婚約破棄された友人。ことを収めたと思ったら、なぜか皇子から言い寄られるのですが

たぬきねこ

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第15話

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 唇が重なり合った。
 
 数秒なのか、数十秒なのか、それともそれ以上なのか・・・・私には分からない。感覚的には凄く長い時間が過ぎたような感じだわ。
 ニール様に迫られ、私も受け入れた。
 されるがまま唇を重ね続けた。
 もうどれくらいの時間そうしていたか分からない。

 ひとつ言えることは、私のファーストキスの相手がニール様だということ。それだけは間違いがなく、とても嬉しかった。

 永遠とも感じられたキスも、ニール様の唇が私から離れたことで終わりを告げた。
 そして・・・私の思考も通常に戻った。
 戻った。
 戻ってしまった。

 はわわわわわ・・・キス! 私のファーストキス!
 ついに念願のニール様とのキス。 
 それもニール様から婚約を申し込まれた。
 きゃああぁぁぁぁあぁぁぁ。
 嬉しい。
 嬉しい。嬉しい。

 嬉しさがどんどん溢れてくる。


「よかったわね。ルシア幸せになりなさいよ」
 
 いつのまにかアリス様が近くに立っていた。
 ひょっとして全部、見られていたの?
 プロポーズからキスまで全部、一部始終見られていたの?
 ひやぁぁぁっ・・恥ずかしい。

 恥ずかしさであたふたする私を、ニール様とアリス様が笑った。
 ううぅぅぅぅ・・・。
 笑われたのだが、不思議と嫌な思いはしなかった。

「ニール君、娘を頼むぞ! バカ娘だが君のことを一途に思っていた娘だ。結婚はまだ先の話だろうが、婚約者として娘を守ってやって欲しい」

「はい。必ずやお嬢様を、ルシアさんをお守りします。父もこの婚約に了承してくれました。正式な婚約は父も踏まえて申し込むつもりで、ナイトレイ伯爵家に向かったのですが、擦れ違いになってしまいました。私は執事さんから行先をお聞きしてやって来たのです」

「そうであったか。ならば家に帰らないといけないな。正直言って困っていたのだよ」

「お父様? 何がお困りなのです?」

「はあぁぁ、肝心のこいつときたら・・・ニール君、こんな娘でいいのかね?」

「ええもちろん。ルシア様ですから」

「酷い! お父様もニール様も私を何だと思っているのかしら。 で? お父様、何がお困りなのですか」

「ルシア、お前に求婚を求める貴族の相手をすることだよ」

「ええええぇぇぇぇ!」

「驚くほどのものか? 以前からお前を妻に迎えたいと申し出る貴族は多くいた。それが今回の事件でさらに多くなった。だが、私は娘の意思を尊重したかったのだよ。家柄で選ぶのではなく、ルシアお前自身が選んだニール君と幸せになって欲しかった。おかげで各家に断りの返事をする羽目になり大変だったのだぞ」

「すみません。私が煮え切らなかったばかりに、伯爵様にまでご迷惑をおかけしました」

「なに、まだ君たちは若い。子供が親に面倒をかけるのは当たり前のことだ。だがこれからは婚約者として発表できるのだ。肩の荷が下りると言うものだよ。はっはっはっ」

「伯爵様、ありがとうございます」

 ・・・・知らなかった。そんなことになっていたんだ。

「あの・・・ニール様・・・私でホントによろしいのですか?」

「どうしたんだい?」

「だって・・・私は何もできない。 魔法だってろくに使えない。 背も低くて童顔だしスタイルもよくない。そんな私でもよろしいのですか?」

「なんだそんなことか」

「そんなことって、私には重要です」

「心配しなくてもいい。あなたは魅力的なレディだし、皆を安心させる力を持っている。それは魔法じゃなく、あなた自身の力だ。何気ない仕草、気遣いそれが皆を幸せにしてくれる。それがルシアさんの力だ。そのルシアさんが好きなのだ。他の誰にも渡したくはない」

「そうよルシア。あなたはもっと自分に自信を持ちなさい。あなたの言うとおり、背は低いかもしれない。胸も大きくないかもしれない。だけど、あなたは誇っていいわ。あなたは可愛いのよ」

「そうだ。アリス様のおっしゃっていたとおりだ。君は可愛い。大きな瞳に、悩ましい唇。どれも可憐で可愛らしいのだ。あなたはアリス様じゃない。綺麗とは言われないかも知れないが、皆あなたのことは可愛いと思っている」

「あなたは私じゃないの。貴族の令嬢としてお淑やかで上品に振舞う必要もないのよ。それが許されるのがあなたなの」

「アリス様・・・・なんか釈然としませんけど、分かりました」

「ニール様、不束者ですけどよろしくお願いいたします」

「ああ、神に誓って幸せにすると約束しよう」

「ニール様・・・・なんか安心したら、お腹が空いてきましたわ」

「ふふっ、それでこそルシアさんだ」

「はいはい。じゃあルシアのお腹が鳴る前に帰りましょ」

「ちょっと! お腹なんて鳴りませんよぉぉ」

 またしても笑われてしまった。
 もういいです。
 だって。こんな私をニール様は受け入れてくれるのだから。
 笑われようが貶されようが、私は私なのだから。

 
 馬車に乗って家に帰ってきた。
 相変わらずの厳重警護には驚きを隠せない。
 だが、もっと驚くことがナイトレイ伯爵家で待ち構えていた。
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