短編小説集

凰雅柚月

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鬼の花嫁

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───

小高い山の上に小さな祠が二つある。
寄り添うように建つ祠は鬼と鬼の花嫁の祠だ。

この辺りに昔々──鬼が棲んでいたと言われている。






その昔数十年に1度─
鬼に花嫁が差し出される習わしがあった。

花嫁とは名ばかりの生け贄だ。
花嫁と称した生け贄を差し出す事で村は平和な日々を手に入れる。

もし──花嫁を差し出さなければ鬼によって村は一夜にして滅ぼされてしまう──
そんな言い伝えがあった為に絶える事なく続いていた。


この村では産まれた女の赤子は15歳になるまで大切に大切に育てられる。
現代のように医学が発達してないこの時代は風邪を引いても命を落とすのは当たり前だった。
花嫁となる女の子は多ければ多いほどよい。
女の赤子が産まれた家は何もかも優遇され大事に大事に育てられる。



いずれ……鬼の花嫁となれるように─





娘が産まれた。
その娘も他聞に漏れず大事に大事に育てられた。



名前は──カヤ



カヤは大きな病気もせず健やかに心優しく美しい娘に成長した。
その美しさは近隣の村にまで知れ渡り是非嫁に欲しいと申し込みが後を絶たなかった。



15歳になった娘達は村の庄屋の離れへと集められる。
そこで鬼の花嫁となるための準備がされる。
綺麗な花嫁衣装を着せられてはいるがどの娘も恐ろしさで顔を強張らせている。
ただ一人カヤを除いては……。


カヤは衣装を着せられている間思いを馳せていた。
3年前にあった出来事・・・を思い出していた。





母親が倒れ滋養に良いとされる薬草を取りに山に入った。
ちょうど時期外れな為中々薬草を摘むことが出来ずに奥へ奥へと入った。
やっとの事薬草を集めることが出来たのはもう日が暮れかけていた。
山の気温は下がりやすい。
昼間は暖かくても夜になれば上に羽織らなければ身体が冷えてくる。
急いで戻る途中でカヤは足を踏み外し河原へと滑り落ちてしまった。

(あっ、どうしよう……)

立ち上がろうとしたが挫いてしまったのか足首に痛みが走る。
地面に落ちてる木の枝で擦り傷も出来ている。

どんどん暗くなっていく。


(どうしよう…。みんなに心配かけてしまう……)

挫いて動かない足を擦りながら手頃な木の棒が無いかを探していると遠吠えが聞こえてきた。
山には狼がいる。
カヤなど直ぐに喰われてしまうだろう…。
狼に出会う前に帰りたい。
カヤは痛みを堪えて何とか立ち上がった。
歩き出した先の木に何かがいる。
目を凝らしよく見る。
視線の先にいたのは大きな真っ白い狼。
白い狼は真っ直ぐにカヤを見ている。

まずい─

恐らくこの山にいる狼のボスだろう。
狼から逃げ出せる術はもうない。。

カヤはもう助からない。。
私は鬼の花嫁にはなれない。。
鬼の花嫁になれなければとと様とかか様に迷惑をかけてしまう。。

そんな思いを頭に巡らせていたその時に人影が表れた。


《ハクロウ、何をしておる。。》

表れた人影が月明かりに照らされカヤの目にもハッキリと見えた。

男の人だ。
その男の人は頭に角が生えている。
鬼だ……。

白い狼が鬼の足元にすり寄り何かはなしかけてるよいだ。
その様子はまるで狼らしくない。
鬼は狼から視線を外しカヤを見た。

カヤは恐ろしさで足がすくみ動けない。

鬼は狼を伴いカヤに近づく……。


《そなた、足を挫いたのか?》


鬼の問い掛けに何度も頷く…。
鬼はとうとうカヤの目の前に立つと不意に身体が宙に浮いた。

「きゃっ!」

《暴れるでない。大人しくしとおれ》

カヤは言われるまま鬼の腕の中に収まった。
カヤを抱いたまま暫く歩くと月の沢と呼ばれる河原についた。
大きな石にカヤを座らせ挫いた足に冷たい水をかけた。
挫いて熱を持った足に心地好い。
冷たい水をかけて鬼が足を擦ると痛みが引いていく。

(痛みが……)

何度も水をかけては擦るを繰り返す内に腫れた足が元通りとなった。

《これで歩く事も出来るであろう。》

鬼は立ち上がりカヤの目の前に立つと振り返り白い狼に視線を送る。

《ハクロウが村まで案内する。気をつけて帰れ》

ハクロウがカヤの元に来るのと入れ替わるように鬼はその場を去ろうとした。

「まっ、待って!」

カヤは鬼を呼び止めた。
ゆっくりと鬼は振り返りカヤを見詰める。


「あの…あ、ありがとう…ございます」

カヤの言葉に鬼は優しく微笑んだ。
そして…森の奥へと消えていった。
カヤはハクロウに案内で村の入り口まで着いた。


「ハクロウ、ありがとう。あの…方にもありがとうと伝えて…」

ハクロウは頷き森へと駆けていった。
カヤが家に戻ると両親が泣きながらカヤを抱き締めた。

カヤは両親に何処にいたのかを問い詰められたが白い御仁とハクロウについては喋る事はなかった。
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