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第17話
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王都にある教会の一室。
私は回復属性の魔法講義を受けていた。
魔法学園はまだ閉鎖されたままであり、講堂の建て直しや例のお花畑の整備などでそのまま夏休みに入り、再開は2学期からになると聞いたわ。
回復術師は慢性的に不足しており、少しでも適性のある者は教会や治療院で働いていた。
学生たちも割のいいアルバイト、貴族も教会に貢献することで得る利点を考え奉仕活動をしていたの。
私もそのひとり。
だけど・・・現実は厳しかった。
最初こそ、奇跡の聖女様が奉仕活動に来てくれたと騒ぎになったものだけど、私にはまったく回復属性の魔法が使えなかったの。
最初は教会のお偉い司教様が私に魔法の講義をしてくれた。
難しくてお話の内容が分からない。
分かったとしても、実践することは別のお話。
私には回復属性の魔法の才能がないんじゃないかと思うくらい使えなかった。
司教様の落胆されたお顔には、申し訳ないとしか言いようがない。
それから日替わりで、講義の人が変わったわ。
今日の講師は、お年を召したお婆さん。
お婆さんは優しくゆっくり自分のペースで学べばいいと言ってくれた。
聖女としての治癒の力も無く、時間だけが過ぎていった。
普通、噂話や流行ものは時間とともに風化し薄れていくものである。
そして世間の私の評価は落ち・・・なかった。
回復属性の魔法は使えなくても、人々の心の支え。人々に笑顔を与えることが私にはできた。
私が奉仕活動に出ると、人だかりが生まれる。
特に子供たちには大人気で、よく魔法を見せてとせがまれる。
みんな私の魔法で笑顔になるの。
私も幸せな気分になる。
だって私の魔法は、お花を咲かせる魔法だから。
お花を咲かせる。ただそれだけの魔法、されどそれがどんなに素晴らしいことか。
傷の癒す力はないけど、心を癒し、お花の美しさと香りはリフレッシュやリラックス効果など、精神の癒しに繋がるの。
私の行く先々でお花が咲く。
お花を見て人々が幸せな気持ちになる。
怪我や病気の治療は、専門家に任せればいい。
私にはその力は今のところ見受けれない。
頑張っているけど・・・頑張ってはいるのよ。
その分、別の分野で貢献しているの。
「さて、今日の授業はここまでにしましょう。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「あなたの騎士様もお待ちになってますよ」
「はい・・・」
回復術の講義も終わり、お婆さん先生に挨拶をした。
そして講義室の外には彼が待っていた。
「ルシアさん、講義お疲れ様」
「ニール様、もう子供扱いしないでくださいって言ってるのにぃ」
「ごめんごめん。ルシアさんの可愛い顔みると、どうしてもナデナデしたくなるんだ」
「むうぅぅ・・・」
あの一件以来、ニール様は私の婚約者として護衛役を申し出てくれた。
どこに出かける時も一緒に居てくれるのは嬉しいけど、子供扱いは勘弁してほしい。
かといって、恋人みたくイチャイチャするのもどうかと思う。あくまでも外ではだけどね。
だって恥ずかしいじゃない。
「ルシアさん、今夜は王宮で舞踏会が開かれるからほどほどにね」
「分かってますって、私だって楽しみにしてるんだから。でも子供たちにせがまれると嫌と言えなくて」
「それで一緒になって遊び出さないでくださいね」
「うぅぅ・・・それを言わないでください」
「ははっ、まあルシアさんらしいですけどね。では行きましょうか」
最近の私の教会での日課になっている回復属性の魔法講義の受講、その後は奉仕活動なんだけども・・・なんだけどもねぇ。
実際に活動しているのかと言われれば、実は何もしていない。
お爺さんやお婆さんの話し相手になったり、子供たちと遊んでいるだけなのよね。
私だって奉仕活動したいのよ。ホントよ。
回復属性の魔法こそ使えないけど、包帯を変えたり消毒したりすることぐらいできると思うのに、周りがさせてくれない。
食事の炊き出しだってさせてもらえない。
それには理由があって、私が行くとどうしても人が集まってしまうの。
それこそ奉仕活動の邪魔になるくらいに。
だからという訳じゃないけど、私の役割は邪魔にならないところで民衆と話すことなのよ。
司祭様はそれで良いって言ってくれるから良いのだけどね。
「ルシアお姉ちゃん。今日もお花咲かせて見せてよ」
教会の建物を出て早々、私を見つけた子供たちが早速集まってきた。
これもいつものことなのよね。
「じゃあ、どこにしよっか」
「あっち、あっちの端ならシスターも良いって言ってたよ」
「そう、じゃあそこに行きましょうか」
子どもたちに手を引っ張られて行きついた場所は、教会の裏側の端っこの部分。
なんでこんな場所まで来たかというと、私がお花を咲かせても良い場所は限られているから。
私の魔法、植物に力を与える魔法はレベルアップした。
魔法講義を受け魔力が扱えるようになった結果が、回復属性で無く植物魔法に効果が表れるようになってしまったの。
でもこの魔法、場所を選ぶのよね。
どこでも花を咲かせられる。それはレンガの上だろうと、食卓やベットだろうと、場所を選ばずどこでも花が咲いてしまう。
それはもうポコポコと咲く。面白いように咲いてしまう。
そして怒られるのよ。
最初は喜ばれたお花も、場所を選べと怒られてしまい、使用して良い場所を制限されてしまったの。
そりゃそうよね。
どんな原理か理解不能だけど、机から芽が出てきて花が咲いてしまう。
お花は綺麗だけどその机は使えなくなってしまう。
土の上なら根を抜くことができるけど、机はダメね。根を抜くことができないのですから。
最初に魔法を使ったときの司祭様の驚きと、引きつった顔は見ものだったわね。
私は回復属性の魔法講義を受けていた。
魔法学園はまだ閉鎖されたままであり、講堂の建て直しや例のお花畑の整備などでそのまま夏休みに入り、再開は2学期からになると聞いたわ。
回復術師は慢性的に不足しており、少しでも適性のある者は教会や治療院で働いていた。
学生たちも割のいいアルバイト、貴族も教会に貢献することで得る利点を考え奉仕活動をしていたの。
私もそのひとり。
だけど・・・現実は厳しかった。
最初こそ、奇跡の聖女様が奉仕活動に来てくれたと騒ぎになったものだけど、私にはまったく回復属性の魔法が使えなかったの。
最初は教会のお偉い司教様が私に魔法の講義をしてくれた。
難しくてお話の内容が分からない。
分かったとしても、実践することは別のお話。
私には回復属性の魔法の才能がないんじゃないかと思うくらい使えなかった。
司教様の落胆されたお顔には、申し訳ないとしか言いようがない。
それから日替わりで、講義の人が変わったわ。
今日の講師は、お年を召したお婆さん。
お婆さんは優しくゆっくり自分のペースで学べばいいと言ってくれた。
聖女としての治癒の力も無く、時間だけが過ぎていった。
普通、噂話や流行ものは時間とともに風化し薄れていくものである。
そして世間の私の評価は落ち・・・なかった。
回復属性の魔法は使えなくても、人々の心の支え。人々に笑顔を与えることが私にはできた。
私が奉仕活動に出ると、人だかりが生まれる。
特に子供たちには大人気で、よく魔法を見せてとせがまれる。
みんな私の魔法で笑顔になるの。
私も幸せな気分になる。
だって私の魔法は、お花を咲かせる魔法だから。
お花を咲かせる。ただそれだけの魔法、されどそれがどんなに素晴らしいことか。
傷の癒す力はないけど、心を癒し、お花の美しさと香りはリフレッシュやリラックス効果など、精神の癒しに繋がるの。
私の行く先々でお花が咲く。
お花を見て人々が幸せな気持ちになる。
怪我や病気の治療は、専門家に任せればいい。
私にはその力は今のところ見受けれない。
頑張っているけど・・・頑張ってはいるのよ。
その分、別の分野で貢献しているの。
「さて、今日の授業はここまでにしましょう。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「あなたの騎士様もお待ちになってますよ」
「はい・・・」
回復術の講義も終わり、お婆さん先生に挨拶をした。
そして講義室の外には彼が待っていた。
「ルシアさん、講義お疲れ様」
「ニール様、もう子供扱いしないでくださいって言ってるのにぃ」
「ごめんごめん。ルシアさんの可愛い顔みると、どうしてもナデナデしたくなるんだ」
「むうぅぅ・・・」
あの一件以来、ニール様は私の婚約者として護衛役を申し出てくれた。
どこに出かける時も一緒に居てくれるのは嬉しいけど、子供扱いは勘弁してほしい。
かといって、恋人みたくイチャイチャするのもどうかと思う。あくまでも外ではだけどね。
だって恥ずかしいじゃない。
「ルシアさん、今夜は王宮で舞踏会が開かれるからほどほどにね」
「分かってますって、私だって楽しみにしてるんだから。でも子供たちにせがまれると嫌と言えなくて」
「それで一緒になって遊び出さないでくださいね」
「うぅぅ・・・それを言わないでください」
「ははっ、まあルシアさんらしいですけどね。では行きましょうか」
最近の私の教会での日課になっている回復属性の魔法講義の受講、その後は奉仕活動なんだけども・・・なんだけどもねぇ。
実際に活動しているのかと言われれば、実は何もしていない。
お爺さんやお婆さんの話し相手になったり、子供たちと遊んでいるだけなのよね。
私だって奉仕活動したいのよ。ホントよ。
回復属性の魔法こそ使えないけど、包帯を変えたり消毒したりすることぐらいできると思うのに、周りがさせてくれない。
食事の炊き出しだってさせてもらえない。
それには理由があって、私が行くとどうしても人が集まってしまうの。
それこそ奉仕活動の邪魔になるくらいに。
だからという訳じゃないけど、私の役割は邪魔にならないところで民衆と話すことなのよ。
司祭様はそれで良いって言ってくれるから良いのだけどね。
「ルシアお姉ちゃん。今日もお花咲かせて見せてよ」
教会の建物を出て早々、私を見つけた子供たちが早速集まってきた。
これもいつものことなのよね。
「じゃあ、どこにしよっか」
「あっち、あっちの端ならシスターも良いって言ってたよ」
「そう、じゃあそこに行きましょうか」
子どもたちに手を引っ張られて行きついた場所は、教会の裏側の端っこの部分。
なんでこんな場所まで来たかというと、私がお花を咲かせても良い場所は限られているから。
私の魔法、植物に力を与える魔法はレベルアップした。
魔法講義を受け魔力が扱えるようになった結果が、回復属性で無く植物魔法に効果が表れるようになってしまったの。
でもこの魔法、場所を選ぶのよね。
どこでも花を咲かせられる。それはレンガの上だろうと、食卓やベットだろうと、場所を選ばずどこでも花が咲いてしまう。
それはもうポコポコと咲く。面白いように咲いてしまう。
そして怒られるのよ。
最初は喜ばれたお花も、場所を選べと怒られてしまい、使用して良い場所を制限されてしまったの。
そりゃそうよね。
どんな原理か理解不能だけど、机から芽が出てきて花が咲いてしまう。
お花は綺麗だけどその机は使えなくなってしまう。
土の上なら根を抜くことができるけど、机はダメね。根を抜くことができないのですから。
最初に魔法を使ったときの司祭様の驚きと、引きつった顔は見ものだったわね。
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