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鬼の花嫁
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そして──
庄屋に集められた花嫁たちは支度を終えて神妙な面持ちで広い座敷に座らされていた。
本来ならば好いた男と夫婦になる為の白い花嫁衣装。
だがこれは乙女らにとっては死装束である。
ただ一人カヤを除いて…。
カヤにとってはこれは好いた男に嫁ぐための花嫁衣装だ。
3年の年月を待ち望んでいた。
山の中で出会ったあの御仁にやっと会える……。
早く……
早く会いたい……。
並べられた花嫁たちはカヤを含めて5人いる。
他の4人は伝え聞いた話を思いだしては震えている。
座敷では庄屋を始め村の長老らが口上を述べているが誰の耳にも入ってない。
花嫁たちの親は花嫁たちに里心が出て逃げ出さないようにこの場には来ない。
花嫁が逃げればこの村はお仕舞いだ。
座敷には村の庄屋と長老たち。。。
だが…庄屋の屋敷の回りには見張りが立っている。
誰も逃げられないのである。。。
真夜中──
案内人を前に駕籠が五つ。
駕籠の中には目隠しをされ後ろ手に縛られた花嫁が乗っている。
真夜中に出発するのは景色を覚えられないように……。
目には目隠し、口には猿轡をされ手は後ろ手に縛るのは真夜中とは言え樹の位置、星の位置を覚えられないようにするため…。
その昔、花嫁が恐怖の余り逃げ出し村に両親の元に戻った。
父母は娘可愛さに匿ったがその後村には悪病、飢饉が襲った。
父母はこの惨状に耐えきれず村長に逃げ出した娘の事を話した。
花嫁が逃げ出したせいで鬼の怒りを買ってしまった…。
村長と長老達は直ぐ様娘を鬼の元へと送り返した。
物言わぬ骸となった娘を……。
その後娘の両親は掟やぶりの罰として村を追い出された。
追い出された両親は娘に詫びながら自害した。
この後からは掟やぶりをするものはいなくなった。
肉親の情をかければ村を潰してしまいかねない。
この事を肝に命じ村では幼き頃より娘達に言い聞かせてきた。
五つの駕籠の列が止まった。
ゆっくりと駕籠が地面に降ろされる。
駕籠舁き職人の足音が離れていく。
案内人が駕籠の中にいる花嫁たちに話しかけた。
「花嫁たちよ。ここより先は儂等は入れぬ。時期に迎えのものが来る。達者で暮らせ……」
そう言い残し案内人も去って言った。
猿轡は外されてないせいで大きな声は出せないがカヤ以外の駕籠の中にいる花嫁達は咽び泣いている。
どれ程の時が経ったのか…?
遠くから足音が聞こえてきた。
一人二人ではない……。
大勢の足音だ。
恐らく迎えのものであろう。
不意に駕籠が揺れる。
担がれたのだ。
恐怖のせいか先程迄聞こえた咽び泣く声がしなくなった。
半刻ほど過ぎた頃に駕籠が止まった。
そして…駕籠の扉が開かれた。
庄屋に集められた花嫁たちは支度を終えて神妙な面持ちで広い座敷に座らされていた。
本来ならば好いた男と夫婦になる為の白い花嫁衣装。
だがこれは乙女らにとっては死装束である。
ただ一人カヤを除いて…。
カヤにとってはこれは好いた男に嫁ぐための花嫁衣装だ。
3年の年月を待ち望んでいた。
山の中で出会ったあの御仁にやっと会える……。
早く……
早く会いたい……。
並べられた花嫁たちはカヤを含めて5人いる。
他の4人は伝え聞いた話を思いだしては震えている。
座敷では庄屋を始め村の長老らが口上を述べているが誰の耳にも入ってない。
花嫁たちの親は花嫁たちに里心が出て逃げ出さないようにこの場には来ない。
花嫁が逃げればこの村はお仕舞いだ。
座敷には村の庄屋と長老たち。。。
だが…庄屋の屋敷の回りには見張りが立っている。
誰も逃げられないのである。。。
真夜中──
案内人を前に駕籠が五つ。
駕籠の中には目隠しをされ後ろ手に縛られた花嫁が乗っている。
真夜中に出発するのは景色を覚えられないように……。
目には目隠し、口には猿轡をされ手は後ろ手に縛るのは真夜中とは言え樹の位置、星の位置を覚えられないようにするため…。
その昔、花嫁が恐怖の余り逃げ出し村に両親の元に戻った。
父母は娘可愛さに匿ったがその後村には悪病、飢饉が襲った。
父母はこの惨状に耐えきれず村長に逃げ出した娘の事を話した。
花嫁が逃げ出したせいで鬼の怒りを買ってしまった…。
村長と長老達は直ぐ様娘を鬼の元へと送り返した。
物言わぬ骸となった娘を……。
その後娘の両親は掟やぶりの罰として村を追い出された。
追い出された両親は娘に詫びながら自害した。
この後からは掟やぶりをするものはいなくなった。
肉親の情をかければ村を潰してしまいかねない。
この事を肝に命じ村では幼き頃より娘達に言い聞かせてきた。
五つの駕籠の列が止まった。
ゆっくりと駕籠が地面に降ろされる。
駕籠舁き職人の足音が離れていく。
案内人が駕籠の中にいる花嫁たちに話しかけた。
「花嫁たちよ。ここより先は儂等は入れぬ。時期に迎えのものが来る。達者で暮らせ……」
そう言い残し案内人も去って言った。
猿轡は外されてないせいで大きな声は出せないがカヤ以外の駕籠の中にいる花嫁達は咽び泣いている。
どれ程の時が経ったのか…?
遠くから足音が聞こえてきた。
一人二人ではない……。
大勢の足音だ。
恐らく迎えのものであろう。
不意に駕籠が揺れる。
担がれたのだ。
恐怖のせいか先程迄聞こえた咽び泣く声がしなくなった。
半刻ほど過ぎた頃に駕籠が止まった。
そして…駕籠の扉が開かれた。
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