

彼がもし、他の女を選んだなら潔く身を引く覚悟は常にしている。


「今日は斎条君は此処には来ないのかい?」

「うん。彼は今は海外に出張してる。本当なら私も真っ直ぐ家に帰る予定だったんだけどね。さっきの彼女が話が有るって言うから急遽予定変更になったの」

「じゃあ、ご飯食べていきなさいよ。新作ランチメニュー作ったから試食して。」

そう言ってオーナーは厨房に行った。
今から帰って作るのが億劫だなぁと思っていたから大助かりだ。
時間的にはもう閉店だから店のスタッフも一緒に新作ランチメニューを食べた。













もうすぐ彼が海外出張から帰って来る。
出張から帰って直ぐに会社の創立100年記念パーティがある。
パーティには国内外取引先や政財界の方々が出席する大がかりなものだ。
私も会社の創立記念パーティの準備スタッフとして忙しい。
準備の忙しさで雛形さんの話をすっかり忘れていた頃……

また…雛形さんから呼び出された。
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